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二人の関係
第二十話
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「わざわざこの城を暗主の血で汚すこともあるまい。」
ヴェルグラ家に使える騎士たちが子爵を取り押さえるとリアムは子爵を見下ろしながら目の前に剣を突き立てた。
「この城を我が妻はいたく気に入ったそうだ。あまり汚すこともあるまい。この城の者を全員捕らえろ。女子供もだ。」
リアムの号令と共に騎士たちは城の中に散っていった。
そのころローズはアベル子爵邸の中庭をリリーとともに歩いていた。
「こちらは寒いので寒色系の花が沢山咲いていますわね、奥様。」
「そうね、とても綺麗だわ。」
本邸に咲いている花とは違う花にローズも興味津々であった。
すると、少し先に小さな人影がローズの視線に入った。
「誰かいらっしゃるようね、邪魔しないようにしましょ?」
ローズは小声でリリーに伝える。
「奥様がご覧になるので人払いされているはずですが、、、」
「そうなの?」
その小さな影が次の瞬間ローズ前に飛び出した。
男の子だ。着ている服から見て恐らくこの家の当主のご子息だろうとすぐに分かった。
その少年は所々に擦り傷があり、息も上がっている。
思わず声をかけると大きく身を震わせ、茂みの影に隠れる。
「坊や?驚かせてしまってごめんなさい、よかったら出てきてくれないかしら?」
優しく問いかけるローズに恐る恐る少年が茂みの影から出てくる。
その少年は綺麗な蜂蜜色の瞳と夜のごとく黒い髪を持ったとても綺麗な少年だった。
「あ、、、あなたは、、、」
「わたし?」
するとリリーがそっとローズに耳打ちをする。
「奥様、ヴェルグラ家の騎士たちが来ます。」
言われた方向を見ると騎士たちがこちらに向かって小走りしてきていた。
咄嗟に少年を後ろに隠すと騎士たちがローズに跪く。
「奥様、突然の無礼お許しください。そこな子供をこちらに引渡しください。」
「1人の子供に何人もの大人が囲うものではありません。この子が何かしましたか?」
「その子供は今回横領事件を起こしたアベル子爵の子息にあたります。この城の者を全員捕らえるようにとのご命令でございます。」
「リアムが?」
「左様でございます。」
「この子は渡せません、道を開けなさい。リアムと話をします。君、名前は?」
少年に名前を問うとその子は震える声で名前を呟く。
「の、、、ノエル。」
「ノエル・アベル?」
「ぼ、僕は妾の子だって父様が、、、だからアベルと名乗ることを許されていないんだ。」
「そう、、、じゃあノエル?一緒に行きましょう?」
ノエルは小さく頷くとローズについて行った。
リアムはアベル子爵夫人の方に剣を置いていた。
「貴様の愚行が招いたことだ。領地ひとつもまともに統治できんとはな。」
「お許しくださいませ、お許しくださいませ!まだ息子は幼く、母がいなければ!母がいなければ!!」
「案ずるな、その子供もすぐにお前の元に送ってやる。」
騎士が雪のように白い髪とノエルと同じ瞳を持つ子供を連れてくる。
「アヒン!公爵様!お見逃しくださいまし!お見逃しくださいまし!」
「見逃してどうなる?」
夫人の声を遮る氷のように冷たく低い声が響き渡った。
「見逃したとして俺に何の得があるのだ?」
「そ、それは、、、」
震える声で何かを言おうと口をパクパクと夫人はさせながら自分の息子、アヒンとリアムを交互に見る。
「知っているはずだぞ?この俺に命乞いなど無意味だと。」
「む、息子だけでも!お助けいただけるのでしたらなんでも致します!」
「、、、そうか。」
リアムは夫人に近付いてしゃがみこみ耳元で囁く。
「アグノエル子爵については同じ子爵の者としては知っているだろう?」
「も、もちろんでございます。」
「5年前のアグノエル子爵令嬢が社交界に正式にデビューした舞踏会は覚えているか?」
「はい、、アグノエル子爵にご招待頂き、参加させて頂きましたわ。」
「ほぉ、、、あの場にいたのか。」
リアムはニヤリと笑ってみせると地より低い声で夫人にこう告げた。
「その時の記憶を俺に話している間は息子は無事だと思え。虚偽しているとわかった瞬間息子諸共貴様の命はないと思え。いいな。」
立ち上がり騎士に連れて行けと命じると騎士の1人がリアムに報告を入れる。
「公爵様、、、その、奥様が、、」
「ローズが?」
振り向くとローズが難しい表情で立っていた。
「リアム。」
「ローズ、庭で待っていろ。すぐに終わらせる。」
「リアム、その子供は?」
騎士に取り押さえられている子供に目をやる。
「子爵の息子だ。」
「どうするおつもりですか?」
「牢にでもいれるさ。それよりお前の後ろにいる子供もここの者か?こちらに渡せ。」
「嫌です。」
「ローズ。」
初めてハッキリと「拒絶」を口にしたローズに眉間に皺を寄せるリアム。
「お仕事に口を挟むつもりはありませんが、子供に手を出すことに関しては無視することはできません!」
「どうするつもりだ。」
「私がお預かりします。」
「預かる?育てるつもりか?」
「、、、私の付き人として側に置きます。」
「、、、、、好きにしろ。」
ローズはアヒンを取り押さえている騎士に離すように促す。
「2人ともおいで。」
ローズはリリー、ノエル、アヒンと共にホールを後にした。
第二章 二人の関係 ~完~
ヴェルグラ家に使える騎士たちが子爵を取り押さえるとリアムは子爵を見下ろしながら目の前に剣を突き立てた。
「この城を我が妻はいたく気に入ったそうだ。あまり汚すこともあるまい。この城の者を全員捕らえろ。女子供もだ。」
リアムの号令と共に騎士たちは城の中に散っていった。
そのころローズはアベル子爵邸の中庭をリリーとともに歩いていた。
「こちらは寒いので寒色系の花が沢山咲いていますわね、奥様。」
「そうね、とても綺麗だわ。」
本邸に咲いている花とは違う花にローズも興味津々であった。
すると、少し先に小さな人影がローズの視線に入った。
「誰かいらっしゃるようね、邪魔しないようにしましょ?」
ローズは小声でリリーに伝える。
「奥様がご覧になるので人払いされているはずですが、、、」
「そうなの?」
その小さな影が次の瞬間ローズ前に飛び出した。
男の子だ。着ている服から見て恐らくこの家の当主のご子息だろうとすぐに分かった。
その少年は所々に擦り傷があり、息も上がっている。
思わず声をかけると大きく身を震わせ、茂みの影に隠れる。
「坊や?驚かせてしまってごめんなさい、よかったら出てきてくれないかしら?」
優しく問いかけるローズに恐る恐る少年が茂みの影から出てくる。
その少年は綺麗な蜂蜜色の瞳と夜のごとく黒い髪を持ったとても綺麗な少年だった。
「あ、、、あなたは、、、」
「わたし?」
するとリリーがそっとローズに耳打ちをする。
「奥様、ヴェルグラ家の騎士たちが来ます。」
言われた方向を見ると騎士たちがこちらに向かって小走りしてきていた。
咄嗟に少年を後ろに隠すと騎士たちがローズに跪く。
「奥様、突然の無礼お許しください。そこな子供をこちらに引渡しください。」
「1人の子供に何人もの大人が囲うものではありません。この子が何かしましたか?」
「その子供は今回横領事件を起こしたアベル子爵の子息にあたります。この城の者を全員捕らえるようにとのご命令でございます。」
「リアムが?」
「左様でございます。」
「この子は渡せません、道を開けなさい。リアムと話をします。君、名前は?」
少年に名前を問うとその子は震える声で名前を呟く。
「の、、、ノエル。」
「ノエル・アベル?」
「ぼ、僕は妾の子だって父様が、、、だからアベルと名乗ることを許されていないんだ。」
「そう、、、じゃあノエル?一緒に行きましょう?」
ノエルは小さく頷くとローズについて行った。
リアムはアベル子爵夫人の方に剣を置いていた。
「貴様の愚行が招いたことだ。領地ひとつもまともに統治できんとはな。」
「お許しくださいませ、お許しくださいませ!まだ息子は幼く、母がいなければ!母がいなければ!!」
「案ずるな、その子供もすぐにお前の元に送ってやる。」
騎士が雪のように白い髪とノエルと同じ瞳を持つ子供を連れてくる。
「アヒン!公爵様!お見逃しくださいまし!お見逃しくださいまし!」
「見逃してどうなる?」
夫人の声を遮る氷のように冷たく低い声が響き渡った。
「見逃したとして俺に何の得があるのだ?」
「そ、それは、、、」
震える声で何かを言おうと口をパクパクと夫人はさせながら自分の息子、アヒンとリアムを交互に見る。
「知っているはずだぞ?この俺に命乞いなど無意味だと。」
「む、息子だけでも!お助けいただけるのでしたらなんでも致します!」
「、、、そうか。」
リアムは夫人に近付いてしゃがみこみ耳元で囁く。
「アグノエル子爵については同じ子爵の者としては知っているだろう?」
「も、もちろんでございます。」
「5年前のアグノエル子爵令嬢が社交界に正式にデビューした舞踏会は覚えているか?」
「はい、、アグノエル子爵にご招待頂き、参加させて頂きましたわ。」
「ほぉ、、、あの場にいたのか。」
リアムはニヤリと笑ってみせると地より低い声で夫人にこう告げた。
「その時の記憶を俺に話している間は息子は無事だと思え。虚偽しているとわかった瞬間息子諸共貴様の命はないと思え。いいな。」
立ち上がり騎士に連れて行けと命じると騎士の1人がリアムに報告を入れる。
「公爵様、、、その、奥様が、、」
「ローズが?」
振り向くとローズが難しい表情で立っていた。
「リアム。」
「ローズ、庭で待っていろ。すぐに終わらせる。」
「リアム、その子供は?」
騎士に取り押さえられている子供に目をやる。
「子爵の息子だ。」
「どうするおつもりですか?」
「牢にでもいれるさ。それよりお前の後ろにいる子供もここの者か?こちらに渡せ。」
「嫌です。」
「ローズ。」
初めてハッキリと「拒絶」を口にしたローズに眉間に皺を寄せるリアム。
「お仕事に口を挟むつもりはありませんが、子供に手を出すことに関しては無視することはできません!」
「どうするつもりだ。」
「私がお預かりします。」
「預かる?育てるつもりか?」
「、、、私の付き人として側に置きます。」
「、、、、、好きにしろ。」
ローズはアヒンを取り押さえている騎士に離すように促す。
「2人ともおいで。」
ローズはリリー、ノエル、アヒンと共にホールを後にした。
第二章 二人の関係 ~完~
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