悪役令嬢の心変わり

ナナスケ

文字の大きさ
上 下
47 / 114
アストルム騎士団創立編

第40話 悪役令嬢 街作る

しおりを挟む
「公爵家からの公金にも手を出しているな?」

「なっ!なにを言い出します!」

明らかに慌てているリンチに余裕の笑みを浮かべながらダリアは一枚の紙を取り出してピラピラと見せつける。

「これは公爵家がクロース領に送金した際の書類だ。金貨1万はとうに超えている。さて質問だ。この金は一体何に使われているんだ?この金さえあれば民に高額な税を課さなくとも、作物が育たなくとも民が貴殿に借金をするようなことはないと思うのだが?」

「そ、それは、、こ、この土地はダリア嬢が思われているよりも酷い状況です、、、この金は、、、」

「金が足りぬと申すか。その割には貴殿の身なりはとても整っているな?食器も宝石も。使用人の数も多い。彼はボランティアか何かなのか?」

汗が止まらぬ様子のリンチはボソボソと呟き始める。
ダリアが耳を済ませてみると「証拠は何も無い」と繰り返しているのがわかった。
ダリアはレイヴンを呼び口にくわえている書類を受け取るとそれを真上に投げ捨てた。
書類がゆっくりと舞いながら落ちるその隙間からダリアの氷のように冷たい瞳がリンチの目に突き刺さり恐怖の色に変わる。

「公爵家から預かり受けた金がこの書類ひとつひとつに非合法な品、組織に行き渡っていることが記されている。公爵家からの金がそのまま横流しになっているということだ。」


(な、なんなんだ、、、なんでこんな子供に私は追い詰められている?たしか、、、ご令嬢は10歳かそこらだろう!なぜこんな、、、こんな、、、)


「このことが父上に知られたらどうなるか。」

「ひっ!ど、どうか!どうかお助けを!ほんの、、、ほんの出来心でございます!私がしたことは全てこの土地のためであると!公爵様のためであると!!いかなる方法でも公爵領の発展を目指してのこと!」

見苦しく縋り付くリンチにダリア静かに吐き捨てる。

「そうやって助けを求めた者をお前は何人見殺しにした?」


絶望に膝をつき空いた口からは空気しか出入りせずその目にはもはや何を言っても無駄だとひと目でわかる程の冷たい瞳だった。



「この裁きは父上が下すだろう。この者を拘束しろ!家族も屋敷から探し出して全て捕らえろ!リンチ・クロースは公爵家本邸に連れていく。その他のものは地下牢に入れておけ!」

ダリアの命令と共に騎士見習い達が一斉に動き始める。

リンチ・クロースはこうして拘束され、妻、息子、愛人、などといった者は拘束された後地下牢へと投獄されることとなった。

「屋敷を隅々まで探せ、財産は全て没収しこの領地の当地資金に充てる。」

屋敷の中が慌ただしくなる中いくつかの影が蠢きながらダリアの元へと近づき、その影から騎士見習いが数人出てくる。
その先頭に黒髪の少年がダリアの前に立った。

「ノアか、掃除・・は終わったか?」

「えぇ、終わりましたよ。薬漬けにされた者たちは風の騎士たちに任せた。医療は彼らの方が得意ですから。」

「ご苦労、本邸に引き上げてくれ。」

「承知。」

再び影の中に入っていくと影はどこかへ消えていった。

(ふむ、あまり手応えがないな。もっと断罪しがいのある外道はいないものかね、、、)

「公女、こちらの領地は如何なさいますか。公女自ら統治なさるのですか?」

キースがダリアに問うと少し考えるように首を傾げながらそっと瞼をとざす。

「んー、そうだなぁ。暫くはここにいた方がいいだろう。港町の有様が酷い、整備をどのようにするのか。それに、、、」

「?」

何かを企むようにニヤつくダリアをキースは嫌な予感を身に感じていた。

「海風のせいで作物が育たないということだったな。ならば漁業で街を興すしかなかろうて!」

「漁業、、、ですか?」

「ヴェネツィアのように街に水路を作るのだ、市場も移そう。漁師を何人か雇って漁師見習いを募れ、船なら没収した金で何艘か帰るだろう。」

「ヴェ、、、、ヴェネツィアとは?」

(あ、、、、そっか通じないか。)

「ゴホンっ、、、気にするな。」


こうして、クロース領あらため ベルメール領と名付けられた。
綺麗に整えられた街並みに沿うように水路が流れ、ゴンドラがゆったりと流れていく穏やかな町となった。
このベルメール港では漁業が盛んとなり他領との取引も増えあっという間にこの街は豊となった。
税金も当初より半分以下のものとなり麻薬や密輸武器の取り締まりも厳しくなった。

そして、水属性の見習い騎士を集めたキース率いる「水の騎士」がベルメール港の守護を任命されることとなった。



「アルマ、、、ダリア・クロウリー嬢と仲良くなるんだ。いいね?」





「はい!お父様!」







𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

王妃教育受けてても、浮気、だめ、絶対

かぜかおる
ファンタジー
私は今、平民が使うような粗末な馬車に揺られて国境へと向かっている。 昨日までこの国の筆頭公爵家の令嬢として、皇太子の婚約者として、栄華を誇っていた私がなぜ今こんなことになっているのか、ちょっと話に付き合ってもらえないだろうか。

ヤンデレ王子とだけは結婚したくない

小倉みち
恋愛
 公爵令嬢ハリエットは、5歳のある日、未来の婚約者だと紹介された少年を見てすべてを思い出し、気づいてしまった。  前世で好きだった乙女ゲームのキャラクター、しかも悪役令嬢ハリエットに転生してしまったことに。  そのゲームの隠し攻略対象である第一王子の婚約者として選ばれた彼女は、社交界の華と呼ばれる自分よりもぽっと出の庶民である主人公がちやほやされるのが気に食わず、徹底的に虐めるという凄まじい性格をした少女であるが。  彼女は、第一王子の歪んだ性格の形成者でもあった。  幼いころから高飛車で苛烈な性格だったハリエットは、大人しい少年であった第一王子に繰り返し虐めを行う。  そのせいで自分の殻に閉じこもってしまった彼は、自分を唯一愛してくれると信じてやまない主人公に対し、恐ろしいほどのヤンデレ属性を発揮する。  彼ルートに入れば、第一王子は自分を狂わせた女、悪役令嬢ハリエットを自らの手で始末するのだったが――。  それは嫌だ。  死にたくない。  ということで、ストーリーに反して彼に優しくし始めるハリエット。  王子とはうまいこと良い関係を結びつつ、将来のために結婚しない方向性で――。  そんなことを考えていた彼女は、第一王子のヤンデレ属性が自分の方を向き始めていることに、全く気づいていなかった。

処理中です...