上 下
5 / 66
契約結婚

第四話

しおりを挟む
「俺は愛を知らない。」

ローズはリアムの言葉に立ち止まる。

「俺の事を何一つ分かっていない者に愛を囁かれても何も響かない。」

いつもの涼しげなリアムが一瞬悲しそうな表情を見せローズは思わず見つめていた。

「なんだ?」

「いつか、いつかきっとあなたを心の底から愛してくれる方が現れます」

ローズが初めてリアムの目を見て言葉を口にし、2人は思わず見つめ合うが慌てて目を逸らした。


「そろそろ戻るぞ。」


それからというものリアムはローズの元を訪れた。

ローズはいつも決まって図書室にいた。リアムもローズと共に本を読み、たまにローズの方を伺っていた。

「本はお好きですか?」

珍しくローズから話しかけてきた。

「嫌いではないな、本から得られる情報は貴重だ。」

ローズが少し驚きながら、再び本に目を落とす。

「婚約式のときのドレスは決まったか?」

「え?えぇ、母からいつかの為にと渡されたものを着ようかと。」

「そうか、」

再び沈黙が流れる。

リアムはローズを本の間からふと見ると、世間が美女と騒ぐのも理解出来る程だと感じた。
白い肌に薔薇のように紅い唇、綺麗なアイボリーな髪は陽の光に照らされて輝いていた。
天使というものがいるのならきっと彼女のような容姿なのだろうと不意に思うのだった。

しかし、外を知らない。

こんなに本を読んで色んなことを知っているのに。

まるで城に囚われた姫のように、、、

おとぎ話に出てくるような姫のように、

「近いうちに街に行こう。」

気が付いたら口から言葉が出ていた。

ローズは言葉を聞きリアムに視線をやる。

「街、ですか?」

最近は会話をする時、顔を見てくれる。
大好きなはずの本から目線を自分に向けてくれることにリアムは嬉しく思っていた。

「あぁ、なにか入用のものがあれば買っておこう。」

ローズは少し考えると、「はい」と答えた。



街に行くと人の賑わいにローズは少々戸惑っていた。
そんなローズの手をリアムはそっと取る。

「捕まれ、迷子になるぞ。」

フッと笑いながらリアムはローズの手を引きながら街を歩く。
ローズは街中にある屋台やお店のショーウィンドウの中を目を輝かせながら見ていた。
その中でもりんご飴を売っているお店を見ていた。
リアムは気付くと1本買ってローズに手渡す。

「ヴェルグラ様、も、申し訳ないです!」

「いいから、食え。」

「い、いただきます。」

初めて食べたのか、目を輝かせながら小さい口で一所懸命りんご飴をかじる。
そんな姿をリアムは目を細めて見つめていた。

「そんなに上手いか?」

「えぇ!こんな食べ物初めてです!」

初めて見せるローズの笑顔にリアムは目を見開く。
すると、ローズが食べているりんご飴にリアムが顔を近づけかじる。
不意に至近距離でリアムに見つめられる
ローズは顔を赤くさせ慌てて離れる。
「甘いな」といいながらペロっと自分の唇を舐めた。

赤くなるローズと、それを満足気に見るリアム。

その後、日が落ちるまで街を周った。


リアムがローズに向ける感情に気が付くまであと、、、、、、




次回をお楽しみに!


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【取り下げ予定】アマレッタの第二の人生

ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』 彼がそう言ったから。 アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。 だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。 「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」 その瞬間、アマレッタは思い出した。 この世界が、恋愛小説の世界であること。 そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。 アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。 一方、彼女が去った後。国は、緩やかに破滅の道を辿ることになる。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...