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25 決め事
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起きていた事を確認する為の話は、これまでに父様や兄様、そしてシャマル様から聞いていた内容がほとんどだった。
ただ時間が経って進展をしていた事もある。シェルバーネで保護をされ、帰国を望んだ被害者たちがルフェリットに帰ってきていた。元の場所に戻る事を選択した者。ルフェリットには戻りたいが異なる場所で暮らす事を望む者に分かれた。
いずれにしても彼らにはシェルバーネから慰謝料という形でお金も出されている事もあり、ルフェリットの中では観察対象者という扱いとなる事が決まった。
ちなみに子供を連れて帰国した人はいなかったという。生まれた子供は魔力持ちだったのでシェルバーネでは保護の対象となり、まずは神殿の預かりとなったそうだ。
また、現時点で子供を身ごもっている人もいて、その人たちは全員シェルバーネに残る事を選んだという報告があった。勿論奴隷や妾などではなく全員が保護対象となり、子供が生まれた後にどうするかを改めて選ぶ事が出来る事になっている。
加害者側についての洗い出しについては今の段階では一旦終了をし、今後同じような事が起きないか再発の防止を強化する事になった。またシェルバーネ側では奴隷を売った側にも買った側にも罰が設けられたのはシャマル様から聞いたけれど、それが速やかに執行され、後処理も終わったそうだ。
「マルリカの実がこれからもシェルバーネにある限り、きちんとした処罰を行う事が肝心です。これは人が己の欲望の為に使ってよいものではないのです。神聖な物としてきちんと後に繋いでいかなければなりません」
シャマル様は厳しい顔をしてそう言った。
一方ルフェリット側では人身売買に関しての法と奴隷に関する法をハワード先生を中心に見直して、強化をしたという報告がされた。またシェルバーネ側の組織との関りもしっかりと掴み、その関りなどにより、極刑や終身の投獄、家財没収の上強制労働といった刑が執行されていた。ルフェリットとしてはかなりの早さだが、多分マルリカの実の告知を前にそういった懸念事項を残しておきたくなかったんだろうなって思った。
そして話は勿論今後についての事になった。
起きてしまった事に関しては出来る限りの事をして、今後への監視も続けていくがそれ以外にも対策が取れないか、それが今回の話し合いの中心になると聞いていた。
「許しがたい事件があり、両国で法などを整えて今後同じような事が起きないように努める事になっておりましたが、それとは別に犯罪抑制の為に何か出来ないかという話を持ち帰っていただきました。その結果をご報告いただきたいと存じます」
ニールデン公爵の言葉に最初に口を開いたのはシェルバーネの宰相次官だった。
「ではこちらからでよろしいでしょうか。私どもでは昔は森などにマルリカ自体が自生をしておりましたので、使いたい者は手に入れて使うという意識が当り前でした。しかし近年は木が枯れ落ちたり実を付けなくなったりする事が多く、実は誰でも手に入れられるものではなく、金品にて買い取るものに変わっていきました。ですが昨年こちらから実を下ろしていただき、購入額を下げた事がこの犯罪を招いたのかもしれないという話も出ました。しかし価格が上がれば一定数の物しかマルリカの実を使う事が出来ない。元より我国では魔力量の問題により使用できない者が多い。シェルバーネにとっては砂漠の増加と共に、人口の減少は大きな課題です。ですので、価格は引き続き抑えると同時に、実を扱える所を絞り、そこに行く為の魔道具を作成し、役場に設置。必ず使用する本人たちが受け取りに来る事と、その際身元の確認を行う事でどこまで防ぐ事が出来るのが分かりませんが、この案で動いております。ルフェリット国の方で何か良い案がありましたらお聞きしたいと思っております」
なるほど、実を受け取れる人を確認して渡す方法か。うん。身元がきちんとした人に渡す事で、万が一それが転売されても繋がりは残される。
「実の受け取りについてはルフェリットでも同じような事が挙がりました。我国では各領の神殿で6歳の時に魔法鑑定をしております。それにより個人の身元鑑定は可能になるかと。必ず身元を確認し、受け取りと違う者が使った場合は罰則を。転売なども同じく罰則を科す予定です」
「やはり受け渡しの身元確認くらいですね。それを行った事でどれくらいの抑止力になるのかは今後の課題ですね。とりあえずは人身売買というような犯罪を根絶やしにする事が重要です」
「はい」
二国間の間で、今年は実が誰に渡ったのかをしっかりと把握し、万が一他者への転売などがあった場合は罰則がある事が決められた。
人を攫ったり、売ったり、買ったりする人たちへの罰則。
実を手に入れるための方法の整備。
今年の状況を見て次年度を考えていく。
一度に全てが出来なくてもいい。父様の言葉が僕の頭の中に繰り返された。
-----------
今出来る事を……ですね。
ただ時間が経って進展をしていた事もある。シェルバーネで保護をされ、帰国を望んだ被害者たちがルフェリットに帰ってきていた。元の場所に戻る事を選択した者。ルフェリットには戻りたいが異なる場所で暮らす事を望む者に分かれた。
いずれにしても彼らにはシェルバーネから慰謝料という形でお金も出されている事もあり、ルフェリットの中では観察対象者という扱いとなる事が決まった。
ちなみに子供を連れて帰国した人はいなかったという。生まれた子供は魔力持ちだったのでシェルバーネでは保護の対象となり、まずは神殿の預かりとなったそうだ。
また、現時点で子供を身ごもっている人もいて、その人たちは全員シェルバーネに残る事を選んだという報告があった。勿論奴隷や妾などではなく全員が保護対象となり、子供が生まれた後にどうするかを改めて選ぶ事が出来る事になっている。
加害者側についての洗い出しについては今の段階では一旦終了をし、今後同じような事が起きないか再発の防止を強化する事になった。またシェルバーネ側では奴隷を売った側にも買った側にも罰が設けられたのはシャマル様から聞いたけれど、それが速やかに執行され、後処理も終わったそうだ。
「マルリカの実がこれからもシェルバーネにある限り、きちんとした処罰を行う事が肝心です。これは人が己の欲望の為に使ってよいものではないのです。神聖な物としてきちんと後に繋いでいかなければなりません」
シャマル様は厳しい顔をしてそう言った。
一方ルフェリット側では人身売買に関しての法と奴隷に関する法をハワード先生を中心に見直して、強化をしたという報告がされた。またシェルバーネ側の組織との関りもしっかりと掴み、その関りなどにより、極刑や終身の投獄、家財没収の上強制労働といった刑が執行されていた。ルフェリットとしてはかなりの早さだが、多分マルリカの実の告知を前にそういった懸念事項を残しておきたくなかったんだろうなって思った。
そして話は勿論今後についての事になった。
起きてしまった事に関しては出来る限りの事をして、今後への監視も続けていくがそれ以外にも対策が取れないか、それが今回の話し合いの中心になると聞いていた。
「許しがたい事件があり、両国で法などを整えて今後同じような事が起きないように努める事になっておりましたが、それとは別に犯罪抑制の為に何か出来ないかという話を持ち帰っていただきました。その結果をご報告いただきたいと存じます」
ニールデン公爵の言葉に最初に口を開いたのはシェルバーネの宰相次官だった。
「ではこちらからでよろしいでしょうか。私どもでは昔は森などにマルリカ自体が自生をしておりましたので、使いたい者は手に入れて使うという意識が当り前でした。しかし近年は木が枯れ落ちたり実を付けなくなったりする事が多く、実は誰でも手に入れられるものではなく、金品にて買い取るものに変わっていきました。ですが昨年こちらから実を下ろしていただき、購入額を下げた事がこの犯罪を招いたのかもしれないという話も出ました。しかし価格が上がれば一定数の物しかマルリカの実を使う事が出来ない。元より我国では魔力量の問題により使用できない者が多い。シェルバーネにとっては砂漠の増加と共に、人口の減少は大きな課題です。ですので、価格は引き続き抑えると同時に、実を扱える所を絞り、そこに行く為の魔道具を作成し、役場に設置。必ず使用する本人たちが受け取りに来る事と、その際身元の確認を行う事でどこまで防ぐ事が出来るのが分かりませんが、この案で動いております。ルフェリット国の方で何か良い案がありましたらお聞きしたいと思っております」
なるほど、実を受け取れる人を確認して渡す方法か。うん。身元がきちんとした人に渡す事で、万が一それが転売されても繋がりは残される。
「実の受け取りについてはルフェリットでも同じような事が挙がりました。我国では各領の神殿で6歳の時に魔法鑑定をしております。それにより個人の身元鑑定は可能になるかと。必ず身元を確認し、受け取りと違う者が使った場合は罰則を。転売なども同じく罰則を科す予定です」
「やはり受け渡しの身元確認くらいですね。それを行った事でどれくらいの抑止力になるのかは今後の課題ですね。とりあえずは人身売買というような犯罪を根絶やしにする事が重要です」
「はい」
二国間の間で、今年は実が誰に渡ったのかをしっかりと把握し、万が一他者への転売などがあった場合は罰則がある事が決められた。
人を攫ったり、売ったり、買ったりする人たちへの罰則。
実を手に入れるための方法の整備。
今年の状況を見て次年度を考えていく。
一度に全てが出来なくてもいい。父様の言葉が僕の頭の中に繰り返された。
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今出来る事を……ですね。
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