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第33話

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「五美君…まさか」
 外に出ると鈴音さんが待っていた。
 いつから待ってたんだ?
「はい、マスタードラゴンですよね?倒しましたよ?」
 鈴音さんは言葉が出ないようで、口をパクパクさせる。
「腕のところはどうしたんですか?」
「ん?あぁ、いつものことなので気にしないでください」
 左腕の服は弾け飛んで無くなっている。
 宇田先生も待っていてくれたようで結局一日以上ダンジョンに潜っていたな。

「前代未聞だ。本当に攻略してしまうとは、こんな短時間で、しかもソロで………」
「別に、これが俺ですから」
 
「…分かった、君の記憶は消さない、『Drop』に入られても困る」
「はい、そうしてもらえると助かりますね」

 職員室に行き、また宇田先生の部屋に通される。
「今日はアッサムです」
「はい、ありがとうございます」
 といつものように紅茶を淹れてもらい、飲むと落ち着くな。
「ふぅ、美味しいです」
「それは良かった」
「君にはすぐにでもSWTOに入って貰いたいが」
「俺はまだ学生ですが?」
 流石に勉強を中途半端に投げ出したりはしたくないな。
「そうだな、急ぐこともないだろう」
「そうですね」
「異世界ではソロでダンジョンを攻略していたのだろう?ダンジョンコアは?」
「持ってますよ?あと6個」
「ろっ!?………」
 鈴音さんが絶句している。
「出しましょうか?」
「いや、持っておいてくれ」
「分かりました」

「はぁ、『収集人』がこれほどとは、私はすぐに置いて行かれたからな。これでも『勇者』なのだが」
「へぇ、鈴音さんは『勇者』だったんですか」
 『勇者』は『魔王』特攻なんだろうな。
 ヒカルも俺ほどレベルは高くないし。
「………『Drop』は一筋縄では対処できない。『暗殺者』や『忍者』、そして『勇者』もいる」
「…へぇ、『勇者』の記憶を消したんですか?」
「そうだ。あいつは危険だ。だから記憶を消し、普通に生活をして欲しかった」
 まぁ、そう言う風に思ってのことだと思うが、消された方はそう思わないだろうな。

「そうですか」
「まぁ、君はまだ学生だ。この事は忘れてくれ」
 まぁ、記憶の片隅にあると思うが。
「分かりました」
「あと、君と一緒でいなくなった者がいる」
「え?」
 俺の他に誰か乗ってたのか?
「『臼井勇気ウスイユウキ』と言うクラスメイトだ」
「臼井?………あ、野間と一緒にいた奴か」
 たしか野間達と一緒のグループだったはずだが………こちらでは一緒じゃないな。何故だ?
「知っているのか?」
「一応クラスメイトくらいは…しかし、何故」
「わからないな。そして臼井はグループに入っていなかった」
「え?どこにも?」
 そんなことがあるのか?

「そうだ、宇田先生も気付かないくらいだから相当なジョブだろうな」
「野間達は?」
「気付いてないようだ」
 あいつらでさえ気付かないなんてな。
「そうですか」
「この事は内密にな?」

「はい」

「あ、教育者の万場番さんって」
「ん?万場がどうかしたのか?」
「いや、まぁ、俺が連れ去られる前に…」
 とあの時の話をしてみる。
「そうか。こちらもそう言う目で見てみるよ」
「わかりました。お願いします」

 話は終わり、俺は職員室を出てマンションの寮に向かう。
 エントランスに人影が見え、
「スズ!!」
 ヒカルやアカネが待っていた。
「よぉ!心配かけたな。どうした?」
「宇田先生から連絡があったからさ!」
 そうか、連絡してくれたんだな。
「何があった?」
「あはは、とりあえず部屋に行かないか?」
「分かった」
 ヒカル達を連れてマンションに戻る。

「少しSWTOに居た。これは鈴音さんに言われてな」
「?、なんでだ?」
「それは秘密だな。でも問題ない」
 とりあえず鈴音さんと口裏を合わせたからそう言うことにしておく。
「そ、そうなのか?何かあれば」
「まぁ、ダンジョンコアのことなんかだな」
 これはヒカル達も知ってるからな。
「あぁ、まだ持ってるんだよな?」
「そうだな、かなり貴重らしいから」
 と言うとヒカル達は安心したらしく。
「まぁ、無事でよかった!あー、心配したよ」
「ね!ほんと心配したんだから!!」
「次なんかあったらメールくらい返せよ?」
 そうだな、メールくらい返せればよかったのだが、
「悪かったよ、スマホも買い替えないといけないからな」
「壊れたのか?」
 スマホを出すと道に投げられた事で画面が割れている。
「ほら、画面がバキバキだ。メールが返せなかったのはこのせいだ」
 電源が切れているから余計に画面は見えなく感じるだろうな。
「なんだよそれ!さっさと換えにいこうぜ?」
「だな!さっさと行こう!」
 眠たいんだがそんなことも言ってられないな。
 ショッピングモールに行き、スマホを交換してもらう。
 1時間ほどかかったが無事に交換してもらえた。
「ハッシー達も心配してたぞ?」
「そうね!LUIN返しなよ?」
「あぁ、相当メールが溜まってるな」
 さっき見たら未読がすごい件数だった。
「当たり前だろ?心配してたんだからな!」
「あぁ、ありがとう」
「本当にもう!」
 とヒカルやアカネが言う。
 心配してくれる仲間がいるのはいいな。

 とりあえず『Drop』は全部SWTOに任せてしまおう!
 俺は学生だからな!
「なぁ、五日も休んだんだ。勉強追いつけるか?」
「あ…どこまで進んだ?」
「よし、アキの勉強会だな!」
 ヒカルが嬉しそうに言うが、
「ヒカルもね!」
「俺はいいよ!だって授業は受けたしな!」
「じゃあ、大丈夫だな?復習だ!」
「げ!ええー!!」
 まぁそうなるな。
「あはは、そうだな、勉強教えてくれるか?」
「もちろんだ!」
 アキは張り切ってるし、ファミレスにみんなで行き、勉強会だな。

 メールを返信するとみんなが集まってきた。
「ったく、そうならそうと宇田先生も言えばいいのにな」
「そうだよね」
「てか、そこ間違ってる?」
「え、うそ」
「あはは、そこは間違いやすいから要注意だ」
 と、勉強と会話を同時にやりながらだから間違えるんだよ。


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