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小さき呪い

第六十話

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リアムの呪いがどんどん強くなっていく一方でローズの身にも不思議なことが起きていた。
ローズに語り掛けたという謎の声。
その声はローズを死へと導いた。
これもローズにかかっている呪いのひとつなのだろうか。

それとも、、、、




あの一件から数日後、、、

専属メイドであるリリーがローズの元に戻りシエルも騎士としての執務をこなすようになってきた。
リアムは相変わらずローズに対して過保護ではあるがリリーとシエルを共につけるのならば外出も許可した。
外出ができるようになってからリアムがドレスや宝石を買うように持たせたお金を持ってありとあらゆる本屋を駆け巡り本を買い付けていた。

「奥様?ドレスやお花はいかがです?せっかく旦那様が外出を許されたのですから、、、」

「ドレスならリアムが帝都に赴く度に買ってくるではないですか。もう十分ですよ。本当は本を買って欲しいのですが、、、」

「奥様はとてもお美しい上にまだお若いのですから色んなドレスがお似合いなんですよ?」

「ドレスより知識の方が貴重ですよリリー。」

主従関係があるもののまるで友人のように会話を楽しむ二人を見てシエルは思わずクスリと笑ってしまった。

「シエルの服を買いに行きましょ?騎士とはいえ女の子です!ドレスも必要になるでしょう!」

「え?いや、奥様わたしは大丈夫ですから。」

「何を言います、いつか気になる殿方が出来たらその格好で会うわけにはいかないでしょう。」

そういうとリリーとローズはシエルの手を引っ張って呉服屋に入っていく。

しばらくシエルは二人からあれやこれやと色んなドレスを着せられたとか、、、


帰りの馬車の中、ローズは流れゆく景色を眺めながら呪いのことについて考えていた。
解くことが難しくとも緩和させることは可能なのでは無いのかと。
いつも月が明るく天に昇っている時にリアムは変身をする。
天体が関係しているのであればとローズは天文学についての書物をかき集めていた。

「私の残り時間は僅かだと言うのに、もっと共にと願ってしまった。欲張ってしまった。この心が私にはとても怖い。」








【花が散るとき全てが元の姿に戻るだろう。どんな呪いも解くことが出来る万能薬であるから。】



城に戻るとちょうどリアムが中央大階段でローズを出迎えていた。

「ローズ、おかえり。」

「ただいま戻りました。」

リアムは優しくローズを抱きしめると額にキスを落とす。
ローズはそっと瞳を閉じるとか細い声で

「大丈夫、、、きっと、、」

リアムはその言葉を聞き取れず聞き返すが「なんでもない」と首を振るローズ。






【愛してしまったから運命は変わった。愛さなければ、流れる川のように。今までと同じであっただろう。】




第六章 小さき呪い  ~完~
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