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第9章 幸せになります
412.結婚の報告とお祝い会①
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フィンレーに戻ってきて、僕と兄様は結婚式の衣装に着替えた部屋に入った。
無事に結婚式を挙げて神様の前で結婚を認められましたっていう『報告とお祝いの会』の準備をするためだ。
式に参列をして下さった方々は、そのまま聖殿に特別に設置をさせていただいた転移陣を使ってフィンレーへとやって来る事になっているんだ。
でも転移陣は順番に使ってもらっているので全員が転移するまでには少し時間がかかってしまうんだよね。
だからその間は別棟一階の大ホールで少し休んでいただく事になっている。
勿論お祝い会から参加をされる方もいるので、多分今、大ホールは大忙しになっている筈だ。
「こちらにお願い致します」
結婚式の衣装から一旦普段の服に着替えた後、僕たちは軽い食事をしておく事になっていた。
お祝いの会はきちんと一人一人に食事が出て、僕達の席も用意をされているんだけど、食事の間にテーブルに挨拶をしに行く事になっているから僕達はほとんど食べる事が出来ないみたい。ちょっと残念。でもシェフたちが考えて決めたお料理だから皆に喜んでもらえるといいな。
「アル、やりすぎです」
着替えを終えて軽食が並べられたテーブルに着いた途端、僕達のいる部屋にやってきた母様が呆れたようにそう言った。
「申し訳ございません。嬉しくて」
謝っている筈なのに、ニコニコと笑って、しかも嬉しくてなんて付け加えている兄様に「これ以上浮かれすぎてはいけませんよ」って小さな溜息を零して、母様は自分も着替えをする為に部屋を出て行った。
うん。ちょっと珍しいっていうか、兄様らしくないっていうか、ううう、でも結婚式を嬉しいって思ってくれるのは嬉しいよね。
僕だって抱っこは恥ずかしかったけど、兄様とちゃんと結婚式を挙げる事が出来てやっぱり嬉しいって思っているもの。
「ごめんね、エディ」
「だ、大丈夫です。でも恥ずかしいから、抱っこはもうしないでください」
「うん。皆の前ではしないようにするよ。エディの可愛い顔を見られるのはやっぱり困るからね」
「わぁぁぁ!」
恥ずかしくなって思わず声を出してしまった僕に今度は何かの確認をしていたらしい父様が口を開いた。
「アルフレッド、それくらいにしておきなさい。テーブルごとに挨拶に行くのに、また照れて動けなくなったら困るだろう。エドワードも落ち着きなさい」
「は、はい、すみません」
「申し訳ございません」
父様はコクリと頷いてから「じゃあまた後で」と部屋を出て行った。
「さぁ、さぁ、あまりお時間がございませんよ。食べられるだけお召し上がりくださいませ」」
レオラに声をかけられて、僕達は食事を始めた。でも美味しいんだけど中々進まない。
「エドワード様、もう少しお召し上がりになられませんか?」
「うん……。でもあんまりお腹は空いていないかな」
「……左様でございますか。では中に出ている食事で食べられそうなものがありましたら少しでもお口に入れてくださいませ。お時間ですのでお着替えをいたしましょう」
レオラからそう言われて僕は「はい」って返事をして立ち上がった。それを見た兄様が「エディ、もう一口」って小さなお肉を口に入れてきた。
「行儀が悪いけれど見逃してくれ、レオラ」
兄様が苦笑しながらそう言うとレオラは小さく笑って「はい。ではエドワード様、しっかり噛んで飲み込んでくださいませ。それからこちらのお茶を」と冷たいお茶を出してくれた。
「ありがとう」
「いいえ、後から具合が悪くなってしまう方が大変ですからね。はい。それではお着替えを致しましょう」
僕はレオラ達と一緒に衝立の中に入って着替えを始めた。
今度は貴族服。兄様とお揃いの濃紺のコートでコートには金色をメインにした綺麗な刺繍が施されている。そしてウェストコートはそれぞれの色。こちらは地の色に合わせた刺繍。シャツやクラバットや袖飾りとジャボは白で華やかな感じのレースが付けられていて、クラヴァットを留めるブローチがお互いの色になっている。
お化粧は普段していないからあまり長くしていない方がいいって、ここでは綺麗に落とされて、何かクリームみたいなものだけ塗られたよ。
「うん、可愛いね。とても良く似合っている」
「ありがとうございます。兄様も素敵です!」
「エディ、もう兄様ではないんだけどな」
クスクスと笑いながらそう言われて僕はハッとした。そうだった! 結婚式は終わって伴侶として認められているんだ。前にも何て呼ぶか考えておくようにって言われていたんだった。
「う……あ……」
どうしよう、何て呼んだらいいんだろう。
「ふふふ、少しずつね」
「……はい」
「うん。さぁ、じゃあそろそろホールの方に移動しようか」
「はい、えっと……あの……えっと……」
「エディ? どうしたの?」
そう、一応僕だって言われた後は考えていたんだ。だけどどれも恥ずかしくて決められなかった。でもそうだよね。結婚して伴侶になったんだもの。ちゃんと神様にも認められて、祝福もされたんだし……
「だ……」
「だ?」
「だんなさま?」
「!!!」
その瞬間兄様が口を手で塞ぐようにしてガクリと跪いてしまった。ええええ⁉ どどどどどうしよう!
「……今までで最大の衝撃だったな。一瞬呼吸が止まるかと思った」
ボソボソと聞こえてきた声。
「いや! 嫌です! そんなの……」
思わず涙目になってしまった僕を見て、兄様は慌てて立ち上がると「ごめん」と言った。そうしてそのまま僕の身体をギュッと抱きしめてきた。
「ごめんね、エディ。言ってはいけない言葉だったね。でもそれ位嬉しくて驚いたんだ。ありがとう。色々考えていてくれたんだね」
「……はい」
「でも旦那様はちょっと待っていて、母上が父上の事をそう呼んでいる事があるからね」
「はい」
ああ、そうだ。誰かお客様がいらっしゃる時に母様は父様にそう話しかけている。
「今日は兄様で大丈夫。意地悪を言ってごめん。これから二人で考えて行こう」
「はい」
「涙は出ていない? うん。大丈夫そうだね。さぁ、じゃあ皆さんに美味しい食事をしていただいて、きちんと報告をして、ご挨拶をしよう」
「はい」
レオラは表情を変えなかったけれど、僕の背中をポンポンってしてくれた。それを見て兄様が少し苦い顔をした顔をした。
そしてその少し後、僕達は再び「いってらっしゃいませ」と見送られて別棟のホールへと向かった。
-----------
兄様、ちょっと失敗(;^ω^)
でもそんな事もある。天然すぎるのも罪だよね……
無事に結婚式を挙げて神様の前で結婚を認められましたっていう『報告とお祝いの会』の準備をするためだ。
式に参列をして下さった方々は、そのまま聖殿に特別に設置をさせていただいた転移陣を使ってフィンレーへとやって来る事になっているんだ。
でも転移陣は順番に使ってもらっているので全員が転移するまでには少し時間がかかってしまうんだよね。
だからその間は別棟一階の大ホールで少し休んでいただく事になっている。
勿論お祝い会から参加をされる方もいるので、多分今、大ホールは大忙しになっている筈だ。
「こちらにお願い致します」
結婚式の衣装から一旦普段の服に着替えた後、僕たちは軽い食事をしておく事になっていた。
お祝いの会はきちんと一人一人に食事が出て、僕達の席も用意をされているんだけど、食事の間にテーブルに挨拶をしに行く事になっているから僕達はほとんど食べる事が出来ないみたい。ちょっと残念。でもシェフたちが考えて決めたお料理だから皆に喜んでもらえるといいな。
「アル、やりすぎです」
着替えを終えて軽食が並べられたテーブルに着いた途端、僕達のいる部屋にやってきた母様が呆れたようにそう言った。
「申し訳ございません。嬉しくて」
謝っている筈なのに、ニコニコと笑って、しかも嬉しくてなんて付け加えている兄様に「これ以上浮かれすぎてはいけませんよ」って小さな溜息を零して、母様は自分も着替えをする為に部屋を出て行った。
うん。ちょっと珍しいっていうか、兄様らしくないっていうか、ううう、でも結婚式を嬉しいって思ってくれるのは嬉しいよね。
僕だって抱っこは恥ずかしかったけど、兄様とちゃんと結婚式を挙げる事が出来てやっぱり嬉しいって思っているもの。
「ごめんね、エディ」
「だ、大丈夫です。でも恥ずかしいから、抱っこはもうしないでください」
「うん。皆の前ではしないようにするよ。エディの可愛い顔を見られるのはやっぱり困るからね」
「わぁぁぁ!」
恥ずかしくなって思わず声を出してしまった僕に今度は何かの確認をしていたらしい父様が口を開いた。
「アルフレッド、それくらいにしておきなさい。テーブルごとに挨拶に行くのに、また照れて動けなくなったら困るだろう。エドワードも落ち着きなさい」
「は、はい、すみません」
「申し訳ございません」
父様はコクリと頷いてから「じゃあまた後で」と部屋を出て行った。
「さぁ、さぁ、あまりお時間がございませんよ。食べられるだけお召し上がりくださいませ」」
レオラに声をかけられて、僕達は食事を始めた。でも美味しいんだけど中々進まない。
「エドワード様、もう少しお召し上がりになられませんか?」
「うん……。でもあんまりお腹は空いていないかな」
「……左様でございますか。では中に出ている食事で食べられそうなものがありましたら少しでもお口に入れてくださいませ。お時間ですのでお着替えをいたしましょう」
レオラからそう言われて僕は「はい」って返事をして立ち上がった。それを見た兄様が「エディ、もう一口」って小さなお肉を口に入れてきた。
「行儀が悪いけれど見逃してくれ、レオラ」
兄様が苦笑しながらそう言うとレオラは小さく笑って「はい。ではエドワード様、しっかり噛んで飲み込んでくださいませ。それからこちらのお茶を」と冷たいお茶を出してくれた。
「ありがとう」
「いいえ、後から具合が悪くなってしまう方が大変ですからね。はい。それではお着替えを致しましょう」
僕はレオラ達と一緒に衝立の中に入って着替えを始めた。
今度は貴族服。兄様とお揃いの濃紺のコートでコートには金色をメインにした綺麗な刺繍が施されている。そしてウェストコートはそれぞれの色。こちらは地の色に合わせた刺繍。シャツやクラバットや袖飾りとジャボは白で華やかな感じのレースが付けられていて、クラヴァットを留めるブローチがお互いの色になっている。
お化粧は普段していないからあまり長くしていない方がいいって、ここでは綺麗に落とされて、何かクリームみたいなものだけ塗られたよ。
「うん、可愛いね。とても良く似合っている」
「ありがとうございます。兄様も素敵です!」
「エディ、もう兄様ではないんだけどな」
クスクスと笑いながらそう言われて僕はハッとした。そうだった! 結婚式は終わって伴侶として認められているんだ。前にも何て呼ぶか考えておくようにって言われていたんだった。
「う……あ……」
どうしよう、何て呼んだらいいんだろう。
「ふふふ、少しずつね」
「……はい」
「うん。さぁ、じゃあそろそろホールの方に移動しようか」
「はい、えっと……あの……えっと……」
「エディ? どうしたの?」
そう、一応僕だって言われた後は考えていたんだ。だけどどれも恥ずかしくて決められなかった。でもそうだよね。結婚して伴侶になったんだもの。ちゃんと神様にも認められて、祝福もされたんだし……
「だ……」
「だ?」
「だんなさま?」
「!!!」
その瞬間兄様が口を手で塞ぐようにしてガクリと跪いてしまった。ええええ⁉ どどどどどうしよう!
「……今までで最大の衝撃だったな。一瞬呼吸が止まるかと思った」
ボソボソと聞こえてきた声。
「いや! 嫌です! そんなの……」
思わず涙目になってしまった僕を見て、兄様は慌てて立ち上がると「ごめん」と言った。そうしてそのまま僕の身体をギュッと抱きしめてきた。
「ごめんね、エディ。言ってはいけない言葉だったね。でもそれ位嬉しくて驚いたんだ。ありがとう。色々考えていてくれたんだね」
「……はい」
「でも旦那様はちょっと待っていて、母上が父上の事をそう呼んでいる事があるからね」
「はい」
ああ、そうだ。誰かお客様がいらっしゃる時に母様は父様にそう話しかけている。
「今日は兄様で大丈夫。意地悪を言ってごめん。これから二人で考えて行こう」
「はい」
「涙は出ていない? うん。大丈夫そうだね。さぁ、じゃあ皆さんに美味しい食事をしていただいて、きちんと報告をして、ご挨拶をしよう」
「はい」
レオラは表情を変えなかったけれど、僕の背中をポンポンってしてくれた。それを見て兄様が少し苦い顔をした顔をした。
そしてその少し後、僕達は再び「いってらっしゃいませ」と見送られて別棟のホールへと向かった。
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兄様、ちょっと失敗(;^ω^)
でもそんな事もある。天然すぎるのも罪だよね……
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