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第9章 幸せになります
384. 最終学年の最後の学期
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学園が始まった。僕が気になっている事は二つ。
一つはトーマス君があれからどうしたかなっていう事。そしてもう一つはルシルの所に植えた麦はどうなっているかなっていう事。
とりあえず初日なので、八の月の終わりにタウンハウスに戻って、九の月の一日はハリー達と一緒に学園に向かう。でも高等部と初等部では降りる所が違うから、まずは二人を下ろして「いってらっしゃい」って言ってから高等部の馬車回しの方に行ってもらった。
ちょっと遠回りになるけれど初日位はいいよね。ただ護衛の数が多くなってしまうので、明日からは別々の馬車だ。
大丈夫だって言うんだけど、未だにルーカスは教室の前まではついて来る。
「ではいってらっしゃいませ」
「うん。行ってきます」
教室に入るとスティーブ君が「おはようございます」って挨拶をしてきた。
「おはようスティーブ。今日は少し早かったからまだ少ないね」
「そうですね。でももうそろそろやって来ると思いますよ。ああ、それから今日は初日だから久しぶりにお昼を集まろうかってレオンから連絡が来ました」
「わぁ、久しぶり。本当は休みの間にレオンの領にも行きたかったんだけど、時間が取れなかったな」
「ああ、それはちょっと無理だったと思いますよ」
スティーブ君は僕の領に来ることが決まってから口調を変えてしまったんだ。今まで通りでいてって言ったんだけど、普段からそうしておかないと領で出てしまうと困るからって。それに男爵位をもらっているし、普通であれば男爵が公爵家に務めるなんてありえない事だからせめてきちんとした言葉遣いにさせて下さいって言われてしまったんだ。兄様に話したら「その方がいいかもしれないね」っていうのでこうなった。
でも学園でエドワード様っていうのはやめてもらった。ちょっと困ったような顔をしたけれど「スティーブが僕の大事な友人である事は変わらない」って言ったら「分かりました」って言ってくれたんだ。
「ああ、ほら、やってきましたよ」
「エディ、おはよう! 四日ぶり!」
嬉しそうな顔をしてやってきたのはミッチェル君だ。そう。ミッチェル君も休みの間は結構グリーンベリーに来ていた。「大丈夫なの?」って言ったら家にいると胃が痛くなるんだって苦笑していたよ。
「おはよう、ミッチェル」
「うん。スティーブもおはよう」
「おはよう、ミッチェル」
三人で集まるとつい領の話をしてしまう。そう言えばと話し出すとすぐにスティーブが遮音の魔道具を置く。僕はそれに安心して先日の視察の事と、領主の私有の畑で白いイチゴを育て始め、いずれは領内の農民で希望をする者に苗を格安で分けたいという事を話し始めた。今までにも二度ほど、私有地で育てていた苗の販売を行った事があり、他領への転売の防止や罰則などの対策も行われている。規定に満ちたものは領主の館で買い取り安定した収入になるようにしていきたいと思っているんだ。
そんな話をしていると入口にトーマス君とユージーン君の姿が見えた。
僕たちは話を止めて、遮音の魔道具を切った。
「おはよう、エディ」
「おはよう、トム、ジーン。バカンスシーズンは楽しめた?」
そう言うとトムは「ふふふ、これからの準備で忙しかったよ」と笑った。するとジーンが少しだけ困ったような顔をして「色々とありがとうございました」と言ったので僕はもう大丈夫だなって思った。
それは勿論トーマス君の顔を見れば分かるけど、二人で話をしてちゃんと納得できたならそれが一番だって思ったんだ。
「何? 何かあったの?」
ミッチェル君が不思議そうな顔をして僕とジーンを見た。
「何にもないよ。本当はジーンの領も遊びに行きたかったけど、どこにも行かれなかったなって思っただけ。でもさ、ジーン、また背が伸びた?」
それを聞いた途端トーマス君が吹き出すように笑い出した。
「そうなんだよ、エディ。僕はこんなに一生懸命背が伸びる食事は何だろうとか、何か運動をした方がいいのかなとか色々考えているのに、ジーンはちょっと会わないうちに3ティンも伸びたんだ。許せないよね」
「ええ! 3ティン!? ジーンて今いくつあるの?」
「ああ……194ティンかな」
「194!」
え? 兄様と同じくらい? もっと大きい?
「うわ~すごいね。ジーンはクラウスの次に大きんじゃない?」
「クラウスは200を超えているから論外だよ」
「クラウスの所も私の所もみんな家族の身長が高いんだよ」
ユージーン君がなぜか申し訳なさそうにそう言った。
「ええ、それだったら僕の所だって父様も兄様もお祖父様も皆大きいのに……」
「僕の所も僕以外は皆大きいよ」
僕とトーマス君がそう言うとユージーン君は困ったように笑った。
「ふふふ、ごめんね。ジーン。ちょっと口惜しくなっちゃったんだ。でも僕は諦めないから」
そう宣言をしたいると先生が入ってきたのが見えて僕たちは慌てて席に座った。座る前にジーンが「また改めてお話をさせていただきたいのですが、有難うございました」って頭を下げて、その隣に座ったトーマス君も同じように頭を下げた。
先生がいよいよ学生最後の学期ですって話し出した。
そう。高等部三年の後期。
遅れて後ろのドアからそぉっと入ってきたルシルに小さく手を上げて笑って、僕は気持ちを切り替えるようにして真っ直ぐに前を見た。
学生でいられるのはあと3ヶ月だ。
----------
チームエディのわちゃわちゃ。
長くなりそうなので一旦切りました。
一つはトーマス君があれからどうしたかなっていう事。そしてもう一つはルシルの所に植えた麦はどうなっているかなっていう事。
とりあえず初日なので、八の月の終わりにタウンハウスに戻って、九の月の一日はハリー達と一緒に学園に向かう。でも高等部と初等部では降りる所が違うから、まずは二人を下ろして「いってらっしゃい」って言ってから高等部の馬車回しの方に行ってもらった。
ちょっと遠回りになるけれど初日位はいいよね。ただ護衛の数が多くなってしまうので、明日からは別々の馬車だ。
大丈夫だって言うんだけど、未だにルーカスは教室の前まではついて来る。
「ではいってらっしゃいませ」
「うん。行ってきます」
教室に入るとスティーブ君が「おはようございます」って挨拶をしてきた。
「おはようスティーブ。今日は少し早かったからまだ少ないね」
「そうですね。でももうそろそろやって来ると思いますよ。ああ、それから今日は初日だから久しぶりにお昼を集まろうかってレオンから連絡が来ました」
「わぁ、久しぶり。本当は休みの間にレオンの領にも行きたかったんだけど、時間が取れなかったな」
「ああ、それはちょっと無理だったと思いますよ」
スティーブ君は僕の領に来ることが決まってから口調を変えてしまったんだ。今まで通りでいてって言ったんだけど、普段からそうしておかないと領で出てしまうと困るからって。それに男爵位をもらっているし、普通であれば男爵が公爵家に務めるなんてありえない事だからせめてきちんとした言葉遣いにさせて下さいって言われてしまったんだ。兄様に話したら「その方がいいかもしれないね」っていうのでこうなった。
でも学園でエドワード様っていうのはやめてもらった。ちょっと困ったような顔をしたけれど「スティーブが僕の大事な友人である事は変わらない」って言ったら「分かりました」って言ってくれたんだ。
「ああ、ほら、やってきましたよ」
「エディ、おはよう! 四日ぶり!」
嬉しそうな顔をしてやってきたのはミッチェル君だ。そう。ミッチェル君も休みの間は結構グリーンベリーに来ていた。「大丈夫なの?」って言ったら家にいると胃が痛くなるんだって苦笑していたよ。
「おはよう、ミッチェル」
「うん。スティーブもおはよう」
「おはよう、ミッチェル」
三人で集まるとつい領の話をしてしまう。そう言えばと話し出すとすぐにスティーブが遮音の魔道具を置く。僕はそれに安心して先日の視察の事と、領主の私有の畑で白いイチゴを育て始め、いずれは領内の農民で希望をする者に苗を格安で分けたいという事を話し始めた。今までにも二度ほど、私有地で育てていた苗の販売を行った事があり、他領への転売の防止や罰則などの対策も行われている。規定に満ちたものは領主の館で買い取り安定した収入になるようにしていきたいと思っているんだ。
そんな話をしていると入口にトーマス君とユージーン君の姿が見えた。
僕たちは話を止めて、遮音の魔道具を切った。
「おはよう、エディ」
「おはよう、トム、ジーン。バカンスシーズンは楽しめた?」
そう言うとトムは「ふふふ、これからの準備で忙しかったよ」と笑った。するとジーンが少しだけ困ったような顔をして「色々とありがとうございました」と言ったので僕はもう大丈夫だなって思った。
それは勿論トーマス君の顔を見れば分かるけど、二人で話をしてちゃんと納得できたならそれが一番だって思ったんだ。
「何? 何かあったの?」
ミッチェル君が不思議そうな顔をして僕とジーンを見た。
「何にもないよ。本当はジーンの領も遊びに行きたかったけど、どこにも行かれなかったなって思っただけ。でもさ、ジーン、また背が伸びた?」
それを聞いた途端トーマス君が吹き出すように笑い出した。
「そうなんだよ、エディ。僕はこんなに一生懸命背が伸びる食事は何だろうとか、何か運動をした方がいいのかなとか色々考えているのに、ジーンはちょっと会わないうちに3ティンも伸びたんだ。許せないよね」
「ええ! 3ティン!? ジーンて今いくつあるの?」
「ああ……194ティンかな」
「194!」
え? 兄様と同じくらい? もっと大きい?
「うわ~すごいね。ジーンはクラウスの次に大きんじゃない?」
「クラウスは200を超えているから論外だよ」
「クラウスの所も私の所もみんな家族の身長が高いんだよ」
ユージーン君がなぜか申し訳なさそうにそう言った。
「ええ、それだったら僕の所だって父様も兄様もお祖父様も皆大きいのに……」
「僕の所も僕以外は皆大きいよ」
僕とトーマス君がそう言うとユージーン君は困ったように笑った。
「ふふふ、ごめんね。ジーン。ちょっと口惜しくなっちゃったんだ。でも僕は諦めないから」
そう宣言をしたいると先生が入ってきたのが見えて僕たちは慌てて席に座った。座る前にジーンが「また改めてお話をさせていただきたいのですが、有難うございました」って頭を下げて、その隣に座ったトーマス君も同じように頭を下げた。
先生がいよいよ学生最後の学期ですって話し出した。
そう。高等部三年の後期。
遅れて後ろのドアからそぉっと入ってきたルシルに小さく手を上げて笑って、僕は気持ちを切り替えるようにして真っ直ぐに前を見た。
学生でいられるのはあと3ヶ月だ。
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チームエディのわちゃわちゃ。
長くなりそうなので一旦切りました。
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