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第四十四話

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 35階層から砂漠になる。
「ワームが出るから気をつけろ!」
「あぁ、目当ての素材がある!」
「は?素材か?こいつは皮くらいしか落とさないぞ?」
 その皮が重要で、
「マジックバックの材料だ」
「よーーし!!片っ端から倒すぞ!!!」
「おわ?なんだウリン?」
「加工は任せる!俺はもっとデカいマジックバックが欲しいんだ!」
 大声でカッコ悪いことを言うウリン。
「はぁ、分かった!!」
 まぁ、作ってやるけどな。
「よっしゃ!走れラビオン!マジックバックが逃げるぞ!」
「おっしゃー!ってなるかよ!まぁ、行くけどな」
 渋々従うラビオン達。

 ジャイアントワームは地中に潜り襲ってくるが、地響きで大体出てくるところがわかる。
 そこに罠を仕掛けておけば自滅してくれるのだが、
「オラァ!」
「おい、罠は?」
「そんなまどろっこしいことせずとも倒せるからな!」
 ラビオンは相変わらず脳筋の部類に入るよな…

 無事に皮を確保して収納にいれる。
「俺、かっこいいのがいいから!そしてデカいのな!」
「あ!じゃあ私は」
「待て待て、とりあえずウリンの分だ。その後な?」
「ぶー!了解」
 帰ったら錬金術を総動員して作らないとな。
 皮の加工もあるから『ブラウン』に一回持ち込むか。

 それにしても砂漠地帯に入ってから暑いな。
 ダンジョンは天候も操るようだ。
 そしてウリンとネイルがいるからいいが、見渡す限りの砂の山は方向感覚をおかしくする。

 36階層に進んでもこの砂漠との付き合いになる。
 出てくるモンスターもジャイアントワーム、デススコーピオン、砂漠ゴブリンと砂地に適したモンスターだ。

「砂漠ゴブリン6きます!」
「シッ!よし!当たり」
 リミが放った矢が砂漠ゴブリンを射抜く。
「まだ!サイクロン!」
「『抜刀・飛燕』」
 アイラが魔法を放ち、俺は技を放ちまだ遠くにいる砂漠ゴブリンを斬る。砂漠ゴブリンはこの階層で出て来ても所詮ゴブリンだからな。

「ふぅ、ドロップも大したもんはないな」
「まぁゴブリンだからね」
 魔石と砂時計?まぁ、売れるのだから収納しておこう。

 砂漠はまだ続くらしいのでここで野営だ。
「夜は冷えるからな!」
 知識として知っているが、やはり砂漠の温度差は激しいようだな。
「えーー!まぁルシエがいるし大丈夫か」
「あぁ、防寒着は入ってるからな」
「いいよなー、収納まじ便利だよなー」
 ウリンはマジックバックが出来るまで我慢だな。

 次の日も36階層を進んでいき、ようやく37階層の階段を発見する。
 
「いやぁ、砂漠は熱いし砂が入るしあんまり好きじゃないよ」
「そりゃ全員が思ってることだ。まだ続くから泣き言いってても進まないぞ?」
「えー、まだ続くのー」
 リミや他の面々も砂漠は堪えるようだ。

「次の階層はオアシスがあるからそこで休憩だな」
「オアシス!!行きたい!」
 現金なもんだな。
「よし!オアシスに向けて出発!!」

 37階層に入ると真っ直ぐオアシスに向かう。
 モンスターを倒しながら進んでいき、ようやく木が生い茂った場所に入ると日陰ができているので少し涼しく感じる。
 水の音が聞こえるとリミが走っていく。
「おい、あまり1人で行動するなよ?」
「はーい!見て見て!凄い!」
 そこは湖があり、周りは整地され他の冒険者もここを使ってるのが分かる。
 水も綺麗だ。鑑定すると飲み水にしても問題ないようだな。

「身体拭く」
「そうね、私も汗かいたしね」
 どうやら女性陣は汗を拭くらしいので俺らはどこかに行けといっているようだ。
「さて、んじゃ暇つぶしにでも行きますか!」
「だな」
 とオアシスをぐるっと周り外に出る。

「あれ?ゴテアラ?」
「ん?あいつ…なんで1人でこんなとこまできてんだ!」
 ゴテアラはモンスターと戦っていた。

 走ってゴテアラのいる場所に行く。
「テメェ!ゴテアラ!1人で来る場所じゃねーだろ!」
「な!お、お前達には関係ないだろ!ほっとけ!」
 デザートウルフの群れだ。
 俺たちは加勢をし、その群れを全滅する。

「ふぅ、なんとかなったか」
 ゴテアラの方を見ると傷だらけで、1人でなんとかこの階層にきたことがわかる。
「ゴテアラ…気持ちはわかるが」
「うるせぇよ、俺は1人でいいから」
「とりあえずオアシスに行くぞ?飯も碌に食ってないだろ」
 無理矢理引っ張ってオアシスに戻る。

「え?あ、ゴテアラ?」
「なんで?」
「まぁ、いいから飯にしようか」
 説明なんかは後々でいい。いまはゴテアラに飯を食わせるのが先だな。

「ングッ!ゴホッゴホッ!アグッムグ」
「あーあー、少し落ち着けよ」
 ラビオンはゴテアラの隣で世話をする。
「そうだぞ?飯は逃げんからな!ガハハ」
 誰もなぜここに来たのかなんて野暮なことは聞かない。
 
 ゴテアラは涙を流しながら飯を食い酒で流し込んでいた。

 相当疲れていたのだろう。飯を食うとすぐに寝息をたてて横になるゴテアラ。
 俺らも今日は静かに飯を食い、夜番をする。

「ん?…仕方ないやつだ」
 ラビオンがそう言ってゴテアラが寝ていた方にいき何かを拾ってくる。
「どうした?」
「あいつらしいな。にしても多いがな」
「そうか…まぁ気持ちだろ」
 その手には金貨が数枚握られていた。

「だが1人でどこまで潜るつもりだ?」
「…40階層はちとキツイだろうな」
「じゃあ」
「いや、あいつの好きにさせよう。まぁ、俺たちが追いついてしまうのはしょうがないだろ?」
 ゴテアラもそれなら文句言っても仕方ないな。俺らも行き先は40階層だからな。
「そうだな」
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