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44 十二の月は忙しない?

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 十二の月は何となく忙しない。
 特に領主になってからは余計に今年中に終わらせなきゃって思う事が多くて焦る。
 でもちゃんとやるべき事はブライアン君やミッチェル君、そして当主としての事はテオとスティーブ君がしっかり管理をしてくれているので漏れている様なものはないんだけどそれでも何となく焦っちゃうんだよね。
 そんな事をポロっと口にしたらミッチェル君が「ハァ~」って溜め息をついた。

「エディ、どうしてそんな事を考えちゃうのか僕にはよく分からないから、とりあえず状況の確認をするね。十二の月はどこも色々と忙しいから視察は無し。一の月の視察は半ばを過ぎてからで、鉱石加工の町に決まっている。すでに担当者とは打ち合わせ済み」
「うん」
「神殿からのマルリカの実についての報告は十一の月の分は確認済み。十二の月の分は当り前だけど一の月にならないと分からない」
「うん、そうだよね」
「来年度の予算は決定していて、各部署にも予定として伝達済み。すでに部署ごとに振り分けられた予算の予算案も出ている」
「……うん」
「来年度の採用も領都内は決まり、主要な街の知事からも報告が来ている。そして町から街へと吸い上げられている要望書に関しても、年内に整理をして届く算段はつけているし、領民に下ろしている苗なども今の所問題なし。魔導騎士団、騎士団に関しては年度内に報告を兼ねて会合を持つんだよね。確か」
「うん、そう。決まっているね……」

 何だかこう、追い詰められていくような僕とミッチェル君の会話を聞きながらブライアン君がそっと口を開いた。

「エドワード様、昨年よりもやるべき事が多くはなっていますが、それでも人員が増えたお陰で多少余裕がある状況です。ご安心ください。でもここから何か新しい事を考えるのはさすがに厳しいので、新たなものに関しては来年の予定に入れておいていただければ、随時どこに伝達をして決めていけばいいのかご相談をさせていただきます」
「あ、ううん。新しい事を何か考えているわけではないんだ。でも何かやり残しているような事はないかなって一年の終わりが近くなるとつい考えてしまうでしょう?」
「うん。だからさっき説明をしたように、やり残している事は業務的には無い筈だよ。まぁ、突発的に何かが起きるような事があれば話は別だけど、だからいつもの月と変わりなく、エディは淡々と仕事をして新しい年を迎えたらいいんじゃないかな。どちらにしてもエディの場合はここの仕事だけでなく、当主としても屋敷関係や対外的なお付き合いとかもあるんでしょう? あと、温室の管理も」
「う、うん。でも温室は庭師もしっかりついているし、僕一人じゃないから。あと高位の方へのご挨拶は新年にするつもりだし、友達とは書簡で済ませてしまうし、ミッチェルやブライアンやスティーブ、クラウスはここにいるしね。ああ、年末の慰労会は必ず出席をしてね」

 僕がそう言うと二人は顔を合わせて「楽しみにしている」って言ってくれた。
 グリーンベリーのおおやけの仕事が終わるのは二十八日。年明けは貴族としてご挨拶とかもあるから仕事は三日までお休みなんだ。これは領としてはじめの頃に決めたから大分浸透してきていると思うんだ。

「とりあえず、エディはいつも通りで大丈夫。残りの時間はアルフレッド様に残しておかないとね」
「あ……う……うん」

 そうだよね。仕事とかお付き合いとかそれだけになってしまったら駄目だよね。

「ありがとう。二人とも」
「いえ、アルフレッド様からも無理のないようにと言われていますし、私たちもそうでありたいと願っています。きっと来年はもっともっと余裕が出来ますよ」
「ブライアン! まだ今年が終わっていないのに」
「ハハハ、確かに。でもそうであるようにしていきたいって気持ちです」

 僕はコクリと頷いて「ありがとう」ってもう一度二人に伝えた。
 そして夜、兄様にこの事を伝えたら

「そうだね。エディが仕事ばかりしていたら私も淋しくなってしまうね」
「そ、そうならないように気を付けます」
「うん。とりあえずは仕事の段取りは心配ないみたいだから、無理をせずにのんびりとした年の瀬を迎えたいな」

 言葉と一緒に重なってきた唇に「はい」という返事は返せなくなってしまったけれど、その代わりにそっと背中に回した手に、兄様はニッコリと笑って、口づけを深くしたんだ。

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