297 / 335
第9章 幸せになります
401.甘い時間
しおりを挟む
驚くような事があったけれど、無事に後期の試験も終わって、十二の月に入った。
卒業生は講義もほとんど終わっているから、あとは試験の結果があまり良くなかった人の補講や、論文の提出がまだの人の追い込み位で、その他は卒業式まで自由になる。
僕はここでしか読めないような本を読む為に数日は出てくるつもりだけど、その他は主にグリーンベリーに行こうと思っていた。思っていたんだけど……
『卒業式の洋服が出来上がっているのでいらっしゃい』
母様からの書簡だった。
えぇ? 卒業式の洋服って、学園の制服みたいに決められたものではなかったの?
確か兄様の時はそれぞれの学科で同じような物を着ていたよね?
今は兄様が使っているタウンハウスの書斎で、兄様は綺麗な微笑みを浮かべながら母様の書簡を読み上げた。そして、僕の声に出さなかった筈の疑問がしっかり分かっているように口を開く。
「それぞれの学科で決められた物はあるけれど、それを準備するのは各自だよ? 私は魔導騎士科だからマントの形に規定があって、あとはそれぞれだったんだけどね」
「すみません、兄様の魔導騎士姿ががかっこよかった事しか記憶にありません」
「…………そう。エディは魔法科だからローブだね。その形だけ規定があって他は自由だよ」
兄様は僕の言葉にやんわりと笑ってからそう教えてくれた。
「学園は貴族しか通わないからね。お仕着せは学園固有の付与がかけられている制服だけかな。勿論替えが必要ならばその分は別に注文するんだよ」
「……そうだったんですね。当たり前のように着ていました」
「うん。それは仕方ないよね。私達が自分で注文をする訳では無いからね」
でも、兄様はちゃんと知っているんだよね。僕なんて替えが5着もあるのに。
「エディ? それでいつ行く?」
「え?」
「言ったでしょう? エディの洋服の事には全て同行する。 これも勿論確認するよ」
そう言っていつの間にかギュッと抱きしめられていて、僕は「お願いします」って答える以外の選択肢はなくなっていた。
なんだか最近こんな事が多いんだよね。でも兄様は嬉しそうだし、僕としては恥ずかしくてドキドキしちゃうんだけど、昔から兄様にギュッとされるのは大好きだったから現状に特に問題は無い、かなぁ。
それに結婚式前で浮かれている婚約者達なんてこんなものだって兄様が笑うから、僕もそれならいいかなって思う事にしたんだ。
だって、ちょっと恥ずかしい事を除けば、こんな風に兄様に甘えられるなんて、なんだか小さな頃に戻ったみたいだもの。
そう言ったら兄様が困った顔をして「小さな頃に戻られたら困るんだけどな。結婚出来なくなってしまうからね」って言いながらチュッってほっぺたに口付けてきた。
「わあ! そそそそうですね!」
あぁ、でもやっぱり恥ずかしいよね! 顔が熱くなってるからきっと赤くなっちゃってるよ。
「き、急に口付けたらダメです!」
「えぇ?! じゃあ申告すればいいのかな? 口付けするよって」
「そ、それもやっぱり恥ずかしいからダメ……っ……」
僕の言葉を閉じ込めるように、口の中にぬるりと熱い舌が入ってきた。大人の口付け。はじめはものすごくびっくりしたし、どうやって息をしたらいいのか分からなくて苦しくなっちゃったんだけど、今はなんだか気持ちよくてボーッとなっちゃうし、ムズムズしてくるから困るんだ。
「……んぅ…………っ……は、はぁ、はぁ……も、もう、ダメって言ったのに」
「ごめんね、エディが可愛くて。ふふ、涙目になっちゃったね。その顔は誰にも見せたくないから、もう少しこのままで居させてね」
そう言うと兄様はギュッとしていた手にもう少しだけ力を入れた。そしてやっぱり何故か膝の上に抱っこされている!
二人分の重さを受けて、椅子が小さくキシリと鳴いた。でも、兄様の手は離れなくて、そのままトントンって本当に子供みたいに背中を叩くから、余計にぼんやりしちゃって、コトリとその肩口に頭を預けた。
「エディ?」
「……なんだか、ちょっとだけ悔しいです」
「悔しい?」
「だって、僕はものすごくドキドキして、顔も赤くなって、ものすごく慌てている感じなのに、兄様はいつもと同じかっこいいままなんだもの」
ボソボソと小さな声でそう言うと兄様は片手で顔を覆ってしまった。
「兄様?」
「…………久しぶりに、ものすごい衝撃だったね」
「え?」
衝撃? 僕何もしていないよ?
「ドキドキしてるのはエディだけじゃないよ。口付けも、エディに嫌って言われたら立ち直れないな。もう絶対しませんって言われたら泣いてしまうかもしれない」
「えぇぇ!? そんな事は言いませんよ! えっと、その、き、急にしたら困るけど……。だってドキドキで壊れちゃいそうになるから」
兄様は吹き出すように笑って「壊れたら困るからゆっくりにしよう」って言った。そして………。
「わぁ!」
「ドキドキしてるのはエディだけじゃないよ? ほら、口付けをしていなくても、私だってこんなにドキドキしている。一緒だね?」
頭を胸の中に抱え込まれて驚いていると、確かに兄様の早い鼓動が伝わってきた。
「お揃い、ですね。ふふふ、良かった」
そう言って僕は兄様にしがみつくように背中に手を回す。
トクンと跳ねて、もう少し早くなったその音が嬉しくて、自然に「大好き」ってって口から零れたら、最初の日のように兄様は「私もだよ」って言ってくれた。
フィンレーには、翌日行く事になった。
------
ふぉぉぉぉ!!!
なまじえちを書くより恥ずかしかった!
そしてここで引ける兄様は凄すぎると思いました!
洋服も一緒詰め込もうかとおもいましたが、ちょっとおなかいっぱいなのと、もう少しダダ漏れの兄様書きたくて(笑)分けました!
卒業生は講義もほとんど終わっているから、あとは試験の結果があまり良くなかった人の補講や、論文の提出がまだの人の追い込み位で、その他は卒業式まで自由になる。
僕はここでしか読めないような本を読む為に数日は出てくるつもりだけど、その他は主にグリーンベリーに行こうと思っていた。思っていたんだけど……
『卒業式の洋服が出来上がっているのでいらっしゃい』
母様からの書簡だった。
えぇ? 卒業式の洋服って、学園の制服みたいに決められたものではなかったの?
確か兄様の時はそれぞれの学科で同じような物を着ていたよね?
今は兄様が使っているタウンハウスの書斎で、兄様は綺麗な微笑みを浮かべながら母様の書簡を読み上げた。そして、僕の声に出さなかった筈の疑問がしっかり分かっているように口を開く。
「それぞれの学科で決められた物はあるけれど、それを準備するのは各自だよ? 私は魔導騎士科だからマントの形に規定があって、あとはそれぞれだったんだけどね」
「すみません、兄様の魔導騎士姿ががかっこよかった事しか記憶にありません」
「…………そう。エディは魔法科だからローブだね。その形だけ規定があって他は自由だよ」
兄様は僕の言葉にやんわりと笑ってからそう教えてくれた。
「学園は貴族しか通わないからね。お仕着せは学園固有の付与がかけられている制服だけかな。勿論替えが必要ならばその分は別に注文するんだよ」
「……そうだったんですね。当たり前のように着ていました」
「うん。それは仕方ないよね。私達が自分で注文をする訳では無いからね」
でも、兄様はちゃんと知っているんだよね。僕なんて替えが5着もあるのに。
「エディ? それでいつ行く?」
「え?」
「言ったでしょう? エディの洋服の事には全て同行する。 これも勿論確認するよ」
そう言っていつの間にかギュッと抱きしめられていて、僕は「お願いします」って答える以外の選択肢はなくなっていた。
なんだか最近こんな事が多いんだよね。でも兄様は嬉しそうだし、僕としては恥ずかしくてドキドキしちゃうんだけど、昔から兄様にギュッとされるのは大好きだったから現状に特に問題は無い、かなぁ。
それに結婚式前で浮かれている婚約者達なんてこんなものだって兄様が笑うから、僕もそれならいいかなって思う事にしたんだ。
だって、ちょっと恥ずかしい事を除けば、こんな風に兄様に甘えられるなんて、なんだか小さな頃に戻ったみたいだもの。
そう言ったら兄様が困った顔をして「小さな頃に戻られたら困るんだけどな。結婚出来なくなってしまうからね」って言いながらチュッってほっぺたに口付けてきた。
「わあ! そそそそうですね!」
あぁ、でもやっぱり恥ずかしいよね! 顔が熱くなってるからきっと赤くなっちゃってるよ。
「き、急に口付けたらダメです!」
「えぇ?! じゃあ申告すればいいのかな? 口付けするよって」
「そ、それもやっぱり恥ずかしいからダメ……っ……」
僕の言葉を閉じ込めるように、口の中にぬるりと熱い舌が入ってきた。大人の口付け。はじめはものすごくびっくりしたし、どうやって息をしたらいいのか分からなくて苦しくなっちゃったんだけど、今はなんだか気持ちよくてボーッとなっちゃうし、ムズムズしてくるから困るんだ。
「……んぅ…………っ……は、はぁ、はぁ……も、もう、ダメって言ったのに」
「ごめんね、エディが可愛くて。ふふ、涙目になっちゃったね。その顔は誰にも見せたくないから、もう少しこのままで居させてね」
そう言うと兄様はギュッとしていた手にもう少しだけ力を入れた。そしてやっぱり何故か膝の上に抱っこされている!
二人分の重さを受けて、椅子が小さくキシリと鳴いた。でも、兄様の手は離れなくて、そのままトントンって本当に子供みたいに背中を叩くから、余計にぼんやりしちゃって、コトリとその肩口に頭を預けた。
「エディ?」
「……なんだか、ちょっとだけ悔しいです」
「悔しい?」
「だって、僕はものすごくドキドキして、顔も赤くなって、ものすごく慌てている感じなのに、兄様はいつもと同じかっこいいままなんだもの」
ボソボソと小さな声でそう言うと兄様は片手で顔を覆ってしまった。
「兄様?」
「…………久しぶりに、ものすごい衝撃だったね」
「え?」
衝撃? 僕何もしていないよ?
「ドキドキしてるのはエディだけじゃないよ。口付けも、エディに嫌って言われたら立ち直れないな。もう絶対しませんって言われたら泣いてしまうかもしれない」
「えぇぇ!? そんな事は言いませんよ! えっと、その、き、急にしたら困るけど……。だってドキドキで壊れちゃいそうになるから」
兄様は吹き出すように笑って「壊れたら困るからゆっくりにしよう」って言った。そして………。
「わぁ!」
「ドキドキしてるのはエディだけじゃないよ? ほら、口付けをしていなくても、私だってこんなにドキドキしている。一緒だね?」
頭を胸の中に抱え込まれて驚いていると、確かに兄様の早い鼓動が伝わってきた。
「お揃い、ですね。ふふふ、良かった」
そう言って僕は兄様にしがみつくように背中に手を回す。
トクンと跳ねて、もう少し早くなったその音が嬉しくて、自然に「大好き」ってって口から零れたら、最初の日のように兄様は「私もだよ」って言ってくれた。
フィンレーには、翌日行く事になった。
------
ふぉぉぉぉ!!!
なまじえちを書くより恥ずかしかった!
そしてここで引ける兄様は凄すぎると思いました!
洋服も一緒詰め込もうかとおもいましたが、ちょっとおなかいっぱいなのと、もう少しダダ漏れの兄様書きたくて(笑)分けました!
356
お気に入りに追加
10,680
あなたにおすすめの小説
ある日、人気俳優の弟になりました。
ユヅノキ ユキ
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。