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契約結婚

第六話

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婚約発表当日。

リアムはアグノエル城に迎えに来た。
既に玄関の前に美しく着飾ったローズが執事ととも立っていた。
馬車までローズが寄ると首元にはリアムが贈った首飾りが着けられており、
リアムはローズが着けて来てくれたことを何よりも喜んだ。

「美しいな。」

「ありがとうございます、ヴェルグラ様」

「リアム、」

「?」

ローズが顔を上げると、リアムが優しい表情でローズに手を差し出す。

「婚約者にファミリーネームは不自然だろう?」

「り、リアム様」

リアムは名前を呼ばれフッと微笑むと、「あぁ、それでいい」
と一言ローズに返す。

「行こうかローズ」

不意に名前を呼ばれローズは少し顔を赤くしながらリアムに手を引かれ馬車に乗る。

「久しぶりの舞踏会だろう?私が主催者だから問題は無いと思うが私から離れるんじゃないぞ?」

「はい、」

ローズは不安な反面リアムと共にある事で心強さも感じていた。
ヴェルグラ邸に着くと既に舞踏会は始まっており、参加者は婚約者であるローズの登場を待っていた。
ローズのリアムの腕を組む手に少し力が入る。
扉の前でリアムはローズを見ながら

「怖いか?」

と問う。

ローズは深呼吸をし、首もとの首飾りに触れながら

「はい、、、ですが問題はございません。」

リアムは満足気に笑うと「行くぞ」と扉の向こう側へと足を踏み出した。

舞踏会の会場であるホールにたどり着くと会場の皆は一斉にリアムとローズに視線をやる。

「まぁ、あの方がローズ嬢ね!」

「噂通りの美しさだわ!」

「美男美女のカップルだな」

みな口々に賞賛の声を上げていく。

リアムは少し声を張り挨拶をする。

「本日はわたくし主催の舞踏会にお越しくださり誠にありがとうございます。皆様もうご存知かもしれませんがこの度わたくしリアム・ヴェルグラはローズ・アグノエルと婚約を致しましたことをここに発表させていただきます。」

リアムの言葉で会場に拍手が起こる。

「では引き続きお楽しみください。」


するとスっとリアムたちの前にひとりの女性が現れる。


「リアム様、この度はご招待誠にありがとうございます。」

ピンクローズの髪色を綺麗に纏めた女性。彼女こそがアデル・ガロワ皇女であった。

「ところでリアム様、サロンへの招待状は届きましたこと?」

「えぇ、しかし参加はできません。」

申し訳ないと頭を軽く下げるリアムにアデルはリアムにグイッと近づく

「そんな、今回も参加出来ないのですか?せっかく美味しい紅茶を取り寄せましたのよ?それに新しい庭師を雇いましたの!更に美しくなった庭をぜひ、、、」

「アデル皇女、わたくしはローズと婚約をしている身です。そのような場に軽々しく出ることはできません。」

アデルの言葉を遮るように無表情に答えるリアム。

突き返されたアデルはローズをちらりと見る。

「配慮が足りなかったみたいですわね?ではわたくしはこれで失礼致しますわ。」

明らかに不機嫌になったアデルは会場を出ていった。

リアムはその姿を見送るとローズに「少し風に当たろう」と言いバルコニーに連れ出した。

「あ、あの。リアム様?皇女様のお誘いお断りしてよかったのですか?」

ローズの恐る恐る聞く声にリアムは眉間に皺を寄せながら「あぁ」と言いそのまま続けた。

「婚約者であるお前に挨拶もしない者に払う敬意などない。」

「、、、」

「心配か?」

「あの、要らぬ事かと思いますが、その。皇女様はリアム様のことを、、、、」

「あぁ、気付いているとも。俺の見てくれだけに寄ってきた女のひとりだ。皇室のお飾りになる気は無い。」

「ですが皇女様とご結婚なされば皇帝になられたのでは?」

ローズが星空を見ながら問うと不意にリアムの手がローズの頬に触れる。

「俺はガロワになる気は無い。ヴェルグラ家に誇りを持っているからな。それに、」

リアムはもう片方の手でローズの腰を抱き寄せる。

「俺はお前と婚約したんだ。ほかの女を見る必要はないだろ?」

ローズは困惑しながら口をパクパクさせているとリアムの顔が徐々にに近付いてくる。
愛しそうにリアムはゆっくりとローズに口付けをする。
名残惜しそうに離すと顔を真っ赤にするローズ。

「嫌だったら拒め。」

顔を真っ赤にしながら目に涙を浮かべるローズにリアムは苦しそうな表情をし、話を続ける。

「泣くほど嫌か?なら拒め。拒んでくれ、、、、」

請うように呟くリアム。

「こんなに気持ちが溢れるなんて、、、契約関係のはずなんだ、、、、、だがお前と過ごす度に感じたことの無い感情に支配されている。」

ローズの肩に顔を埋めるリアム。
ローズは抱きしめるように背中をさする。

「嫌なら拒んでくれ、、、

俺はお前に、恋をしている。」

ローズは苦しそうなリアムに優しく問いかける。

「なぜ、私を選んでくださったのですか?なぜ、、、

選んでしまったのですか?」





私は呪われている。それでも私を選んでくださるのですか?

私はそれを期待しても良いのでしょうか。




次回をお楽しみに!




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