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47 新しい年と新しい命
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一の月に入って、年度末の色々な資料が日を追うごとに増えていく。
初めてじゃないし、それなりにきちんと備えているんだけど、やっぱり色々と押してくるものがあるんだよね。
でも十二の月の分を入れて、一年間のものを作り出すんだから作業量は単純に考えても二倍。ううん、いつもと違うまとめたものを作るから二倍じゃ収まらないんだよ。しかもね、やっている事が増えているから、作業も年々増えていくんだ。
ミッチェル君もブライアン君も、そしてテオやスティーブ君も皆ものすごく計画的に予定を立ててくれているんだけど、何故かどんどん予定が押してくる。
その証拠に昨日あたりからミッチェル君が「おかしいこんな筈では」って呟いているんだ。
うん。来年は一の月には視察を入れるのは止めよう。とりあえずそうしよう。絶対に覚えておかなきゃ。
そんな事を考えながらも手だけはしっかりと動かしているとノックの音がして、執務室のドアが開いた。
「こちらは終わりだよ。エディ、確認だけしてサインをしてね」
「ありがとうございます、アル」
この時期はフィンレーの方も領が大きくなっているから大変なんだけど、その分人も多く抱えているからって兄様は週の半分以上グリーンベリーの仕事をしてくれているんだ。
申し訳ないなって思うけど、最初からそういうつもりでいるから大丈夫って、毎年言われている。
「エディが倒れたりする方が一大事」
兄様は本当に僕を甘やかすのが上手い。だけどそんな事を言ったらもっと楽しそうに甘やかしてきそうで絶対に言えないよ。でもこの忙しさが終わったら兄様と少しゆっくりしたいな。
◇ ◇ ◇
伯爵家の当主の仕事も、領主としての仕事も何とか目処がついてきたのは一の月が半分以上過ぎた頃だった。これで二の月の始めに税を納めて今年度はおしまい。後は領内の報告をまとめるんだけどこれはもう少し余裕がある。十一の月までに大体まとめておいて、十二の月の分を足して少し修正をすればいいくらいに作ってあるからね。
「嬉しそうだね、エディ」
お休みの日、少し遅めの朝食を取った後にそう言われて僕は「はい」って答えた。
「今年も無事に乗り越えられそうだなって。アルや皆のお陰です」
「エディも頑張ったものね。体調を崩さずにいられて良かった。また三の月になるとバタバタしそうだから、二の月は少しゆっくり出来るといいね」
「はい。お茶会っていうか皆とも久しぶりにお話しできるといいなって思ってるし、アルともまた乗馬とか出来るといいなって思ってます」
「ああ、そうだね。またお揃いのグローブを嵌めて出かけようか。屋敷の敷地内にある森も探索してみたいな。マルベリーやワイルドストロベリーがあるかもしれないよ?」
「ふふふ、そうかもしれませんね。鑑定をしながらお散歩するのも楽しそうです。こちらでもブルーベルの花は咲くのでしょうか。そういえば屋敷の敷地内をゆっくりと見て回る事なんてなかったですね」
「そうだね。フィンレーとはまた違う自生の植物があるかもしれないよ」
「! 行きましょう。一緒に行きたいです」
「分かったよ。じゃあ約束だ。春の草花もフィンレーに比べて早いだろうから、二の月の半ばくらいに予定を立てよう。楽しみだね」
「はい」
フレイム・グレート・グリズリーのお陰であれからしばらくは森が怖かったけれど、今はもうすっかり大丈夫。あのスタンピードも乗り越えたんだもの。
そんな話をしていたら、スティーブ君が「失礼いたします」ってやってきた。
「シェルバーネのエルグランド家から書簡が届きました」
僕と兄様は顔を見合わせた。そうしてすぐに書簡を開く。麦畑の時のような映像付きのものではなくシンプルな文字だけの魔導書簡には『本日、元気な男の子が生まれました。シャマルも元気です。また改めて連絡をいたします』というダリウス叔父様の文字が記されていた。
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初めてじゃないし、それなりにきちんと備えているんだけど、やっぱり色々と押してくるものがあるんだよね。
でも十二の月の分を入れて、一年間のものを作り出すんだから作業量は単純に考えても二倍。ううん、いつもと違うまとめたものを作るから二倍じゃ収まらないんだよ。しかもね、やっている事が増えているから、作業も年々増えていくんだ。
ミッチェル君もブライアン君も、そしてテオやスティーブ君も皆ものすごく計画的に予定を立ててくれているんだけど、何故かどんどん予定が押してくる。
その証拠に昨日あたりからミッチェル君が「おかしいこんな筈では」って呟いているんだ。
うん。来年は一の月には視察を入れるのは止めよう。とりあえずそうしよう。絶対に覚えておかなきゃ。
そんな事を考えながらも手だけはしっかりと動かしているとノックの音がして、執務室のドアが開いた。
「こちらは終わりだよ。エディ、確認だけしてサインをしてね」
「ありがとうございます、アル」
この時期はフィンレーの方も領が大きくなっているから大変なんだけど、その分人も多く抱えているからって兄様は週の半分以上グリーンベリーの仕事をしてくれているんだ。
申し訳ないなって思うけど、最初からそういうつもりでいるから大丈夫って、毎年言われている。
「エディが倒れたりする方が一大事」
兄様は本当に僕を甘やかすのが上手い。だけどそんな事を言ったらもっと楽しそうに甘やかしてきそうで絶対に言えないよ。でもこの忙しさが終わったら兄様と少しゆっくりしたいな。
◇ ◇ ◇
伯爵家の当主の仕事も、領主としての仕事も何とか目処がついてきたのは一の月が半分以上過ぎた頃だった。これで二の月の始めに税を納めて今年度はおしまい。後は領内の報告をまとめるんだけどこれはもう少し余裕がある。十一の月までに大体まとめておいて、十二の月の分を足して少し修正をすればいいくらいに作ってあるからね。
「嬉しそうだね、エディ」
お休みの日、少し遅めの朝食を取った後にそう言われて僕は「はい」って答えた。
「今年も無事に乗り越えられそうだなって。アルや皆のお陰です」
「エディも頑張ったものね。体調を崩さずにいられて良かった。また三の月になるとバタバタしそうだから、二の月は少しゆっくり出来るといいね」
「はい。お茶会っていうか皆とも久しぶりにお話しできるといいなって思ってるし、アルともまた乗馬とか出来るといいなって思ってます」
「ああ、そうだね。またお揃いのグローブを嵌めて出かけようか。屋敷の敷地内にある森も探索してみたいな。マルベリーやワイルドストロベリーがあるかもしれないよ?」
「ふふふ、そうかもしれませんね。鑑定をしながらお散歩するのも楽しそうです。こちらでもブルーベルの花は咲くのでしょうか。そういえば屋敷の敷地内をゆっくりと見て回る事なんてなかったですね」
「そうだね。フィンレーとはまた違う自生の植物があるかもしれないよ」
「! 行きましょう。一緒に行きたいです」
「分かったよ。じゃあ約束だ。春の草花もフィンレーに比べて早いだろうから、二の月の半ばくらいに予定を立てよう。楽しみだね」
「はい」
フレイム・グレート・グリズリーのお陰であれからしばらくは森が怖かったけれど、今はもうすっかり大丈夫。あのスタンピードも乗り越えたんだもの。
そんな話をしていたら、スティーブ君が「失礼いたします」ってやってきた。
「シェルバーネのエルグランド家から書簡が届きました」
僕と兄様は顔を見合わせた。そうしてすぐに書簡を開く。麦畑の時のような映像付きのものではなくシンプルな文字だけの魔導書簡には『本日、元気な男の子が生まれました。シャマルも元気です。また改めて連絡をいたします』というダリウス叔父様の文字が記されていた。
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