上 下
99 / 109

94 お祝いの手紙と予想外の展開

しおりを挟む
 マルリカの実を使って子供が出来た事と、多分十一の月の後半から十二の月の頭くらいに生まれる予定だってお知らせをしたら、次々に皆からお祝いの書簡が届いた。
 いつもなら魔法を使って書簡を送るんだけど、今回は魔道具を使った魔道書簡でテオに送ってもらったんだ。

 トーマス君の書簡には沢山の「おめでとう」と、それと同じくらい「嬉しい」って書かれていた。まだ早いけれど僕達の子供は、僕達と同じように学園で同じ時を過ごせるんだねって。
 確かにお互いにまだお腹の中にいる子供なんだけど、トーマス君が書いてくれたようにそうなったら嬉しいって思ったよ。
 ユージーン君からは顔を見せられなくてごめんって書かれていた。トーマス君が行きたいって言ってくれたのかな。でも、安定期に入っていても転移の魔法陣を使うのはやっぱり旦那様としては考えちゃうよね。
 安定期なら大丈夫じゃないかなって思うけど、もしも僕が同じように言ったら、きっと兄様もやめてほしいって思うんだろうな。
 トーマス君の方が早く生まれるから、今年の終わりとか来年になったら顔を見せに来てくれると嬉しいな。そうしたら大変だった事も、未来の事も沢山話したい。そんな風に返事を出した。

 レナード君からはお祝いの言葉と一緒に嬉しい知らせが書かれていた。多分来年の春くらいにお父さんになるんだって。
 そしてエリック君もお祝いの言葉と一緒に次々におめでたい知らせが入るから二人目も考えようかななんて思っているって一文があったよ。確か最初の子がマリーのところのシンシアと一緒の年なんだよね。
 ふふふ、幸せがどんどん広がっている感じかな。

 ルシルはもう子供が出来た事は知っているけれど、改めてお礼と皆に知らせた事を書いた書簡を送った。
 そしてグリーンベリーにいるミッチェル君とブライアン君、スティーブ君、クラウス君はもちろん僕の状況を知っているからお知らせの書簡は出さなかったんだけど、色々と心配をかけたお詫びと、なんとかつわりもおさまったので少しずつ仕事をしていきたいっていう書簡を出した。
 そうしたら兄様から「まずはこの屋敷で出来る仕事から始めよう。でも今すぐは無理かな。もう少し体重を戻さないとね」ってにっこりされてしまった。
 うん。仕事の事は兄様に確認をしないといけなかったな。

 今僕の仕事は兄様が領主代理になって進めてくれているんだ。
 そしてミッチェル君とブライアン君、さらにスティーブ君もグリーンベリーの家令見習いとしての仕事だけでなく領の仕事も手伝ってくれている。そして温室はフィンレーとグリーンベリーの両方をハリーがマークと一緒にしっかり管理をしてくれているんだ。時々はお祖父様もいらして手を入れてくれているってハリーから聞いたよ。お祖父様にもきちんとお礼を言わなければいけないね。

 そんな感じで皆に支えられながら、七の月の終わりごろ、そろそろ兄様にもう一度仕事の話をしてみようと思っていたら、ひょっこりミッチェル君がやってきた。

「お久しぶり、エディ。前にもらった手紙に仕事の事が書かれていたでしょう? でもアルフレッド様からもう少し様子を見るって聞いたからどうかなって思って顔を見に来ちゃった。ごめんね急に」

 いつも元気で明るくて、はっきりとものを言うミッチェル君にしては珍しいなって思った。

「ううん。大丈夫だよ。会えて嬉しい。ずっとベッドにいるわけじゃないし、少しずつ動いているんだよ。来週くらいから仕事をしてもいいかってアルに聞いてみようかなって思っていたところ。ミッチェル君は変わりない?」
「…………か、変わりないというか、変わるというか」
「え?」
「あ、あのさ、手紙じゃなくてちゃんと話しておこうと思ったの。だってそのうちにルシルがうっかりしゃべっちゃいそうだから。それにエディの調子が良かったらちゃんと来てほしいなって思ってね。それで、その……」
「うん……」

 本当に珍しい。ミッチェル君は顔を引きつらせたり、声を詰まらせたりしながら話をしようとしている。どうしたんだろう。なにかとても話しづらい事なのかしら。
 
「あ、あのね、エディ。えっとね、あのね」
「う、うん」
「ぼ、僕もマルリカの実を使って子供が欲しいって言ったら怒られたの」
「え!」

 ちょっと待ってミッチェル君。そ、それは誰と使うのかな。えっとえっとそれよりもそれを誰に言って怒られたのかな。
 二人そろって頭の中でグルグルと考えているとコンコンコンというノックの音がした。

「は、はい! 今はちょっと取り込んでいるから後にして」

 そう答えたのにドアが開いて、スティーブ君が「申し訳ございません」って言って顔を覗かせた。

「…………え、まさか……」

 スティーブ君なの? いつの間にそんな事に? というかどうして子供が欲しいって言ったら怒ったの?
 だけどその後ろからさらに意外な人物が顔を出した。

「すまないな、エディ。一緒に行くって言ったんだけど自分で話すって聞かなくて。心配だから音を拾う道具を持たせて正解だった。スティーブもありがとう。助かった」

 頭を掻きながらそう言ったのは、グリーンベリーミスリル騎士団の団長クラウス君だった。

「え! えぇぇぇぇぇぇ⁉ ミミミミミッチェル! どういう事? っていうかクラウス⁉」
「エドワード様、あまり驚かれませんように。アルフレッド様に叱られてしまいます。落ち着いてください。そこの二人もここで言い合いなんて絶対にしないように」

 スティーブ君のメガネがキランと光ったような気がして、僕達は黙り込んだままそれぞれにどうしたらいいのかを考えていた。


-------------
 
この二人の詳しい話はアッシュの話の後に書く予定です(;^_^A 多分……

しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

もう、いいのです。

千 遊雲
恋愛
婚約者の王子殿下に、好かれていないと分かっていました。 けれど、嫌われていても構わない。そう思い、放置していた私が悪かったのでしょうか?

【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ  前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

処理中です...