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第9章 幸せになります
405.卒業式③
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式はどんどん進んでいく。近衛騎士の専科が終わり、クラウス君もしっかりと証書を受け取った。
次に魔道騎士の専科の人の名前が呼ばれていく。
レナード君も、エリック君も証書を受け取って、もう少しで魔法科の順番になる。
ドキンドキンと早くなる鼓動。
頭の中で僕は、壇上が上がる前が皆と一番近くなるけどそっちを見たらダメって言い聞かせる。
真っ直ぐ、真っ直ぐ、階段に気を付けて、しっかり受け取らないと、兄様のビデオに残っちゃうからね。
そして…………
「魔法科。エドワード・フィンレー・グリーンベリー」
「はい!」
立ち上がって考えていた通りに真ん中の通路を真っ直ぐ歩いた。見ないようにって思っていたのに、皆がこっちを見ているから、自然に視界の中に入った。
父様は小さく頷いていた。兄様はニコニコしながらビデオを撮っていて、でもちゃんと僕を見ていてくれる。
どんどん壇上が、みんなが近くなってきて母様が泣いているのが分かった。でも、僕がブワッと泣かなかったのはその隣であの日の僕のように泣いているウィルとハリーが見えたからだ。
その瞬間思った。ああ、あの日兄様が見た光景はこんな感じだったんだなって。
僕のそんな変化に気づいた父様がウィル達の方を見てギョッとした顔をして、目元にハンカチをあてていた母様は慌ててウィルの顔をそれで拭き始めて、兄様は変わらずビデオを回している。
なんて素敵な僕の家族! 溢れ出しそうになった涙はすっかり引いて緊張も取れた僕は階段でローブを踏む事なく、壇上に上がり、学園長の前に立った。
「エドワード・フィンレー・グリーンベリー、卒業おめでとう」
目尻の皺を深くして、優し気に微笑みながら学園長が差し出した卒業証を僕は「ありがとうございます」としっかりと受け取った。
「君には色々と学園を助けてもらった。ありがとう。グリーンベリー領はとても良い所だと聞く、そのうち遊びに行かせてもらいたいね」
「はい。ぜひ。素晴らしい学園生活を送らせていただきましてありがとうございました」
頭を下げて、証書をしっかりと持って、僕は反対側の通路への階段を下りて自分の席に戻った。
その後皆無事に卒業証をもらって、僕達の卒業式は終わった。
-*-*-
教室にいったん戻って、皆にまたねって挨拶をして、それぞれの所にグリーンベリーとの転送陣を置く事を約束して、ちょっとだけ……ううん、本当はしっかり泣いて、僕は父様達の待つ馬車回りの方へと向かった。勿論教室を出た所からルーカスも一緒だ。
十八の誕生日で成人を迎えると言うけれど、学園に通っている貴族の子供たちは実質的には卒業して成人と認められる。十二の月ももうすぐ終わる。
成人として迎える新しい年がやって来る。
「エディ兄様!」
ハリーの声がして顔を向けると馬車回りの手前に皆が待っていた。
「わあ! 寒い中お待たせして申し訳ございません」
「エディ、走らないで大丈夫だよ。混んでいるからね、馬車も中々出てこられないから。それより皆で写真を撮ろう?」
兄様の言葉に僕は「はい」と返事をした。公爵家だからなかなか順番が来ないというのは嘘だと分かるけれど、それでも今はこうして皆と一緒に居たいから。
「卒業おめでとう、エディ」
「ありがとうございます、母様」
「ふふふ、感動してつい泣いてしまったら隣にいた二人があの日のエディのように泣いていて思わず涙が引っ込んでしまったのよ」
「母上! それは言わないで下さい。だってエディ兄様が学園にもういらっしゃらなくなってしまうんだなって思ったら、何だか色々な事を思い出して」
「思い出し始めたら小さい頃の事まで浮かんできてしまったから、何だか分からなくなってきて」
「そう。でもエディ兄様、カッコよかったです!」
「はい、すごくかっこよかったです!」
二人の言葉に父様と兄様が「何だか聞き覚えのある言葉だね」って笑った。
そうして皆で学園を背景にして写真を沢山撮って、そのうちにミッチェル君のご家族や他のご家族も会って、よく分からないけど写真を撮って、ぜひこれを売り出してほしいって言われて……
そんな感じでわちゃわちゃと僕らしく、楽しく、学園生活が終わった。
最後の一枚は勿論兄様と二人で撮った。また一つ宝物が増えた。
-------------------
卒業式、終了!
次に魔道騎士の専科の人の名前が呼ばれていく。
レナード君も、エリック君も証書を受け取って、もう少しで魔法科の順番になる。
ドキンドキンと早くなる鼓動。
頭の中で僕は、壇上が上がる前が皆と一番近くなるけどそっちを見たらダメって言い聞かせる。
真っ直ぐ、真っ直ぐ、階段に気を付けて、しっかり受け取らないと、兄様のビデオに残っちゃうからね。
そして…………
「魔法科。エドワード・フィンレー・グリーンベリー」
「はい!」
立ち上がって考えていた通りに真ん中の通路を真っ直ぐ歩いた。見ないようにって思っていたのに、皆がこっちを見ているから、自然に視界の中に入った。
父様は小さく頷いていた。兄様はニコニコしながらビデオを撮っていて、でもちゃんと僕を見ていてくれる。
どんどん壇上が、みんなが近くなってきて母様が泣いているのが分かった。でも、僕がブワッと泣かなかったのはその隣であの日の僕のように泣いているウィルとハリーが見えたからだ。
その瞬間思った。ああ、あの日兄様が見た光景はこんな感じだったんだなって。
僕のそんな変化に気づいた父様がウィル達の方を見てギョッとした顔をして、目元にハンカチをあてていた母様は慌ててウィルの顔をそれで拭き始めて、兄様は変わらずビデオを回している。
なんて素敵な僕の家族! 溢れ出しそうになった涙はすっかり引いて緊張も取れた僕は階段でローブを踏む事なく、壇上に上がり、学園長の前に立った。
「エドワード・フィンレー・グリーンベリー、卒業おめでとう」
目尻の皺を深くして、優し気に微笑みながら学園長が差し出した卒業証を僕は「ありがとうございます」としっかりと受け取った。
「君には色々と学園を助けてもらった。ありがとう。グリーンベリー領はとても良い所だと聞く、そのうち遊びに行かせてもらいたいね」
「はい。ぜひ。素晴らしい学園生活を送らせていただきましてありがとうございました」
頭を下げて、証書をしっかりと持って、僕は反対側の通路への階段を下りて自分の席に戻った。
その後皆無事に卒業証をもらって、僕達の卒業式は終わった。
-*-*-
教室にいったん戻って、皆にまたねって挨拶をして、それぞれの所にグリーンベリーとの転送陣を置く事を約束して、ちょっとだけ……ううん、本当はしっかり泣いて、僕は父様達の待つ馬車回りの方へと向かった。勿論教室を出た所からルーカスも一緒だ。
十八の誕生日で成人を迎えると言うけれど、学園に通っている貴族の子供たちは実質的には卒業して成人と認められる。十二の月ももうすぐ終わる。
成人として迎える新しい年がやって来る。
「エディ兄様!」
ハリーの声がして顔を向けると馬車回りの手前に皆が待っていた。
「わあ! 寒い中お待たせして申し訳ございません」
「エディ、走らないで大丈夫だよ。混んでいるからね、馬車も中々出てこられないから。それより皆で写真を撮ろう?」
兄様の言葉に僕は「はい」と返事をした。公爵家だからなかなか順番が来ないというのは嘘だと分かるけれど、それでも今はこうして皆と一緒に居たいから。
「卒業おめでとう、エディ」
「ありがとうございます、母様」
「ふふふ、感動してつい泣いてしまったら隣にいた二人があの日のエディのように泣いていて思わず涙が引っ込んでしまったのよ」
「母上! それは言わないで下さい。だってエディ兄様が学園にもういらっしゃらなくなってしまうんだなって思ったら、何だか色々な事を思い出して」
「思い出し始めたら小さい頃の事まで浮かんできてしまったから、何だか分からなくなってきて」
「そう。でもエディ兄様、カッコよかったです!」
「はい、すごくかっこよかったです!」
二人の言葉に父様と兄様が「何だか聞き覚えのある言葉だね」って笑った。
そうして皆で学園を背景にして写真を沢山撮って、そのうちにミッチェル君のご家族や他のご家族も会って、よく分からないけど写真を撮って、ぜひこれを売り出してほしいって言われて……
そんな感じでわちゃわちゃと僕らしく、楽しく、学園生活が終わった。
最後の一枚は勿論兄様と二人で撮った。また一つ宝物が増えた。
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卒業式、終了!
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