上 下
51 / 66
望まれない結婚

第五十話

しおりを挟む
結婚式まで一週間を切ったガロワ帝国 帝都では毎日お祭り騒ぎであった。

冷血無慈悲な公爵が穏やかで美しい姫を5年前の悲劇から救い、結婚をするのだと。
このラブロマンス溢れるカップルに帝国中が心躍らせた。
ヴェルグラ領、アグノエル領でも当然大規模な祭りが行われている。
最初にガロワ帝都、次にヴェルグラ領、アグノエル領といった順番で結婚式披露宴が行われるわけであるがガロワ帝都には既に新たな公爵夫人を人目見ようと全国から国民が集まっている。

部屋で一人、白い薔薇を見つめているとシエルが部屋を訪れる。

「奥様、公爵様の花嫁ともあろう方がそのような元気の無い表情ではなりません。」

「彼への想いが強くなっていく度に私は怖い。何かとても彼を傷付けてしまうのではないかと。そんな恐ろしいことがあるのではないかと。」

ドレスをキュッと掴む手に力が入る。
その手の上にシエルが優しく手を置くと、

「私たちがこうして兄妹として共に過ごすことができているのは奥様と旦那様のおかげでございます。そんなおふたりには幸せになっていただきたいと願い想うのが私たちの心のうちでございます。」

シエルはこのとき初めて優しく頬笑みを浮かべる。

「ノエルもレオや旦那様の元で懸命に勉学に励んでおります。ご安心ください、何があろうと私たちがお守りします。あなたがしてくれたように、、、」

ローズはシエルを抱き寄せると静かに涙を流した。

「ありがとう、、、ありがとう。」



『公爵様万歳!公爵夫人万歳!あぁ、喜ばしき結婚だ!幼くして親の温もりを失ったふたりが今日結ばれる!めでたきことかな!』

『見て!公爵様と夫人の慈愛で救われたアベル子爵のご子息よ!』

『新たな伯爵様万歳!テンプス伯爵万歳!』

結婚式当日、ヴェルグラ城から出てきた花嫁姿のローズ。
薄いピンクをグラデーションにしたオフショルダーのドレスを纏い白いモーニングコートを着たリアムの差し出された手をとる。

「綺麗だ、ローズ。」

「あ、あまり見られると、、、」

恥ずかしがるローズの頬にチュッと口付けを落としてみるとたちまち彼女の顔は林檎のように真っ赤になる。

「帝都へお前の美しさをみせつけてやれ」

馬車が帝都に入ると国民の歓声で溢れかえっていた。
馬車の窓からちらりと外を見るとローズの姿に湧き、少し手を振っただけでも騒がれる。
リアムも同様だ。
ローズは少し恥ずかしながらも嬉しく思った。
シエルとノエルは新しいテンプス伯爵としてヴェルグラ公爵家の騎士団長として馬に乗りながら馬車を護衛していた。

「テンプス伯爵お若いわァ、シエル様なんて麗しい乙女というではありませんか!」

「ノエル様はまた印象が違いますわね!お優しい笑顔ですわ!」

「まぁ!今チラッとローズ様が!お綺麗ですわ!」

「リアム様も表情が優しくていらっしゃる!」


教会に着くとリアムが先に出てローズに扉を開けてやり手を差し出す。
その手をとりながらゆっくりと降りる。

「行こう、ローズ。」


ローズは幸せそうに目を細め微笑みながら

「えぇ!」

と、2人で協会の中へと入っていった。


2人が再び協会の外へ出るとたくさんの祝福と花吹雪が彼らを包み込んだというのは少しあとの話である。






第五章 望まれない結婚 ~完~



次回 第六章  小さき呪い


いつもご愛読ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(_ _)m





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【取り下げ予定】アマレッタの第二の人生

ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』 彼がそう言ったから。 アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。 だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。 「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」 その瞬間、アマレッタは思い出した。 この世界が、恋愛小説の世界であること。 そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。 アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。 一方、彼女が去った後。国は、緩やかに破滅の道を辿ることになる。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...