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第9章 幸せになります
420.色々な事がありました
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それからの僕の生活はそれほど大きくは変わっていない。
相変わらず兄様と呼んでしまう事も多いし、思いついた事はとりあえずやってみたくなる。
でもね、周りは結構色んな事があったんだよ。
まずトーマス君とユージーン君の結婚式も、エリック君の結婚式も、どちらもとても幸せそうだった。皆で沢山おめでとうって言ったよ。
トーマス君は僕と同じように、誓いの口付けの後、恥ずかしくて動けなくなったみたいで、ユージーン君に抱っこされて真っ赤になっていた。うん。抱っこって赤ちゃんみたいで恥ずかしいもんね。
ルシルの畑では一の月の終わりに一回目の小麦が収穫されて、その畑は取れた小麦の葉っぱとか茎とかを入れた堆肥を混ぜてお休みにした。フィンレーみたいに麦の二期作なんて普通は出来ないからね。
そして今は今は隣に作った砂漠の畑で新しい小麦を育てている。この小麦がちゃんと秋に収穫出来たら、シルヴァン様からのプロポーズを受けるって言っている。
頑張れって応援して、お祈りしたくなっちゃうけど、我慢我慢。
それからね! マリーとルーカスが結婚したんだよ!
二人とも幸せになってほしかったから、嬉しくて、嬉しくて、涙が止まらなくなって兄様に心配されてしまった。でもそれくらい嬉しかったんだ。
だって、マリーはずっとずっと僕のそばにいてくれて、助けてくれたから。他の誰よりも幸せになってほしいって思っていた。
ルーカスは僕の結婚式が終わって少しした頃に、マリーにプロポーズしたんだって。だけどマリーはそれを一度断ったんだ。
この時になって僕は初めて二人の事を知って、マリーに幸せになってほしいんだよって言ったんだ。そうしてずっと考えていた綿の畑をマリーに贈った。本当はね、花が咲いてから見せるつもりだったんだけど、マリーはまた泣いてしまった。そしてお祝い会の時みたいにルーカスがハンカチを渡していた。きっと僕が知らない事が色々あるんだなって思ったよ。でも二人の事は二人が知っていればいい事だものね。
その後、二人はもう一度話し合いをして結婚を決めたって報告に来てくれた。でもね、もしもそれが僕がそう言ったから従うみたいなのは嫌だよって言ったら、それは無いですって。
後から聞いたら、ルーカスは追いかけっこをしている時から、マリーの事が気になっていたんだって。
ふふふ、そんなのはじめからって事だよね。
マリーの為に作った綿の畑の花が、綺麗な黄色の花を咲かせた夏のはじめ、二人は結婚式を上げて、そして今も変わらず僕の傍にいるんだ。
あ、シャマル様から頂いたあの実も育てているよ。
シャマル様から春くらいに「どうかな?」って魔道書簡が送られてきて、マジックバックに入れっぱなしだったのを思い出したという事は内緒だけど。
その後はお祖父様に相談をして、育て方が分からないからとりあえず力を使って複製して、それで色々試す事にしたんだ。
元のはどうしようか悩んだけど、どんな風に育つのか全く分からないから、ちょっとズルをして、上手く育つように力を使った土にそのまま植えた。
そうして夏には、元の実は小さな木になって、複製して色々な植え方を試したものは、実を離して残った茎の部分だけを植えたもの以外は、多少大きさにバラツキはあるけれど、芽を出して、細い細い枝と呼ぶにはまだ頼りないようなものが何本も生えている畑が出来た。
その事を魔道書簡でお知らせしたら、なんと翌日にダリウス叔父様とシャマル様がやってきたんだ。相当無茶をしたみたいで、叔父様も、そして多分巻き込まれて、同行してきた父様も疲れた顔をしていた。
僕はビックリして、兄様は少し呆れたような顔をしていた。兄様がそんな顔をするのは珍しくて、僕は思わず眺めてしまったら、今度は困ったような顔をしていた。
珍しい兄様が見られて、ちょっとだけ嬉しいような気持ちになりながら僕は皆を温室へとお連れした。
-*-*-*-
「こちらです」
シャマル様は温室の中の畑を見て、両手で口を押えて、信じられないって顔をしていた。
「奇跡だよ、ダリウス」
「シャマル……」
「夢を見ているんじゃないかな。信じられないよ」
呟くようにそう言って、シャマル様は振り返って僕を見た。
「ありがとうございます、エドワード様」
そして、次の瞬間、土の上に片膝をついて、右手を胸に当て頭を下げた。
そばでダリウス叔父様が「おい!」って慌てたような声を出していたけれど、シャマル様はそのまま言葉を続ける。
「私、シャマル・アマディ・エルグランドは、エドワード様のお力を他者に漏らす事はいたしません。また、憂慮する事態のある時は、エルグランド家の威信をかけて、お力になる事を誓います」
「え? あ、あの」
「エドワード様、許すと仰ればよろしいのですよ」
シャマル様がものすごく綺麗な笑みを浮かべた。
そして僕が「ゆ、許す?」って言ったのと父様が「エドワード!」って言ったのはほぼ同時だった。
「シャマル」
「護るべきものがなんなのか、私は判断出来るつもりだよ、ダリウス。ではエドワード様、実が成りましたらお知らせ下さい。それまでに私も色々と根回しを致します」
そう言って、来た時と同様に唐突に帰って行ったんだ。
父様は何か言いたげだったけれど、そのまま二人と一緒にフィンレーに戻って行った。
そして、兄様は硬い顔をしていたけど、どうしていいのか分からない僕に「大丈夫だよ」って言ってくれた。
暑い夏が終わり秋めいてきた九の月の半ば。
「あ……」
最初のマルリカの実から出来た木は僕の背を追い越していて、その枝に小さな白い花をつけた。
------------------
やはり詰め込み過ぎたので分けました(;^ω^)
相変わらず兄様と呼んでしまう事も多いし、思いついた事はとりあえずやってみたくなる。
でもね、周りは結構色んな事があったんだよ。
まずトーマス君とユージーン君の結婚式も、エリック君の結婚式も、どちらもとても幸せそうだった。皆で沢山おめでとうって言ったよ。
トーマス君は僕と同じように、誓いの口付けの後、恥ずかしくて動けなくなったみたいで、ユージーン君に抱っこされて真っ赤になっていた。うん。抱っこって赤ちゃんみたいで恥ずかしいもんね。
ルシルの畑では一の月の終わりに一回目の小麦が収穫されて、その畑は取れた小麦の葉っぱとか茎とかを入れた堆肥を混ぜてお休みにした。フィンレーみたいに麦の二期作なんて普通は出来ないからね。
そして今は今は隣に作った砂漠の畑で新しい小麦を育てている。この小麦がちゃんと秋に収穫出来たら、シルヴァン様からのプロポーズを受けるって言っている。
頑張れって応援して、お祈りしたくなっちゃうけど、我慢我慢。
それからね! マリーとルーカスが結婚したんだよ!
二人とも幸せになってほしかったから、嬉しくて、嬉しくて、涙が止まらなくなって兄様に心配されてしまった。でもそれくらい嬉しかったんだ。
だって、マリーはずっとずっと僕のそばにいてくれて、助けてくれたから。他の誰よりも幸せになってほしいって思っていた。
ルーカスは僕の結婚式が終わって少しした頃に、マリーにプロポーズしたんだって。だけどマリーはそれを一度断ったんだ。
この時になって僕は初めて二人の事を知って、マリーに幸せになってほしいんだよって言ったんだ。そうしてずっと考えていた綿の畑をマリーに贈った。本当はね、花が咲いてから見せるつもりだったんだけど、マリーはまた泣いてしまった。そしてお祝い会の時みたいにルーカスがハンカチを渡していた。きっと僕が知らない事が色々あるんだなって思ったよ。でも二人の事は二人が知っていればいい事だものね。
その後、二人はもう一度話し合いをして結婚を決めたって報告に来てくれた。でもね、もしもそれが僕がそう言ったから従うみたいなのは嫌だよって言ったら、それは無いですって。
後から聞いたら、ルーカスは追いかけっこをしている時から、マリーの事が気になっていたんだって。
ふふふ、そんなのはじめからって事だよね。
マリーの為に作った綿の畑の花が、綺麗な黄色の花を咲かせた夏のはじめ、二人は結婚式を上げて、そして今も変わらず僕の傍にいるんだ。
あ、シャマル様から頂いたあの実も育てているよ。
シャマル様から春くらいに「どうかな?」って魔道書簡が送られてきて、マジックバックに入れっぱなしだったのを思い出したという事は内緒だけど。
その後はお祖父様に相談をして、育て方が分からないからとりあえず力を使って複製して、それで色々試す事にしたんだ。
元のはどうしようか悩んだけど、どんな風に育つのか全く分からないから、ちょっとズルをして、上手く育つように力を使った土にそのまま植えた。
そうして夏には、元の実は小さな木になって、複製して色々な植え方を試したものは、実を離して残った茎の部分だけを植えたもの以外は、多少大きさにバラツキはあるけれど、芽を出して、細い細い枝と呼ぶにはまだ頼りないようなものが何本も生えている畑が出来た。
その事を魔道書簡でお知らせしたら、なんと翌日にダリウス叔父様とシャマル様がやってきたんだ。相当無茶をしたみたいで、叔父様も、そして多分巻き込まれて、同行してきた父様も疲れた顔をしていた。
僕はビックリして、兄様は少し呆れたような顔をしていた。兄様がそんな顔をするのは珍しくて、僕は思わず眺めてしまったら、今度は困ったような顔をしていた。
珍しい兄様が見られて、ちょっとだけ嬉しいような気持ちになりながら僕は皆を温室へとお連れした。
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「こちらです」
シャマル様は温室の中の畑を見て、両手で口を押えて、信じられないって顔をしていた。
「奇跡だよ、ダリウス」
「シャマル……」
「夢を見ているんじゃないかな。信じられないよ」
呟くようにそう言って、シャマル様は振り返って僕を見た。
「ありがとうございます、エドワード様」
そして、次の瞬間、土の上に片膝をついて、右手を胸に当て頭を下げた。
そばでダリウス叔父様が「おい!」って慌てたような声を出していたけれど、シャマル様はそのまま言葉を続ける。
「私、シャマル・アマディ・エルグランドは、エドワード様のお力を他者に漏らす事はいたしません。また、憂慮する事態のある時は、エルグランド家の威信をかけて、お力になる事を誓います」
「え? あ、あの」
「エドワード様、許すと仰ればよろしいのですよ」
シャマル様がものすごく綺麗な笑みを浮かべた。
そして僕が「ゆ、許す?」って言ったのと父様が「エドワード!」って言ったのはほぼ同時だった。
「シャマル」
「護るべきものがなんなのか、私は判断出来るつもりだよ、ダリウス。ではエドワード様、実が成りましたらお知らせ下さい。それまでに私も色々と根回しを致します」
そう言って、来た時と同様に唐突に帰って行ったんだ。
父様は何か言いたげだったけれど、そのまま二人と一緒にフィンレーに戻って行った。
そして、兄様は硬い顔をしていたけど、どうしていいのか分からない僕に「大丈夫だよ」って言ってくれた。
暑い夏が終わり秋めいてきた九の月の半ば。
「あ……」
最初のマルリカの実から出来た木は僕の背を追い越していて、その枝に小さな白い花をつけた。
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やはり詰め込み過ぎたので分けました(;^ω^)
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