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第十二話
しおりを挟む村の宿ではファングボアの肉が食べれると村のみんなが押し寄せて来て、宿の食堂は大賑わいだ。
「自分達の分は自分達で出すって言ってあるから、お肉出して」
「こんなもんか?」
「ありがとう!持って行って来る!」
とリミが肉を持って席を立つ。
俺たちの前には大きなステーキが並ぶ。
「美味そう!」
「いただきます!」
ファングボアのステーキは歯で噛み切れるほど柔らかい。
「美味いなぁ!これはくせになるな!」
「美味しい」
「ソースも香ばしくて美味い!肉も柔らかくていう事ないね!」
ファングボアの肉は大好評だな。
食堂は飲めや歌えの大騒ぎだ。
「兄ちゃん達が倒してくれたんだろ!さすが冒険者だな!」
「まぁな」
「ハハッ!ねぇちゃん達も冒険者なのか?」
「そうよ!でも今回はルシエが一人で倒しちゃったしね」
「まじかよ!すげーな!」
と村の人達とも喋り、いい夜だった。
次の日は朝からファングボアの解体をしてる男達を見ながら出発だ。
「気をつけてなぁ!」
「あぁ」
門兵と別れ街道を進む。
森の中の街道を走っている。
ちょうど昼になろうというところで叫び声が聞こえ、街道をこっちに走って来る女が一人。
「た、助けてぇ!!」
「ん、アイラ!頼むな!」
「分かった」
アイラに御者を任せ、馬車から飛び降り、女が走って来る方に走り出す。
「『パリィ』お前らなんだ?」
男が四人追いかけて来ていたので、先頭の男を弾いて退かせる。
「おっと、お前!邪魔をするつもりか!」
「何があった?」
「そ、そいつらが」
「うっせぇ!お前はいうこと聞いてりゃいいんだよ!」
はぁ、話もまともに出来ないのか?
「わ、私は冒険者になるためについて来たんだ!あんたらの慰め者になるつもりはない!」
と言うことはこいつら昼間からサカっているのかよ。
「街道でサカリがついたのか?」
「う、うるせぇ!お前には関係ないだろう!」
男は顔を真っ赤にして怒っているが、どこかこの森にでも小屋かなんかがあるのだろうな。
「私に任せてよ!」
「リミ?精霊に殺させるのか?」
「流石に手加減するわよ!『来てちょうだいウンディーネ』」
リミが水の精霊を呼び出した。
『なぁに?私にこいつらの相手をしろって?』
美形の人魚が空中を泳ぐ。
「そうよ?気絶させるだけなら簡単でしょ?」
『はぁ、まぁね』
と言って水の玉を四つ掌に浮かべる。
「ふ、ふざけんな!精霊使いなんて相手にしてられるか!」
「に、逃げるぞ」
と言って逃げようとするが時すでに遅し。
「ガボッゴボッ」
四人の口と鼻は水の塊で塞がれると倒れて行く。
『はい、もういいでしょ?』
「ありがとう、ウンディーネ」
ウンディーネは霧散して消えて行った。
「どう?私の精霊は?」
「凄い」
「あぁ、ちゃんと使えるんだな」
「んもぅ!一言多い!サラマンダーの時は初めてだったからしょうがないの!」
まぁ、サラマンダーの時が人間じゃなくてよかったよ。黒焦げになってたからな。
男四人を縛り上げると馬車に積み込む。
「あ、あの!ありがとうございます!私はネイルって言います!」
「ん?俺は何もやってないぞ?やったのはリミだ」
「はい!でも、ありがとうございます」
頭を下げて来るのでどうしようかと思ってたら、
「はいはい!ルシエがかっこいいからってそっちばっかにお礼言ってないで、こっち向きなさいよ!」
「はい!ありがとうございます!」
リミがたまらず出て来るとネイルはリミの方を見てお礼を言う。
「それにしても、コイツらどこでサカろうとしてたんだ?」
「あ、あっちに建物があるって言ってて」
ネイルが言うので少し進んで街道の横を見ると、木々に紛れて建物があるようだな。
「常習犯」
「のようだな。見て来るからここで待っててくれ」
「私も行きます!」
とネイルもついて来るようなので一緒に行く。
建物には鍵がかかっているようなのでドアを蹴破るとそこには縄で縛られた女が三人もいた。
「ひ、酷い!大丈夫ですか!」
走り寄ると手早く縄を切り介抱しているので、俺は建物の中を確認して回る。
「ネイル、これを」
「あ、ありがとうございます!」
服が見つかったのでそれを渡す。
あとはコイツら何処でこんなに溜め込んだのか金貨なんかが袋で三つも出て来た。
「あいつらどっちかと言うと盗賊の方が近いのかもな」
「そ、そうよ…冒険者の格好をした盗賊よ」
着替えた女がそう言う。
「そうか、まぁこんなとこにアジトを持ってるんだからな」
食料や装備なんかも置いてあるし、コイツらだけじゃないのかもな。
女三人は弱っているが、冒険者のようで自分で歩くと言って馬車に戻る。
馬車の中に女三人は座り込むと、
「まだいるわ…こいつらはまだ下っ端よ」
「やっぱりか、街まではどれくらいだ?」
「ここからなら夕方には着くわ」
と別の女が言うので、逃げられる前に急いでギルドに乗り込む事にした。
「その前に食ってないだろ?これを食うといい」
とサンドイッチ擬きを渡す。
「ありがとう、助けてくれて礼もしてなかったわ。本当にありがとう」
三人が口々にお礼を言う。
「馬車のなかでゆっくり食べてくれ、アイラ、代わるよ」
「分かった」
アイラと御者を代わるが動かす前に試しでブラハムを鑑定してみるとブラハムもスキルツリーがあった。
まぁ、人間に比べ少ないがそれでもブラハムはクライズデールと言う品種で、それなりにスキルがある。
ポイントもあるのでパッシブを上げてやる。
と、忘れないうちに縛られた四人の盗賊くずれの冒険者からポイントを奪っておく。
荷車は四人の女を乗せたらいっぱいなので男どもは起こして走らせる。
「じゃあ、出発するから、落ちないようにな?」
「え?ブラハムでしょ?そんな荒い事しないと思うけど?」
「一応だよ、ちょっと飛ばすからな?」
「え、う、うん」
腑に落ちないような顔をしていたが、ブラハムは『健脚10%UP』『体力30%UP』それに『スピードUP』もとれた。いかに大人しい性格のブラハムでも今までと違うからな。
「行くぞブラハム」
『ブルルルル』
最初の一歩目から力強くていつもより機嫌がいいな。
男達は引きずられる形になったが…まぁ、しょうがないから少しスピードを落とすことにした。
「ブラハム、悪いな」
『ブルルル』
アイラがヒールを使って男どもを治して再出発する。
今度は走って着いてきている。
まぁ、まだまだ遠いと思うが、全速力で頑張って貰おうか。
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