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番外編 それぞれの物語
愛おしい人 (レナードのモノローグ)③
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初めてのスタンピードは配置をされた場所が支流の一番後ろだったので、始めはほとんど何も現れなかったが、そのうちに道ではない所から零れたもの達が現れるようになった。
この場で気を付ける事は王城に近づけさせない事は勿論、王城の壁を乗り越えて、或いは破壊して街に魔物達を出さないようにする事。そしてエドワード様が心配をしていたように本流と呼ばれる、本体の後ろに回り込ませないようにする事が大きな目的となる。
次第に増えてくる魔物達。という事は前の拠点で討ち漏れる魔物が増えているという事だ。と同時に魔物達が現れる範囲も広がっていき、この人数ではなかなか難しい状況になっていく。
本来であれば、ここに未成年である自分たちが居る事はまずない。色々な話し合いがなされて、ルフェリット国内は子供は守るべき者とされている。学園を卒業するまでは親の庇護下であり、戦いの場などに出される事は異例の事だ。それでもエドワード様は参戦を許された。それだけ戦力が足りなかったのだ。
フィンレーも、レイモンドも、スタンリーも、王室を引っ張ってきた者達はすでにそれぞれの場所で『首』と戦っている。そして王太子も参加をし、本来であれば城から出る事のない近衛までが投入をされ、ニールデン公爵、コートニーズ公爵。クレバリー侯爵、そしてトールマンも戦っている。
どこかの戦いが終わらなければ新たな救援は来ないと考えた方がいい。
自領を自衛する為の騎士を揃え始めたばかりの所は王都までそれを回す事が出来ない。
けれどこのまま王都が魔物達に落とされたらどうなるのか、彼らは考える事はないのだろうか。
エドワード様からの連絡で私はエドワード様と入れ替わりで支流の第一地点に入る事になった。エドワード様はそのまま精鋭隊としてスタンピードの始点に向かって魔物達が飛び出してくる空間の道にある扉を修復して閉じたいという。
「じゃあ、エリック、レオン、よろしくお願いします」
「気を付けて、エディ。無理だと思ったら引き返す事も必要だよ」
「うん。ありがとう、レオン」
笑っていつもと変わりないように森の中に消えていくエドワード様を見送って私たちは森や脇の道から襲い掛かって来るような魔物達をひたすら狩った。
そしてワイバーンが現れて、そのうちの一頭をエリックと、後から駆けつけてきたクラウスと一緒に討伐をした。
そうしている間にも様々な情報が入って来る。
「始点の第一隊が大きく減少。救援要請があり、本流第二地点からフィンレー侯爵子息らが向かいました」
「フィンレー侯爵、ワイバーン討伐に向かう事が決まりました」
「ニールデン公爵家から支流へ救援が到着」
「コートニーズ家から本流へ救援が到着。始点に向かうが第二地点から動けず、そのまま合流」
「トールマン侯爵家から救援が到着。城壁付近へ配置」
「マーロウ伯爵家から救援が到着」
次々に入って来る連絡。
日がかなり傾いてきている。このまま夜になってしまえば、状況はかなり不利になる。
スタンピードというものはいつまで続くのか、こうして疲弊をして行けば士気はどんどん下がって来る。
そんな事を考えていた途端、空から声が降ってきた。
『し、始点に、第二波が来たよ! 助けて! 助けてー! 皆、死んじゃうよ~~~~!』
ミッチェルの声だった。
「私の魔導騎士隊から10名を連れて始点へと移動する! 転移が出来る者を! 救援に向かう、魔力回復のポーションを必ず飲むように」
無謀と思える選択だったが、それに否を言う者はいなかった。そして、私は始点でミッチェルの声を聞いて駆け付けてきた仲間たちに出会った。
「みんな同じ事を考えるね」
「あの声を聞いて駆け付けない奴なんていないだろう」
「ふふ、確かに」
そうして私たちは見たんだ。エドワード様の力を。アルフレッド様を守る為に、否、ここにいる全ての人の命を守る為に、エドワード様は祈り始めた。
木々が揺れて、蔓が伸び、切りもなく飛び出してくるような魔物達に絡まり、その命を吸い取るようにして、苔むしてしまう見た事のない力。でも恐ろしいとは思わなかった。
収まった第二波。けれど扉を閉じない限りおそらくはモーリスのダンジョンに繋がっているのだろうその道から際限なく魔物が湧いて出てくるのだろうと思った。時間がかかれば第三波は必ず来る。
どれだけ結界を張ってもあれだけの魔物を生み出す力はそれを破って飛び出すだろうと思った。しかもこれからは魔物達に有利な夜が来る。
そこへフィンレーとレイモンドの救援隊が到着する。
けれど、その喜びの間に魔人がエドワード様を襲った。幸い難を逃れて、魔人は捕縛され、やってきた【光の愛し子】によって浄化をされた。
だが、喜びも束の間、地面が揺れ始め、地鳴りがして、扉を閉じる前に、すっかり暮れた森の中で第三波が始まる。
良い事と悪い事が交互に起きているような気がしたが、第三波が悪い事だとしたら次は良い事だと信じて、剣を振るい、魔法を打った。
激しい戦いの続く中で、現れたマルコシアス達が吐き出す炎で王城の森は炎に包まれる。消しても、消しても、有翼の夜天狼は仲間を呼び寄せ、一度は鎮火した森を再び炎で包んだ。
撤退。そんな言葉が頭を掠めたその時。
「やめるんだ、エディ!」
悲痛な声が聞こえて、振り向くとエドワード様が身体の周りに風を水を纏って空中へと浮かんでいくのが見えた。
「そんな……」
燃え盛る炎とエドワード様が巻き起こす水が合わさって、雲が作られて、雨が降って来る。そして、次第に激しくなる雨に打たれ、吹き荒れる風に空を飛んでいたマルコシアス達が地上へと落とされ始めた。
「……と、とどめを刺すんだ! 空へ返すな!」
私たちはびしょ濡れのまま落ちてきたマルコシアスにとどめを刺した。同じように傍にいた騎士達も魔物達に向かって剣を振るう。
そうしている間に雨が止み、風も止み、綺麗な月が顔を出す中、今度は鎮火をした木々たちが魔物達の身体を巻き取り、絡め、土でその足を固めながら、緑で覆いつくしていった。
奇跡だ。私たちは奇跡の中にいて、それを目の当たりにして……守られている。
「エディー!!」
アルフレッド様の声が聞こえた。胸が痛くなるような声だった。
ああ、彼が守っていたのはエドワード様の全てだったのだと私は思った。この力も含めて何もかもを守ろうとしていたんだ。
「エディ! 戻っておいで……!」
空中に浮かんだ身体に向かって広げられた両手。
どこからか「グランディス様だ」という声が聞こえて、やがてそこにいた者達が跪いて頭を垂れた。
「エディ、戻っておいで! 約束したよ? 一緒に、幸せになるって」
ゆっくりとその腕の中に降りてくるような身体。遠目から見ても分かる白い顔。
完全に力を失っている身体を抱き締めて、お帰りと言っている声が聞こえて、私は自分が涙を流していた事に気付いた。
勝負どころか、最初から答えは出ていた。
愛おしいあの子は、最初から、あのリボンと同じ空色の瞳を追っていた。ずっと。
ルシル・マーロウに治癒魔法を施されて、エドワード様はフィンレーに戻って行った。
私たちは、ただその回復を祈る事しか出来なかった。
----------------------
スタンピードの他視点。エディ寄り。
すみません。スタンピードはもっとさらりと書く予定だったのに
ウウウ……きょ、興味が湧いた方、どうぞ本編をwww
この場で気を付ける事は王城に近づけさせない事は勿論、王城の壁を乗り越えて、或いは破壊して街に魔物達を出さないようにする事。そしてエドワード様が心配をしていたように本流と呼ばれる、本体の後ろに回り込ませないようにする事が大きな目的となる。
次第に増えてくる魔物達。という事は前の拠点で討ち漏れる魔物が増えているという事だ。と同時に魔物達が現れる範囲も広がっていき、この人数ではなかなか難しい状況になっていく。
本来であれば、ここに未成年である自分たちが居る事はまずない。色々な話し合いがなされて、ルフェリット国内は子供は守るべき者とされている。学園を卒業するまでは親の庇護下であり、戦いの場などに出される事は異例の事だ。それでもエドワード様は参戦を許された。それだけ戦力が足りなかったのだ。
フィンレーも、レイモンドも、スタンリーも、王室を引っ張ってきた者達はすでにそれぞれの場所で『首』と戦っている。そして王太子も参加をし、本来であれば城から出る事のない近衛までが投入をされ、ニールデン公爵、コートニーズ公爵。クレバリー侯爵、そしてトールマンも戦っている。
どこかの戦いが終わらなければ新たな救援は来ないと考えた方がいい。
自領を自衛する為の騎士を揃え始めたばかりの所は王都までそれを回す事が出来ない。
けれどこのまま王都が魔物達に落とされたらどうなるのか、彼らは考える事はないのだろうか。
エドワード様からの連絡で私はエドワード様と入れ替わりで支流の第一地点に入る事になった。エドワード様はそのまま精鋭隊としてスタンピードの始点に向かって魔物達が飛び出してくる空間の道にある扉を修復して閉じたいという。
「じゃあ、エリック、レオン、よろしくお願いします」
「気を付けて、エディ。無理だと思ったら引き返す事も必要だよ」
「うん。ありがとう、レオン」
笑っていつもと変わりないように森の中に消えていくエドワード様を見送って私たちは森や脇の道から襲い掛かって来るような魔物達をひたすら狩った。
そしてワイバーンが現れて、そのうちの一頭をエリックと、後から駆けつけてきたクラウスと一緒に討伐をした。
そうしている間にも様々な情報が入って来る。
「始点の第一隊が大きく減少。救援要請があり、本流第二地点からフィンレー侯爵子息らが向かいました」
「フィンレー侯爵、ワイバーン討伐に向かう事が決まりました」
「ニールデン公爵家から支流へ救援が到着」
「コートニーズ家から本流へ救援が到着。始点に向かうが第二地点から動けず、そのまま合流」
「トールマン侯爵家から救援が到着。城壁付近へ配置」
「マーロウ伯爵家から救援が到着」
次々に入って来る連絡。
日がかなり傾いてきている。このまま夜になってしまえば、状況はかなり不利になる。
スタンピードというものはいつまで続くのか、こうして疲弊をして行けば士気はどんどん下がって来る。
そんな事を考えていた途端、空から声が降ってきた。
『し、始点に、第二波が来たよ! 助けて! 助けてー! 皆、死んじゃうよ~~~~!』
ミッチェルの声だった。
「私の魔導騎士隊から10名を連れて始点へと移動する! 転移が出来る者を! 救援に向かう、魔力回復のポーションを必ず飲むように」
無謀と思える選択だったが、それに否を言う者はいなかった。そして、私は始点でミッチェルの声を聞いて駆け付けてきた仲間たちに出会った。
「みんな同じ事を考えるね」
「あの声を聞いて駆け付けない奴なんていないだろう」
「ふふ、確かに」
そうして私たちは見たんだ。エドワード様の力を。アルフレッド様を守る為に、否、ここにいる全ての人の命を守る為に、エドワード様は祈り始めた。
木々が揺れて、蔓が伸び、切りもなく飛び出してくるような魔物達に絡まり、その命を吸い取るようにして、苔むしてしまう見た事のない力。でも恐ろしいとは思わなかった。
収まった第二波。けれど扉を閉じない限りおそらくはモーリスのダンジョンに繋がっているのだろうその道から際限なく魔物が湧いて出てくるのだろうと思った。時間がかかれば第三波は必ず来る。
どれだけ結界を張ってもあれだけの魔物を生み出す力はそれを破って飛び出すだろうと思った。しかもこれからは魔物達に有利な夜が来る。
そこへフィンレーとレイモンドの救援隊が到着する。
けれど、その喜びの間に魔人がエドワード様を襲った。幸い難を逃れて、魔人は捕縛され、やってきた【光の愛し子】によって浄化をされた。
だが、喜びも束の間、地面が揺れ始め、地鳴りがして、扉を閉じる前に、すっかり暮れた森の中で第三波が始まる。
良い事と悪い事が交互に起きているような気がしたが、第三波が悪い事だとしたら次は良い事だと信じて、剣を振るい、魔法を打った。
激しい戦いの続く中で、現れたマルコシアス達が吐き出す炎で王城の森は炎に包まれる。消しても、消しても、有翼の夜天狼は仲間を呼び寄せ、一度は鎮火した森を再び炎で包んだ。
撤退。そんな言葉が頭を掠めたその時。
「やめるんだ、エディ!」
悲痛な声が聞こえて、振り向くとエドワード様が身体の周りに風を水を纏って空中へと浮かんでいくのが見えた。
「そんな……」
燃え盛る炎とエドワード様が巻き起こす水が合わさって、雲が作られて、雨が降って来る。そして、次第に激しくなる雨に打たれ、吹き荒れる風に空を飛んでいたマルコシアス達が地上へと落とされ始めた。
「……と、とどめを刺すんだ! 空へ返すな!」
私たちはびしょ濡れのまま落ちてきたマルコシアスにとどめを刺した。同じように傍にいた騎士達も魔物達に向かって剣を振るう。
そうしている間に雨が止み、風も止み、綺麗な月が顔を出す中、今度は鎮火をした木々たちが魔物達の身体を巻き取り、絡め、土でその足を固めながら、緑で覆いつくしていった。
奇跡だ。私たちは奇跡の中にいて、それを目の当たりにして……守られている。
「エディー!!」
アルフレッド様の声が聞こえた。胸が痛くなるような声だった。
ああ、彼が守っていたのはエドワード様の全てだったのだと私は思った。この力も含めて何もかもを守ろうとしていたんだ。
「エディ! 戻っておいで……!」
空中に浮かんだ身体に向かって広げられた両手。
どこからか「グランディス様だ」という声が聞こえて、やがてそこにいた者達が跪いて頭を垂れた。
「エディ、戻っておいで! 約束したよ? 一緒に、幸せになるって」
ゆっくりとその腕の中に降りてくるような身体。遠目から見ても分かる白い顔。
完全に力を失っている身体を抱き締めて、お帰りと言っている声が聞こえて、私は自分が涙を流していた事に気付いた。
勝負どころか、最初から答えは出ていた。
愛おしいあの子は、最初から、あのリボンと同じ空色の瞳を追っていた。ずっと。
ルシル・マーロウに治癒魔法を施されて、エドワード様はフィンレーに戻って行った。
私たちは、ただその回復を祈る事しか出来なかった。
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スタンピードの他視点。エディ寄り。
すみません。スタンピードはもっとさらりと書く予定だったのに
ウウウ……きょ、興味が湧いた方、どうぞ本編をwww
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