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アストルム騎士団創立編
第40話 悪役令嬢 街作る
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「公爵家からの公金にも手を出しているな?」
「なっ!なにを言い出します!」
明らかに慌てているリンチに余裕の笑みを浮かべながらダリアは一枚の紙を取り出してピラピラと見せつける。
「これは公爵家がクロース領に送金した際の書類だ。金貨1万はとうに超えている。さて質問だ。この金は一体何に使われているんだ?この金さえあれば民に高額な税を課さなくとも、作物が育たなくとも民が貴殿に借金をするようなことはないと思うのだが?」
「そ、それは、、こ、この土地はダリア嬢が思われているよりも酷い状況です、、、この金は、、、」
「金が足りぬと申すか。その割には貴殿の身なりはとても整っているな?食器も宝石も。使用人の数も多い。彼はボランティアか何かなのか?」
汗が止まらぬ様子のリンチはボソボソと呟き始める。
ダリアが耳を済ませてみると「証拠は何も無い」と繰り返しているのがわかった。
ダリアはレイヴンを呼び口にくわえている書類を受け取るとそれを真上に投げ捨てた。
書類がゆっくりと舞いながら落ちるその隙間からダリアの氷のように冷たい瞳がリンチの目に突き刺さり恐怖の色に変わる。
「公爵家から預かり受けた金がこの書類ひとつひとつに非合法な品、組織に行き渡っていることが記されている。公爵家からの金がそのまま横流しになっているということだ。」
(な、なんなんだ、、、なんでこんな子供に私は追い詰められている?たしか、、、ご令嬢は10歳かそこらだろう!なぜこんな、、、こんな、、、)
「このことが父上に知られたらどうなるか。」
「ひっ!ど、どうか!どうかお助けを!ほんの、、、ほんの出来心でございます!私がしたことは全てこの土地のためであると!公爵様のためであると!!いかなる方法でも公爵領の発展を目指してのこと!」
見苦しく縋り付くリンチにダリア静かに吐き捨てる。
「そうやって助けを求めた者をお前は何人見殺しにした?」
絶望に膝をつき空いた口からは空気しか出入りせずその目にはもはや何を言っても無駄だとひと目でわかる程の冷たい瞳だった。
「この裁きは父上が下すだろう。この者を拘束しろ!家族も屋敷から探し出して全て捕らえろ!リンチ・クロースは公爵家本邸に連れていく。その他のものは地下牢に入れておけ!」
ダリアの命令と共に騎士見習い達が一斉に動き始める。
リンチ・クロースはこうして拘束され、妻、息子、愛人、などといった者は拘束された後地下牢へと投獄されることとなった。
「屋敷を隅々まで探せ、財産は全て没収しこの領地の当地資金に充てる。」
屋敷の中が慌ただしくなる中いくつかの影が蠢きながらダリアの元へと近づき、その影から騎士見習いが数人出てくる。
その先頭に黒髪の少年がダリアの前に立った。
「ノアか、掃除は終わったか?」
「えぇ、終わりましたよ。薬漬けにされた者たちは風の騎士たちに任せた。医療は彼らの方が得意ですから。」
「ご苦労、本邸に引き上げてくれ。」
「承知。」
再び影の中に入っていくと影はどこかへ消えていった。
(ふむ、あまり手応えがないな。もっと断罪しがいのある外道はいないものかね、、、)
「公女、こちらの領地は如何なさいますか。公女自ら統治なさるのですか?」
キースがダリアに問うと少し考えるように首を傾げながらそっと瞼をとざす。
「んー、そうだなぁ。暫くはここにいた方がいいだろう。港町の有様が酷い、整備をどのようにするのか。それに、、、」
「?」
何かを企むようにニヤつくダリアをキースは嫌な予感を身に感じていた。
「海風のせいで作物が育たないということだったな。ならば漁業で街を興すしかなかろうて!」
「漁業、、、ですか?」
「ヴェネツィアのように街に水路を作るのだ、市場も移そう。漁師を何人か雇って漁師見習いを募れ、船なら没収した金で何艘か帰るだろう。」
「ヴェ、、、、ヴェネツィアとは?」
(あ、、、、そっか通じないか。)
「ゴホンっ、、、気にするな。」
こうして、クロース領あらため ベルメール領と名付けられた。
綺麗に整えられた街並みに沿うように水路が流れ、ゴンドラがゆったりと流れていく穏やかな町となった。
このベルメール港では漁業が盛んとなり他領との取引も増えあっという間にこの街は豊となった。
税金も当初より半分以下のものとなり麻薬や密輸武器の取り締まりも厳しくなった。
そして、水属性の見習い騎士を集めたキース率いる「水の騎士」がベルメール港の守護を任命されることとなった。
「アルマ、、、ダリア・クロウリー嬢と仲良くなるんだ。いいね?」
「はい!お父様!」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭🌌
「なっ!なにを言い出します!」
明らかに慌てているリンチに余裕の笑みを浮かべながらダリアは一枚の紙を取り出してピラピラと見せつける。
「これは公爵家がクロース領に送金した際の書類だ。金貨1万はとうに超えている。さて質問だ。この金は一体何に使われているんだ?この金さえあれば民に高額な税を課さなくとも、作物が育たなくとも民が貴殿に借金をするようなことはないと思うのだが?」
「そ、それは、、こ、この土地はダリア嬢が思われているよりも酷い状況です、、、この金は、、、」
「金が足りぬと申すか。その割には貴殿の身なりはとても整っているな?食器も宝石も。使用人の数も多い。彼はボランティアか何かなのか?」
汗が止まらぬ様子のリンチはボソボソと呟き始める。
ダリアが耳を済ませてみると「証拠は何も無い」と繰り返しているのがわかった。
ダリアはレイヴンを呼び口にくわえている書類を受け取るとそれを真上に投げ捨てた。
書類がゆっくりと舞いながら落ちるその隙間からダリアの氷のように冷たい瞳がリンチの目に突き刺さり恐怖の色に変わる。
「公爵家から預かり受けた金がこの書類ひとつひとつに非合法な品、組織に行き渡っていることが記されている。公爵家からの金がそのまま横流しになっているということだ。」
(な、なんなんだ、、、なんでこんな子供に私は追い詰められている?たしか、、、ご令嬢は10歳かそこらだろう!なぜこんな、、、こんな、、、)
「このことが父上に知られたらどうなるか。」
「ひっ!ど、どうか!どうかお助けを!ほんの、、、ほんの出来心でございます!私がしたことは全てこの土地のためであると!公爵様のためであると!!いかなる方法でも公爵領の発展を目指してのこと!」
見苦しく縋り付くリンチにダリア静かに吐き捨てる。
「そうやって助けを求めた者をお前は何人見殺しにした?」
絶望に膝をつき空いた口からは空気しか出入りせずその目にはもはや何を言っても無駄だとひと目でわかる程の冷たい瞳だった。
「この裁きは父上が下すだろう。この者を拘束しろ!家族も屋敷から探し出して全て捕らえろ!リンチ・クロースは公爵家本邸に連れていく。その他のものは地下牢に入れておけ!」
ダリアの命令と共に騎士見習い達が一斉に動き始める。
リンチ・クロースはこうして拘束され、妻、息子、愛人、などといった者は拘束された後地下牢へと投獄されることとなった。
「屋敷を隅々まで探せ、財産は全て没収しこの領地の当地資金に充てる。」
屋敷の中が慌ただしくなる中いくつかの影が蠢きながらダリアの元へと近づき、その影から騎士見習いが数人出てくる。
その先頭に黒髪の少年がダリアの前に立った。
「ノアか、掃除は終わったか?」
「えぇ、終わりましたよ。薬漬けにされた者たちは風の騎士たちに任せた。医療は彼らの方が得意ですから。」
「ご苦労、本邸に引き上げてくれ。」
「承知。」
再び影の中に入っていくと影はどこかへ消えていった。
(ふむ、あまり手応えがないな。もっと断罪しがいのある外道はいないものかね、、、)
「公女、こちらの領地は如何なさいますか。公女自ら統治なさるのですか?」
キースがダリアに問うと少し考えるように首を傾げながらそっと瞼をとざす。
「んー、そうだなぁ。暫くはここにいた方がいいだろう。港町の有様が酷い、整備をどのようにするのか。それに、、、」
「?」
何かを企むようにニヤつくダリアをキースは嫌な予感を身に感じていた。
「海風のせいで作物が育たないということだったな。ならば漁業で街を興すしかなかろうて!」
「漁業、、、ですか?」
「ヴェネツィアのように街に水路を作るのだ、市場も移そう。漁師を何人か雇って漁師見習いを募れ、船なら没収した金で何艘か帰るだろう。」
「ヴェ、、、、ヴェネツィアとは?」
(あ、、、、そっか通じないか。)
「ゴホンっ、、、気にするな。」
こうして、クロース領あらため ベルメール領と名付けられた。
綺麗に整えられた街並みに沿うように水路が流れ、ゴンドラがゆったりと流れていく穏やかな町となった。
このベルメール港では漁業が盛んとなり他領との取引も増えあっという間にこの街は豊となった。
税金も当初より半分以下のものとなり麻薬や密輸武器の取り締まりも厳しくなった。
そして、水属性の見習い騎士を集めたキース率いる「水の騎士」がベルメール港の守護を任命されることとなった。
「アルマ、、、ダリア・クロウリー嬢と仲良くなるんだ。いいね?」
「はい!お父様!」
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