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望まれない結婚
第四十七話
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コンコン、ノエルが執務室のドアをノックし声をかける。
「旦那様、奥様がお見えになりました。」
「入れ。」
恐る恐る部屋に入ると机に広げられた書類を無心でサインをしていくリアム。
一向にこちらを見る気配がない。
「リアム様、、、」
ローズが声をかけると動いていた羽根ペンがピクリと止まる。
「シエルを、罰さないでくださいね。私が悪いんです。」
すると、リアムは勢いよく音を立てて立ちあがると机に手を付きながら項垂れる。
「り、リアム様?」
「何故いつもそうなんだ。」
「え?」
ゆっくりと顔を上げるとその瞳は怒りとも言えぬ感情が混じった瞳をローズに向けていた。
「何故いつも危ない目に自ら飛び込む。」
「で、ですが!今回はお許しになったではありませんか!」
「何も口にするなと言ったはずだ。」
「ですが!」
「5年前お前に何があったのか忘れたのかっ!」
リアムの怒鳴り声に声が出なくなるローズ。
ゆらりと机を離れローズに近付くと彼女の肩を掴む。
「アグノエル領でもそうだ。お前だけでも逃げれば良かったのに、、、サロンだって俺の力で出ずに済んだ。」
肩を掴む手が僅かに震えていることに気が付くローズは優しく手を置いた。
「皇女様のお誘いですよ?断られるわけないではありませんか。」
「俺は皇帝の甥だ。どうとでもなる。」
「あなたを置いて逃げるなんて出来ると思いますか?私のせいで危険な目にあってるのはあなたなのですよ?」
「俺の醜い姿のせいでアグノエル領に帰る羽目になったんだろう。」
ローズは優しく両手で顔を包み上げさせると額に優しくキスを落とす。
「今日は私の落ち度です、許してくださいリアム。」
申し訳なさそうに謝るとリアムは腕を上げ、ローズの頬に触れようとするがするりとローズの腕からすり抜け落ちる。
「リアム?」
倒れるリアムにローズは一瞬目眩のようなものを感じた。
「リアム?!リアム!」
するとレオが部屋に入り、リアムの首筋に手を当て肩を持つ。
「ご安心を、恐らく奥様の紅茶入れられた薬のせいでございましょう。」
「危ないものなの?リアムは起きるの?」
「恐らく、眠り薬かと。」
そういってレオは寝室にリアムを運び、その後をローズは付いて行った。
眠りにつくリアムの傍らに座るローズは先程の困惑したような、リアムの表情に胸を痛めていた。
すると夢うつつにリアムがうわ言を苦しそうに顔を歪ませながら口にする。
「待て、、、待つんだ。やめろ、、、俺を、ひと、りにするな。頼む、、、、」
汗をかき始め魘されるようにうわ言が続く。
ハンカチを手に取りローズは汗を拭いてやるが表情は苦しそうにするまま。
「リアム、、、お願い。目を覚まして、、、、」
夜になってもリアムが起きることはなく、ローズは出続ける汗をタオルで拭いてやり目覚めるのを待った。
疲れたのかリアムのベッドに突っ伏すようにして眠りにつくローズ。
しばらくしてリアムは飛び起きるように目覚める。
辺りを見回すとすっかり日が落ちていて月明かりだけが部屋の中を照らしていた。
ベッドの半身に暖かみを感じ目をやるとローズがタオルを握りしめながら眠っていた。
「はぁ、、、はぁ、、眠っていたのか、、俺は。クソっ、睡眠薬か。」
頭に手を当て顔を歪ませているとモゾモゾとローズが動き、目覚める。
リアムを見るやいなや飛びついた。
「リアム!」
「俺は汗をかいている、離れろ。」
そう言って引き離そうとするがより一層ローズは抱きしめている腕に力を入れる。
「良かった、、、、なんともありませんか?体に痛みは?何か悪い夢でも見ました?ずっと魘されていて!」
慌てるローズを抱き寄せ口付けを落とすと頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ。それよりずっとここにいたのか?」
「酷く、、、魘されていたんです。離れられるわけが無い。」
リアムの胸に額をコツンと付け身を寄せる。
「覚えていないがな、お前がそばにいてくれたから嫌な夢も忘れることが出来たんだろう。」
ローズは手をリアムの背中に回して優しく抱きしめリアムもそれに応えた。
「さて、サロンでの話しは終わっていないぞ?ローズ。俺が倒れ込むほどの睡眠薬を飲まされそうになったんだ。俺だからよかったものの、、、、」
「で、ですが、、、行った甲斐はありました。あのサロンに参加した方の中に5年前のことを詳しく知る人は居ないでしょう。」
リアムを離し考えながら答えるとリアムはローズの頬に手を当て、瞳を合わせる。
「収穫はあった、、、ということか。」
「り、、リアム?」
ローズの首筋にゆっくりと口付けを落とし抱きしめる。
「俺を不安にさせた報いだ、大人しくしていろ。」
そういうとリアムは何度も、何度も深く口付けを繰り返したのだった。
次回に続く!
「旦那様、奥様がお見えになりました。」
「入れ。」
恐る恐る部屋に入ると机に広げられた書類を無心でサインをしていくリアム。
一向にこちらを見る気配がない。
「リアム様、、、」
ローズが声をかけると動いていた羽根ペンがピクリと止まる。
「シエルを、罰さないでくださいね。私が悪いんです。」
すると、リアムは勢いよく音を立てて立ちあがると机に手を付きながら項垂れる。
「り、リアム様?」
「何故いつもそうなんだ。」
「え?」
ゆっくりと顔を上げるとその瞳は怒りとも言えぬ感情が混じった瞳をローズに向けていた。
「何故いつも危ない目に自ら飛び込む。」
「で、ですが!今回はお許しになったではありませんか!」
「何も口にするなと言ったはずだ。」
「ですが!」
「5年前お前に何があったのか忘れたのかっ!」
リアムの怒鳴り声に声が出なくなるローズ。
ゆらりと机を離れローズに近付くと彼女の肩を掴む。
「アグノエル領でもそうだ。お前だけでも逃げれば良かったのに、、、サロンだって俺の力で出ずに済んだ。」
肩を掴む手が僅かに震えていることに気が付くローズは優しく手を置いた。
「皇女様のお誘いですよ?断られるわけないではありませんか。」
「俺は皇帝の甥だ。どうとでもなる。」
「あなたを置いて逃げるなんて出来ると思いますか?私のせいで危険な目にあってるのはあなたなのですよ?」
「俺の醜い姿のせいでアグノエル領に帰る羽目になったんだろう。」
ローズは優しく両手で顔を包み上げさせると額に優しくキスを落とす。
「今日は私の落ち度です、許してくださいリアム。」
申し訳なさそうに謝るとリアムは腕を上げ、ローズの頬に触れようとするがするりとローズの腕からすり抜け落ちる。
「リアム?」
倒れるリアムにローズは一瞬目眩のようなものを感じた。
「リアム?!リアム!」
するとレオが部屋に入り、リアムの首筋に手を当て肩を持つ。
「ご安心を、恐らく奥様の紅茶入れられた薬のせいでございましょう。」
「危ないものなの?リアムは起きるの?」
「恐らく、眠り薬かと。」
そういってレオは寝室にリアムを運び、その後をローズは付いて行った。
眠りにつくリアムの傍らに座るローズは先程の困惑したような、リアムの表情に胸を痛めていた。
すると夢うつつにリアムがうわ言を苦しそうに顔を歪ませながら口にする。
「待て、、、待つんだ。やめろ、、、俺を、ひと、りにするな。頼む、、、、」
汗をかき始め魘されるようにうわ言が続く。
ハンカチを手に取りローズは汗を拭いてやるが表情は苦しそうにするまま。
「リアム、、、お願い。目を覚まして、、、、」
夜になってもリアムが起きることはなく、ローズは出続ける汗をタオルで拭いてやり目覚めるのを待った。
疲れたのかリアムのベッドに突っ伏すようにして眠りにつくローズ。
しばらくしてリアムは飛び起きるように目覚める。
辺りを見回すとすっかり日が落ちていて月明かりだけが部屋の中を照らしていた。
ベッドの半身に暖かみを感じ目をやるとローズがタオルを握りしめながら眠っていた。
「はぁ、、、はぁ、、眠っていたのか、、俺は。クソっ、睡眠薬か。」
頭に手を当て顔を歪ませているとモゾモゾとローズが動き、目覚める。
リアムを見るやいなや飛びついた。
「リアム!」
「俺は汗をかいている、離れろ。」
そう言って引き離そうとするがより一層ローズは抱きしめている腕に力を入れる。
「良かった、、、、なんともありませんか?体に痛みは?何か悪い夢でも見ました?ずっと魘されていて!」
慌てるローズを抱き寄せ口付けを落とすと頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ。それよりずっとここにいたのか?」
「酷く、、、魘されていたんです。離れられるわけが無い。」
リアムの胸に額をコツンと付け身を寄せる。
「覚えていないがな、お前がそばにいてくれたから嫌な夢も忘れることが出来たんだろう。」
ローズは手をリアムの背中に回して優しく抱きしめリアムもそれに応えた。
「さて、サロンでの話しは終わっていないぞ?ローズ。俺が倒れ込むほどの睡眠薬を飲まされそうになったんだ。俺だからよかったものの、、、、」
「で、ですが、、、行った甲斐はありました。あのサロンに参加した方の中に5年前のことを詳しく知る人は居ないでしょう。」
リアムを離し考えながら答えるとリアムはローズの頬に手を当て、瞳を合わせる。
「収穫はあった、、、ということか。」
「り、、リアム?」
ローズの首筋にゆっくりと口付けを落とし抱きしめる。
「俺を不安にさせた報いだ、大人しくしていろ。」
そういうとリアムは何度も、何度も深く口付けを繰り返したのだった。
次回に続く!
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