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第三十話
しおりを挟むあれから3日経ってから『ストロミー』の4人はようやく部屋から出てきた。
「よっ!心配かけたな!」
「あはは、私達ってば3日もゴロゴロしちゃったわよ」
みんな心の整理がついたみたいだな。
「ガハハ、俺なんて右腕をどっかに忘れてしまったようだ」
「…笑えないから、バカワルツ」
ワルツとウリンもなんとか乗り越えたんだな。
「まぁ、今日は俺たち『リベル』の奢りだ!食って飲んでくれ!」
料理は女将に任せてもう作り始めている。
「おっ!パーティー名がきまったのか!そりゃ、めでたいな!」
「あはは、私はお腹すいて死にそうよ」
「ガハハ!飲むぞー!」
「腹減ったよ」
と大テーブルに料理が来るまでエールを飲みながら喋る。
「ワルツ、悪いが明日、暇か?」
「おう!バリバリ暇だぞ!」
「じゃあ俺に付き合ってくれよ!」
「分かった、腕がないが荷物持ちくらいならまだできるからな!」
「だから笑えないっつーの!」
とウリンにつっこまれてまた笑うワルツ。
「お待たせ!さぁ!食って飲んでおくれ!」
「おばちゃん!悪いな!」
「何言ってんのさ!しっかり食べな!」
女将はラビオン達の肩を叩いて行く。
料理も粗方食い終わり、『ストロミー』の皆んなも酔いが回ってお開きだ。
皆んなそれぞれ部屋に戻る中、
「ちょっと付き合えよ」
「あぁ、いいぞ」
ラビオンと2人で外に出て別の店で飲み直す。
「ハハッ、あんな化け物が出てくるなんてな」
「そうだな」
2人でカウンターに座り飲んでいる。
「あの時はリーダーとしてワルツに殿を頼んだが、俺がもっと強かったら」
「結果、4人とも命はあっただろ」
ラビオンは間違っていない。
「そうだな…だが、ワルツの腕は」
「それは…」
「悪いな、ただの愚痴だ」
ワルツは右腕が無くなっている。
「こんな夜に結成したんだ。こんなに星が出て嵐でも来そうだなって、そしたらアビーが『ストロミー』にしないかって言ってな」
「へぇ、良いパーティー名だよな」
空には満天の星が輝いている。
「もっと、…もっと長く続けるつもりだったがこれで終わりの様だ」
「そうか?ワルツの腕が治るとしてもか?」
「!?…治るのか?!」
「まぁ、元の様になるには努力が必要だけどな」
この3日、錬金術でワルツ用の義手は大体は作ってある。あとはワルツの身体に合わせるだけだ。
「そ、そうか…治るのか…あ、ありがてぇな」
ラビオンは下を向き震える肩を必死に抑えている。
「あぁ、錬金術が使える俺に感謝してくれ」
見ない様にしてそう言うと、笑いだすラビオン。
「ハハハッ!やっぱりお前は俺のキーマンだ」
声が震えている。
「だな!今日は飲むぞ」
「当たり前だ!こんないい夜はないな!」
星が綺麗に見える冬の夜だ。
相手は男だが、まぁそこは目を瞑ろう。
「う、動く!動くぞ!」
「待てって!もう少し微調整するから!」
ワルツの肩から義手が嵌められて親指がピコピコと動いている。
「だー!動かすなって言ってるだろ!」
「バカワルツ!ルシエの言うこと聞けよ!」
ウリンが涙目でワルツの頭を叩く。
「イデェ…でも嬉しぐてな…」
と泣いているワルツには悪いが今のうちに微調整をする。
義手の良いところは交換出来るところだ。
今着けているのは普段用で、戦闘用の義手も作ってある。
あとはメンテだが、簡単なばらし方を教える。ブラックボックス部分が壊れたら俺しか作れないので交換が必要だな。まぁ、予備を使っておくか。
ギルドの訓練場で戦闘用の義手に付け替えて具合を見る。
ゴツい見た目をした義手が肩から嵌められている。
少し重いが、二倍の筋肉量にしてあるのだ。
元々両手で扱っていた盾を片手で扱える様になったわけだが、
「ガハハハハハ!俺は最強だぁ!」
バカワルツが出来上がったようだな。
訓練場で試しているワルツをリミ達に任せて、俺とラビオン、ウリンはギルマスのところにやってきていた。
「待たせた!悪いな!」
「よう、ポート!報告が遅れて悪いな」
ラビオンが言うと、
「なんだ、大丈夫そうだな!それなら何があったのか教えてくれ!」
と笑顔で返す。
ラビオンが喋り、ウリンが地図を使って話を補助する。
「分かった!ここだな!」
「そうだ。俺たちはここで転移罠に助けられた」
「しばらくは50階層より下は通行禁止だな」
多分あの化け物達は古くからいたのだろう。
だから書物では50階層までと書かれていたのだろう。
転移罠がある場所が分かった。
これで犠牲者は減るだろうな。
ポートと一緒に喋りながら訓練場に向かう。
「おーし!帰るぞー!」
「おう!」
と派手にやった様で訓練場が穴だらけだ。
「おい!片付けていけ!」
ポートが怒っているので、しょうがなく8人で片付けをしてから帰る。
「ガハハ!悪いな」
「はぁ。それ返してもらうぞ?」
「す、すまなかった…」
「…冗談だ」
「ガ、ガハハ」
いつでも元気とはいかない様だな。
「ワルツのせいで散々だったよ」
「ガハハ、すまん」
「まぁ、いいさ!どうだったんだ?実際?」
ラビオンが聞くと、
「それが冗談みたいに動くんだからビックリだよ!」
リミが興奮気味に喋る。
「本当よね!シールドバッシュなんて威力もあるし、あれで防げないものはないんじゃない?」
「あれは規格外」
そうか、戦闘用の義手は上々の出来の様だ。
「ガハハ、ありがとうな!ルシエ」
「どういたしまして」
固く握手を交わす。
もちろん左手だ。
2種類の義手は良好の様だな。
錬金術のスキルツリーを伸ばした甲斐があった。
もう日は暮れ夜空には星が輝く。
ストロミーと言う嵐が復活した事を祝う様に。
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