39 / 66
野獣
第三十八話
しおりを挟む
私の元を去るのなら、何も言わずどこかに行った振りをして去ってくれ。
今なら手を離してやれるんだ。
この姿を理由にできるんだ。
頼む、、、、、
お前が消えた理由をお前のせいにしてしまう前に、、、、、
リアムは西の最上階の部屋で、ローズのガラスケースに入った薔薇を眺めていた。
母は美しい容姿の俺を産んだことを誇りに思い、一方では獣人に変身をしてしまう俺を疎んだ。
そのふたつの感情に飲み込まれ、病に伏せった。
母は言った。「父に知られてはならぬ」と
こんな姿のお前を一体誰が愛してくれると言うのか。
母の言葉にはそういった意味が込められていた。
今になって母の言葉が胸に突き刺さる。
一体、、、誰がこんな野獣を愛してくれると言うのだろう。
日も直に暮れ、リアムがローズが自分のm元に帰ってくるのを諦めかけていたその時、城の玄関のドアが荒々しく開かれる音が聞こえた。
ローズなのではと淡い期待を胸に玄関ホールが見える階段に向かうとそこには息を切らしたリリーの姿。
ここまで走ってきたのかメイド服の裾は所々泥がついていた。
「旦那様!旦那様!!!!」
リリーのただならぬ雰囲気にリアムは焦りの色を隠せない。
[ローズはどうした]
「宝石店から城に戻る時、、、馬車の中に見知らぬ男がいまして。その男にかどわかされました!!」
リリーは涙を溢れ出させながら地面に座り込んだ。
[?!]
「あの町はそれほど大きくはございません。監禁する場所も限られましょう。」
バトラーの言葉を耳にし2階から大きく掛け飛び、あっという間に城から外に飛び出す。
「バトラー様!騎士団の皆様にご報告を!」
「いや、旦那様には間に合わないだろう。それよりお迎えの準備をしよう。お湯と部屋を暖かくしておくれ。」
「はい、、、」
バトラーは不安そうに俯くリリーの肩に手を置く。
「心配するな、きっと旦那様が無事に奥様を連れて帰ってきてくださる。」
「あぁ、、、奥様。」
風のように走るリアムは風の中に微かに香るローズの匂いを嗅ぎ分け居場所を探る。
(ローズの故郷だからといって油断したっ)
匂いが段々強くなる。
それと共に見知らぬ匂い。
少し街から離れたところの森の中にポツンと小屋が建っていた。
すると小屋の中から声が聞こえてくる。
「君は知らないんだ、、、彼の本性を。戦争とはいえ人を殺して喜んでいるようなケダモノと、、、、あぁ、、やっと解放されたんだね。この機会を逃してはいけないよ。さぁ、僕と共に行こう。」
あぁ、、、ここでは俺が悪者なんだ。
そしてこの男にはローズがヴィランに捕まった姫にしか見えない。
当然だ、、、、
いつの間にか、、、、心さえも獣になってしまったのだ。
敵国の兵士を引き裂きながら、その快感に酔いしれていた。その心の内を見透かしたように俺は、、、姿さえも。
これは獣人族の呪いなのか?俺の本質では無いのか?
そんな考えを頭の中で巡らせていると、ローズの声で頭の霧が晴れるように澄み渡っていく。
「貴方は彼の何を知っていると言うの?貴方は彼のどんな本性を知っていると言うの?」
その声でローズとの思い出が頭をよぎる。
この姿を知ってもなお、、、俺だとわかってからは何も態度を変えることなく接してくれていた。
「私を、リアム・ヴェルグラの元に返して!」
あぁ、俺の元に帰ることを望んでくれるんだな?
ならば俺も応えよう。
次回に続く!
今なら手を離してやれるんだ。
この姿を理由にできるんだ。
頼む、、、、、
お前が消えた理由をお前のせいにしてしまう前に、、、、、
リアムは西の最上階の部屋で、ローズのガラスケースに入った薔薇を眺めていた。
母は美しい容姿の俺を産んだことを誇りに思い、一方では獣人に変身をしてしまう俺を疎んだ。
そのふたつの感情に飲み込まれ、病に伏せった。
母は言った。「父に知られてはならぬ」と
こんな姿のお前を一体誰が愛してくれると言うのか。
母の言葉にはそういった意味が込められていた。
今になって母の言葉が胸に突き刺さる。
一体、、、誰がこんな野獣を愛してくれると言うのだろう。
日も直に暮れ、リアムがローズが自分のm元に帰ってくるのを諦めかけていたその時、城の玄関のドアが荒々しく開かれる音が聞こえた。
ローズなのではと淡い期待を胸に玄関ホールが見える階段に向かうとそこには息を切らしたリリーの姿。
ここまで走ってきたのかメイド服の裾は所々泥がついていた。
「旦那様!旦那様!!!!」
リリーのただならぬ雰囲気にリアムは焦りの色を隠せない。
[ローズはどうした]
「宝石店から城に戻る時、、、馬車の中に見知らぬ男がいまして。その男にかどわかされました!!」
リリーは涙を溢れ出させながら地面に座り込んだ。
[?!]
「あの町はそれほど大きくはございません。監禁する場所も限られましょう。」
バトラーの言葉を耳にし2階から大きく掛け飛び、あっという間に城から外に飛び出す。
「バトラー様!騎士団の皆様にご報告を!」
「いや、旦那様には間に合わないだろう。それよりお迎えの準備をしよう。お湯と部屋を暖かくしておくれ。」
「はい、、、」
バトラーは不安そうに俯くリリーの肩に手を置く。
「心配するな、きっと旦那様が無事に奥様を連れて帰ってきてくださる。」
「あぁ、、、奥様。」
風のように走るリアムは風の中に微かに香るローズの匂いを嗅ぎ分け居場所を探る。
(ローズの故郷だからといって油断したっ)
匂いが段々強くなる。
それと共に見知らぬ匂い。
少し街から離れたところの森の中にポツンと小屋が建っていた。
すると小屋の中から声が聞こえてくる。
「君は知らないんだ、、、彼の本性を。戦争とはいえ人を殺して喜んでいるようなケダモノと、、、、あぁ、、やっと解放されたんだね。この機会を逃してはいけないよ。さぁ、僕と共に行こう。」
あぁ、、、ここでは俺が悪者なんだ。
そしてこの男にはローズがヴィランに捕まった姫にしか見えない。
当然だ、、、、
いつの間にか、、、、心さえも獣になってしまったのだ。
敵国の兵士を引き裂きながら、その快感に酔いしれていた。その心の内を見透かしたように俺は、、、姿さえも。
これは獣人族の呪いなのか?俺の本質では無いのか?
そんな考えを頭の中で巡らせていると、ローズの声で頭の霧が晴れるように澄み渡っていく。
「貴方は彼の何を知っていると言うの?貴方は彼のどんな本性を知っていると言うの?」
その声でローズとの思い出が頭をよぎる。
この姿を知ってもなお、、、俺だとわかってからは何も態度を変えることなく接してくれていた。
「私を、リアム・ヴェルグラの元に返して!」
あぁ、俺の元に帰ることを望んでくれるんだな?
ならば俺も応えよう。
次回に続く!
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【取り下げ予定】アマレッタの第二の人生
ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』
彼がそう言ったから。
アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。
だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。
「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」
その瞬間、アマレッタは思い出した。
この世界が、恋愛小説の世界であること。
そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。
アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。
一方、彼女が去った後。国は、緩やかに破滅の道を辿ることになる。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる