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新たな家族
第二十七話
しおりを挟む母の目が見えなくなった。
誰がやったかなんてすぐに分かる。
私が小屋に足を運んでいることがお母様に知れてしまった。
またお母様の嫉妬が暴走したのだ。
ノエルに渡された賄いに毒が仕込まれていた。
あわよくばノエルの口に入ればいいと思っての方法だろう。
もう、その瞳で私を見てくれることはなくなった。
もう、その瞳を見ることは出来なくなった。
また母上の一部が奪われてしまった。
ほかのメイドや召使いに対しても横暴なお母様であったが、、、、
手を出す相手を間違えたな。
レジーナの部屋のドアを荒々しく開け放つ。
「お母様。」
「あら、アヒン!」
「、、、、」
レジーナはシエルを見るや否や側まで駆けつけシエルの手を握る。
「どうしたのかしら?」
「いつも申していますが使用人とて人間です、過ぎた罰はせぬようにと!」
「人間?、、、いえ?アレはモノよ?我々の所有物であるモノが私の物に手を出すことは許されないのよ!」
ヒステリックに叫び始めるレジーナ。
「アレは最初私の夫に手を出した、、、、そしてその次は私の息子に手を出そうとした。あの女の目に映るだけでおぞましいわ。アヒンは私のよ?」
テーブルに手を付き、狂ったように何度も何度も同じ言葉をつぶやく。
「お母様、今回は行き過ぎております。毒など、、、下手すれば大事に!」
「何故あなたはあの女の肩をそんなにも持つの?何故あなたはあの女の所へ行くのかしら?」
じろりと睨みつけるレジーナに一瞬怯むシエル。
「主として病にかかっているという召使いが放っておけなかった。それだけです。」
拳を強く握りながらレジーナを宥めるが彼女は頭に血が登りシエルの言葉など心には届いていなかった。
「、、、、、もう殺すしか、、、」
「お母様!お待ちください!もう気はお済みでしょう!」
「ふふ、そう、、、あなたもあの女に魅入られてしまったのね。それなら私が、、、この母が目を覚まさせてあげましょう。」
異様な瞳をシエルに向けるレジーナはタンスの中からナイフを取り出す。
「お母様、、、、何を。」
ただならぬ雰囲気を纏うレジーナにシエルは構える。
ノエルたちが住む小屋ではアベル子爵と護衛騎士たちが取り囲みノエルは取り押さえられていた。
「お待ちください旦那様!母は!僕が持ってきた食事を食べただけに過ぎません!毒など母が持っているはずもありません!罰するなら、僕を!食事を持ってきた僕を罰してください!旦那様!!!!」
アベルは冷めた瞳でノエルを見下ろし、騎士たちが引きずり連れてきた母の首筋に剣先を向ける。
「誰が卑しい身分の者の言葉なんぞ聞き入れる?」
アベルはしゃがみ、母の顔をじろりと見る。
「久しいな、、、フロース。あの時の美しさの面影も無いではないか。」
ノエル達の母、フロースの顎を片手で持ち上げる。
「、、、、、、」
「フン、、、、おい。この女を小屋に戻しておけ。」
フロースは半ば引きずられながら小屋の中へと連れ入れられる。
アベルは騎士の1人に耳打ちをするとノエルの元へ戻る。
「さて、次はお前だ。」
「、、、、だ、、旦那様。一体何を。」
「お前にはアヒンの影となってもらおう。それほど似ているのだ。無理ではなかろう。」
「ぼ、、、僕が、、、シエルの?」
「シエル?あぁ、フロースが付けた名か。」
アベルは立ち上がると指を鳴らした。
その合図とともに小屋の中から騎士たちが出てき、外で待機していた騎士が持っていた松明を高く掲げた。
「始めろ」
アベルの言葉と共に油と火が放たれた。
次回に続く!
いよいよノエル&シエル編 クライマックスです!
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