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王宮内暗殺事件編
第87話 レーナとダリア
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レーナが連れてきた使用人たちはダリア直々にレイヴンが持ってきた手紙によって命令を受けていた。
別宮の使用人を牽制せよ…と。
その命令もあってか別宮の使用人に文句を言われながらも構うことなく部屋の掃除に丁寧な対応でレーナとカリムをもてなしていた。
レーナがアヤ側妃に礼を尽くしていることに誰もが驚いていた。
「あ、あの夫人?どうかごゆっくりなさって?」
「何を仰います、妃殿下の業務をお支えすることもわたくしの使命にございます。それに本来ならこのようなことは侍女であり女官でもあるわたくしめの仕事にございます。」
「え、で、でもエバーテル夫人は側妃であるわたくしの仕事であると。」
「エバーテル伯夫人がですか?」
もちろん別宮の主であるアヤ側妃が管理をするのは間違っていない。
しかしその細やかな業務、例えば来賓・貴賓の対応担当。
備品管理担当、食品担当など、それぞれに女官が付き仕事をするのが普通である。
それを証拠に王妃宮には50人ほどの女官が王妃の下で仕えている。
(それにしても別宮を管理している女官がたった3人なんて……ミレーヌ側妃がお住いの別宮にだって20人は女官が付いているのに。)
「エバーテル伯夫人は、カリムの教育係でもあって…それ以上の負担をかける訳には。」
(妃殿下…それは本来なら別の夫人を教育係として迎えるのが正しいんです。)
泣きたくなるレーナはダリアとのやり取りを思い出した。
「反セーレム派の?」
「そうです、エバーテル伯爵もリバティー侯爵もどちらも反セーレム派の貴族。アルベルト王子は来年学園へ通うため王宮を離れる。ベルファ殿下は王太子として本格的に準備に入り各地の視察が増えることでしょう。アヤ側妃とカリム殿下を殺し、戦争へ焚きつけるのには十分な隙です。」
「何故そこまでしてセーレム皇国と戦争をしたがるのでしょう?」
「戦争をしたがる連中というのは案外沢山います。例えば武器商売を盛んとする貴族やセーレムの豊かな資源を狙う貴族、我々王国からしたら和睦などせずに征服してしまったほうが好き勝手出来るのですよ。だからセーレムの皇帝は慌ててアヤ側妃をディシュタイン王国に送ったのです。」
「そんな……」
「暗殺もただの暗殺ではないでしょう。セーレムに戦争を仕掛ける口実が欲しいのでしょうから、きっとアヤ側妃に罪を着せるような計画に違いありません。」
「……」
「レーナ殿、これからあなたがたを送り出すのはそういう場所です。あなたがたには側妃とカリム殿下を守ってもらいたい。」
「お嬢様からお救い頂いたご恩をお返しさせていただきます。」
「よいお返事です、ではそのように。」
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹🌌
別宮の使用人を牽制せよ…と。
その命令もあってか別宮の使用人に文句を言われながらも構うことなく部屋の掃除に丁寧な対応でレーナとカリムをもてなしていた。
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「あ、あの夫人?どうかごゆっくりなさって?」
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泣きたくなるレーナはダリアとのやり取りを思い出した。
「反セーレム派の?」
「そうです、エバーテル伯爵もリバティー侯爵もどちらも反セーレム派の貴族。アルベルト王子は来年学園へ通うため王宮を離れる。ベルファ殿下は王太子として本格的に準備に入り各地の視察が増えることでしょう。アヤ側妃とカリム殿下を殺し、戦争へ焚きつけるのには十分な隙です。」
「何故そこまでしてセーレム皇国と戦争をしたがるのでしょう?」
「戦争をしたがる連中というのは案外沢山います。例えば武器商売を盛んとする貴族やセーレムの豊かな資源を狙う貴族、我々王国からしたら和睦などせずに征服してしまったほうが好き勝手出来るのですよ。だからセーレムの皇帝は慌ててアヤ側妃をディシュタイン王国に送ったのです。」
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「……」
「レーナ殿、これからあなたがたを送り出すのはそういう場所です。あなたがたには側妃とカリム殿下を守ってもらいたい。」
「お嬢様からお救い頂いたご恩をお返しさせていただきます。」
「よいお返事です、ではそのように。」
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