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7 マルリカの実
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マルリカの実はルシルが言った通り、同性でも子供を授かる事が出来る実だった。
どういう仕組みなのは分からないけれど、シェルバーネに昔からある植物で、子供が欲しい者が食すると同性同士であっても、理由あって子宝に恵まれない者であっても、それが叶うと言い伝えられていたんだとか。
だけどそれも年々マルリカの木自体が減ってきて、実が採れなくなってきた。それでどうやら不思議なスキルを持っているらしい僕の所にシャマル様が貴重な実を持ち込んだ。
兄様が言っていた『賭け』だ。
「シャマルさんがエディにマルリカの実を渡したとダリウスから聞いてね、木になってから実が生るまで大体二年かかると聞いていたからね、最初の実が出来るまでに一応どんなものなのか、シェルバーネでの扱いなどを調べさせては居たんだ。まぁ、苗木から一年で収穫となってしまったけれどね」
父様は苦笑しながら言葉を続けた。
「男性でも子供を授かる実、それを聞いた時はさすがにルフェリットで受け入れる事は難しいかもしれないと思ったよ。同性婚の場合は子供が出来ないという事を前提にして結婚をしている場合が多いからね。だが、エターナルレディがルフェリットで収束して、今後は女性の出生率も上がって来るのではないかという予測もあったけれど、『首』をきちんと封じているシェルバーネの砂漠には相変わらず何も育たず、広がっている事を考えると楽観は出来ないとハワードが言い出したんだ。
「という事はルフェリットもエターナルレディはクスリが出来ましたが、それで全て解決になるとは限らないという事ですか?」
「その可能性もあるという事だね」
僕と兄様はそれについては何も言えなかった。ただの仮定だと断言できる材料がなかったからだ。父様の話は更に続く。
「とりあえず、私たちはマルリカの実がどのように使われるのか、そしてどんな仕組みになっているのかを調べた。実際に子供を産んだ人の話も聞いた。どうやら魔力が関わっているような事も聞いたがこれはまだきちんと実証されてはいない。だが、ここで最初の実が収穫を迎えてね、結局最初の実は全てをシェルバーネに売る事になった。もっとも人口の減少もシェルバーネにとっては大きな問題だったからね。初めての実はそれでいいと陛下が決められたんだ」
そうだったんだ。単純にそういう風習っていうか、男性が子供を授かるって言う事が当り前だから受け入れる土台があるって事だけではなかったんだね。
「さて、そうして次の実の収穫までの時間が出来て、私たちは更に調査をしたよ。ルフェリットでこの実を扱う事になったとしたら何が起きるのかという予想も話し合った。一番は後継者問題の争いだ」
僕と兄様はコクリと頷いた。どう考えても最初に浮かぶのはそれだったから。
だってさ、家督を継がない者達に同性婚が多いのは、勿論女性が少ないって事もあるけれど、結婚しても子供が出来ないっていう事が前提だからね。余計な争いの種を生まないって言うのは大事な事だ。でも次男くらいまではスペアって考えている所もあるらしいって聞いた事がある。
僕と兄様のように長男と次男で結婚をしてしまうって言うのは普通は、というか、多分常識的には許されない事なんだよね。勿論本当の兄弟だったら論外だ。
「それを含めて家督の事はそれぞれの家できちんと考える事と、次期当主に関して前もって王国に届け出をする事など案も出しながら、それ以外にも起こりうる事をまとめ、シェルバーネで調べた事もまとめ上げ、いざ貴族会議をという時点で横やりが入った」
「え……」
僕が小さく声を上げると隣にいた兄様がコクリと頷いてギュッと手を握ってくれた。
「後継者の問題は勿論上がった。これは想定内だ。だた、事態はシェルバーネとの国交までも覆すかもしれない方向へ向かっていたんだ。私たちが気づくのが遅すぎた。というか、どこかで実の事が漏れた可能性もある」
父様は少し落ち込んだ様な、困ったような表情を浮かべて一つ溜息をついた。
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事件の予感……
どういう仕組みなのは分からないけれど、シェルバーネに昔からある植物で、子供が欲しい者が食すると同性同士であっても、理由あって子宝に恵まれない者であっても、それが叶うと言い伝えられていたんだとか。
だけどそれも年々マルリカの木自体が減ってきて、実が採れなくなってきた。それでどうやら不思議なスキルを持っているらしい僕の所にシャマル様が貴重な実を持ち込んだ。
兄様が言っていた『賭け』だ。
「シャマルさんがエディにマルリカの実を渡したとダリウスから聞いてね、木になってから実が生るまで大体二年かかると聞いていたからね、最初の実が出来るまでに一応どんなものなのか、シェルバーネでの扱いなどを調べさせては居たんだ。まぁ、苗木から一年で収穫となってしまったけれどね」
父様は苦笑しながら言葉を続けた。
「男性でも子供を授かる実、それを聞いた時はさすがにルフェリットで受け入れる事は難しいかもしれないと思ったよ。同性婚の場合は子供が出来ないという事を前提にして結婚をしている場合が多いからね。だが、エターナルレディがルフェリットで収束して、今後は女性の出生率も上がって来るのではないかという予測もあったけれど、『首』をきちんと封じているシェルバーネの砂漠には相変わらず何も育たず、広がっている事を考えると楽観は出来ないとハワードが言い出したんだ。
「という事はルフェリットもエターナルレディはクスリが出来ましたが、それで全て解決になるとは限らないという事ですか?」
「その可能性もあるという事だね」
僕と兄様はそれについては何も言えなかった。ただの仮定だと断言できる材料がなかったからだ。父様の話は更に続く。
「とりあえず、私たちはマルリカの実がどのように使われるのか、そしてどんな仕組みになっているのかを調べた。実際に子供を産んだ人の話も聞いた。どうやら魔力が関わっているような事も聞いたがこれはまだきちんと実証されてはいない。だが、ここで最初の実が収穫を迎えてね、結局最初の実は全てをシェルバーネに売る事になった。もっとも人口の減少もシェルバーネにとっては大きな問題だったからね。初めての実はそれでいいと陛下が決められたんだ」
そうだったんだ。単純にそういう風習っていうか、男性が子供を授かるって言う事が当り前だから受け入れる土台があるって事だけではなかったんだね。
「さて、そうして次の実の収穫までの時間が出来て、私たちは更に調査をしたよ。ルフェリットでこの実を扱う事になったとしたら何が起きるのかという予想も話し合った。一番は後継者問題の争いだ」
僕と兄様はコクリと頷いた。どう考えても最初に浮かぶのはそれだったから。
だってさ、家督を継がない者達に同性婚が多いのは、勿論女性が少ないって事もあるけれど、結婚しても子供が出来ないっていう事が前提だからね。余計な争いの種を生まないって言うのは大事な事だ。でも次男くらいまではスペアって考えている所もあるらしいって聞いた事がある。
僕と兄様のように長男と次男で結婚をしてしまうって言うのは普通は、というか、多分常識的には許されない事なんだよね。勿論本当の兄弟だったら論外だ。
「それを含めて家督の事はそれぞれの家できちんと考える事と、次期当主に関して前もって王国に届け出をする事など案も出しながら、それ以外にも起こりうる事をまとめ、シェルバーネで調べた事もまとめ上げ、いざ貴族会議をという時点で横やりが入った」
「え……」
僕が小さく声を上げると隣にいた兄様がコクリと頷いてギュッと手を握ってくれた。
「後継者の問題は勿論上がった。これは想定内だ。だた、事態はシェルバーネとの国交までも覆すかもしれない方向へ向かっていたんだ。私たちが気づくのが遅すぎた。というか、どこかで実の事が漏れた可能性もある」
父様は少し落ち込んだ様な、困ったような表情を浮かべて一つ溜息をついた。
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事件の予感……
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