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第9章 幸せになります
399.話し合い
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約束した場所で待っていたウィルと合流して、僕達三人はタウンハウスへと向かった。
ウィルは何も言わなかったが、それでも何のために呼び出されたのかは分かっているようで「申し訳ございません」と頭を下げた。
馬車の中で僕は「一緒に考えよう」と言った。
「エディ兄様?」
「うん。僕はね、誰かを守りたかったウィルの気持ちも理解出来るよ。だけどそれだけでは済まされない事になった時には大人の力を遠慮なく借りて、一緒に考えてもらうのがいい。僕もそうさせてもらってきたよ。それは別に恥ずかしい事でも、いけない事でもない。この前のウィルからの言葉に隠されていたものに気づいてあげられなくてごめんね。だから出来る限りウィルの気持ちに沿うような答えが出せたらいいなって思っているよ」
「…………はい。ありがとうございます」
俯き加減で返事をしたウィルは僕にとってはどんなに大きくなっても少し泣き虫の小さな弟だった。
「全員で応接室へ」
兄様にそう言われて行くと、そこには父様が居た。
ウィルもハリーも驚いていたけれど、まさか兄様に話をする前から父様がいらっしゃるとは思ってもいなかった。そんな僕の気持ちが表情に出てしまったのか、兄様が「学園から連絡が入ったんだよ」と教えてくれた。こうなってしまうとウィルが思うように進むのは難しいかもしれない。それどころか、ウィルにも何か罰則が科せられてしまうかもしれない。
そう考えた途端兄様が僕の背中をトントンってしてくれた。
ああ、そうだ。そうならないために父様が来てくださったんだ。僕達に出来る事はきちんと何があったのかを伝える事だ。
「かけなさい」
静かな父様の声に皆で椅子に座ると、とうさまはゆっくりと言葉を続けた。
「まずは私の方から話をしよう。今日、学園からウィルがとある伯爵家の子息との揉め事に巻き込まれている可能性があるというような知らせが届いた。そして、エドワードが友人から聞いたという『噂』の事もアルフレッドから先程聞いたよ。けれど私自身はきちんとした事をウィリアムから聞きたいと思っている。何があったのか、どうなったのか、どう思って、どうしたのか。その上で、伝えるべき事と、一緒に考えたいと思っている事を伝えたいと思っている。ウィリアム、どうかな?」
ウィルは硬い表情をしてギュッと口を結ぶと、ゆっくりと息を吐いてから話し始めた。
元侯爵家だったその家は、当主自身が身体の中に大量の魔素を抱えていた事と、魔物に対しての自衛に否定的な意見を持っていた事で、粛清の対象となった。
元々はオルドリッジ公爵派だった事もあり、フィンレー等の改革派と呼ばれた家とはあまり関わりはなかった。もっとも父様達に言わせれば改革派などではなく、常識派と呼んで欲しい等と言っていたのを覚えている。
「はじめは関わらないという感じだったのですが、次第に陰口のようなものが始まり、そのうちに言いがかりのようなものを口してきたりして……」
具体的な言葉を聞いて、僕は信じられない気持ちだった。父様も兄様も難しい顔をしている。そして後期に入ってからは更に攻撃的になり…………
「こちらを手渡され、後期の試験で順位が自分より下だったら、メルトス家の令嬢からきちんと手を引くようにと」
父様の口から大きな溜息が落ちた。
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ウィルは何も言わなかったが、それでも何のために呼び出されたのかは分かっているようで「申し訳ございません」と頭を下げた。
馬車の中で僕は「一緒に考えよう」と言った。
「エディ兄様?」
「うん。僕はね、誰かを守りたかったウィルの気持ちも理解出来るよ。だけどそれだけでは済まされない事になった時には大人の力を遠慮なく借りて、一緒に考えてもらうのがいい。僕もそうさせてもらってきたよ。それは別に恥ずかしい事でも、いけない事でもない。この前のウィルからの言葉に隠されていたものに気づいてあげられなくてごめんね。だから出来る限りウィルの気持ちに沿うような答えが出せたらいいなって思っているよ」
「…………はい。ありがとうございます」
俯き加減で返事をしたウィルは僕にとってはどんなに大きくなっても少し泣き虫の小さな弟だった。
「全員で応接室へ」
兄様にそう言われて行くと、そこには父様が居た。
ウィルもハリーも驚いていたけれど、まさか兄様に話をする前から父様がいらっしゃるとは思ってもいなかった。そんな僕の気持ちが表情に出てしまったのか、兄様が「学園から連絡が入ったんだよ」と教えてくれた。こうなってしまうとウィルが思うように進むのは難しいかもしれない。それどころか、ウィルにも何か罰則が科せられてしまうかもしれない。
そう考えた途端兄様が僕の背中をトントンってしてくれた。
ああ、そうだ。そうならないために父様が来てくださったんだ。僕達に出来る事はきちんと何があったのかを伝える事だ。
「かけなさい」
静かな父様の声に皆で椅子に座ると、とうさまはゆっくりと言葉を続けた。
「まずは私の方から話をしよう。今日、学園からウィルがとある伯爵家の子息との揉め事に巻き込まれている可能性があるというような知らせが届いた。そして、エドワードが友人から聞いたという『噂』の事もアルフレッドから先程聞いたよ。けれど私自身はきちんとした事をウィリアムから聞きたいと思っている。何があったのか、どうなったのか、どう思って、どうしたのか。その上で、伝えるべき事と、一緒に考えたいと思っている事を伝えたいと思っている。ウィリアム、どうかな?」
ウィルは硬い表情をしてギュッと口を結ぶと、ゆっくりと息を吐いてから話し始めた。
元侯爵家だったその家は、当主自身が身体の中に大量の魔素を抱えていた事と、魔物に対しての自衛に否定的な意見を持っていた事で、粛清の対象となった。
元々はオルドリッジ公爵派だった事もあり、フィンレー等の改革派と呼ばれた家とはあまり関わりはなかった。もっとも父様達に言わせれば改革派などではなく、常識派と呼んで欲しい等と言っていたのを覚えている。
「はじめは関わらないという感じだったのですが、次第に陰口のようなものが始まり、そのうちに言いがかりのようなものを口してきたりして……」
具体的な言葉を聞いて、僕は信じられない気持ちだった。父様も兄様も難しい顔をしている。そして後期に入ってからは更に攻撃的になり…………
「こちらを手渡され、後期の試験で順位が自分より下だったら、メルトス家の令嬢からきちんと手を引くようにと」
父様の口から大きな溜息が落ちた。
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