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第9章 幸せになります
373. 婚約式の後
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婚約式が終わって婚約者となっても、僕と兄様の生活が大きく変わる事はなかった。とりあえず婚約式に関する事がなくなったので、学園に通えるようにもなった。
今年は何かと休みが多くなってしまったから、三年生に上がれないような事がないように最低限の出席日数は確保するように気を付けないとね。
結局兄様からは結婚式までは兄様のままで大丈夫だよって苦笑いされてしまった。僕が「兄様」って言いかけては困ったような顔をするから。
でもなんて言っていいのか分からないんだもの。だってずっとずっと兄様は兄様で、アル兄様ってお名前でなく、兄様だけにはなったけれど……。こう呼んでって言うのがあればそれを教えてもらうのはどうかなぁ。あ、でも待って。お祖母様や母様みたいに「貴方」なんて呼ぶ事はできないよ! 母様は時々「デイヴィット」って父様の名前を呼んでいる時もあるけれど、それも難しい。だって、兄様の事を呼び捨てするなんて無理だもん。
やっぱり兄様は兄様だから結婚式まではそう呼ばせてもらおうかな。だけど結婚をしたらなんて呼んだらいいのかもちゃんと考えないといけないよね。
最近は朝はタウンハウスから学園へ。そして学園から戻ったら課題を片付けてグリーンベリーへ転移をしてしまう事が多くなった。勿論夕食までにはタウンハウスに戻って来るから行っている時間はそんなに多くはない。
でも行けば何かしらはあるし、やっぱりある程度軌道に乗るまでは仕方がないなって思うんだ。別に問題が起きているわけではないけれど、見落としている町とか村とかもあるしね。新しい領主の顔を知らないっていう人は多分結構いると思う。まぁ、少しずつ色々な所を回ってみたいなって思っている。
あとミッチェル君や他の皆は急ぎの事がない限りは週に一度位にしてもらうように話をした。それで何かが回らなければまた考えて行こうって事になったよ。やっぱり学生の間は学園の方を優先にしてもらった方がいいものね。
そして……
『えでぃー』
「ティオ、久しぶり!リロイもセームルも元気だった?」
グリーンベリーの温室にもティオ達が来てくれるようになったんだ。
あの木を植えてから少しして、夢の中におおきいひとと呼ばれるファラルが現れた。「木が植えられたので、繋がりが出来てグリーンベリーにも行かれるようになりました。道を繋ぎたいと思います」という話をされた。僕はフィンレーのように温室の中に木があるわけではない事と、木を持ってきてしまった事でフィンレーの温室への道が消えてしまう様な事はないのかと尋ねた。
『木は大まかな目印です。前回のような出来上がっている道を消し去るような時にははっきりとしたものが必要になりますが、新しい道を作る時はそれを目印にして、実際にどこに繋ぐかはその後になります。今回は木のある敷地内の温室に繋げさせていただきますね』
そうしてその翌日温室に行ったらティオ達がいたのだ。勿論蜂蜜パーティをしたよ。残念ながら他の妖精たちは見る事は出来ないけれど、それでも温室の中が少しキラキラしているような気がしたし、出したミルクカップはコロコロと転がっていた。ハリーのように妖精の加護があるわけではないから契約をしていない子たちの姿を見る事は出来ない。でも少しでも感じられたらいいなって思った。
フィンレーはあの騒動の後も、結局強い結界を弱める事はしなかった。
そしてグリーンベリーもお祖父様は同じ結界を屋敷の敷地に張って下さった。新興の領に探りを入れる様な者は少なからずいるらしい。別に探られて困るようなものはないけれど、やはり知らない人に生活を覗かれるような事はされたくないし、使う事もないだろうけれど、あの加護については隠す事はもう無理だけど、公にする事も考えていないので、それも含めて結界はあった方がいいのかなって思った。
兄様は「余計なものに煩わされる事がない方がいいからね」ってリヒトにある執務用の屋敷にも同じように結界をかけるようにお願いをしていたよ。
そんな感じで十の月も終わって、十一の月。
ウィルとハリーが一年早く学園に入る為の試験を受けた。試験の結果は翌日に出る。二人は来年から王都の学園に通う事になったと報告が来た。兄様は今フィンレーの父様のお仕事のお手伝いをしている。最初の大きなお手伝いは冬祭りになりそうだって。
二人の合格祝いを何にしようかなって話をしていたら。
「来年はエディを独り占め出来なくなりそうだな」
「え? ひと、ええ?」
「だって二人と一緒に学園に通うんでしょう? 朝食も、夕食も、基本は4人になる。ちょっと残念」
兄様はそう言ってクスリと笑った。
「…………でもご挨拶をするのは、兄様とだけですよ」
そう。婚約者になっても特に何も変わらないって思ったんだけど、兄様から提案があったんだ。せっかく皆に認められて婚約者になったんだから、婚約者らしい事をしようかって。
婚約者らしい事ってなんだろう? って思ったら朝の口づけとおやすみの口づけをしてほしいって。
最近はね、ちょっと、自然にっていうか、何となくそんな感じっていうか、口づけをする事が多くなってきたかなって思ってはいたんだ。初めて口づけをしたのは兄様が結婚を申し込んでくれた時なんだけど……。
それから少しずつそんな風になる事があって、嫌じゃなくて、えっとその……
だからね、最近はお部屋に兄様が来てくれて「おはよう」って口づけをしてからダイニングに下りて、夜は食後に少し話をしたりした後に、部屋まで送ってくれて「おやすみなさい」って口づけをする事が日課になってきているんだ。
「そうだね、私とだけの特別な挨拶だからね」
そう言って兄様は頬っぺたに掠めるように口づける。
「ふぁ!」
「ふふふ、こういうのも慣れてね、エディ。二人が来るまでに。そんな声を聞かせたらダメだよ?」
楽し気にそう言って笑う兄様に「頑張ります」って言ったら兄様は今度はギュッてしてきた。そして僕はそんな兄様にやっぱり顔を赤くしてしまったんだ。
----------
はい、甘い~
今年は何かと休みが多くなってしまったから、三年生に上がれないような事がないように最低限の出席日数は確保するように気を付けないとね。
結局兄様からは結婚式までは兄様のままで大丈夫だよって苦笑いされてしまった。僕が「兄様」って言いかけては困ったような顔をするから。
でもなんて言っていいのか分からないんだもの。だってずっとずっと兄様は兄様で、アル兄様ってお名前でなく、兄様だけにはなったけれど……。こう呼んでって言うのがあればそれを教えてもらうのはどうかなぁ。あ、でも待って。お祖母様や母様みたいに「貴方」なんて呼ぶ事はできないよ! 母様は時々「デイヴィット」って父様の名前を呼んでいる時もあるけれど、それも難しい。だって、兄様の事を呼び捨てするなんて無理だもん。
やっぱり兄様は兄様だから結婚式まではそう呼ばせてもらおうかな。だけど結婚をしたらなんて呼んだらいいのかもちゃんと考えないといけないよね。
最近は朝はタウンハウスから学園へ。そして学園から戻ったら課題を片付けてグリーンベリーへ転移をしてしまう事が多くなった。勿論夕食までにはタウンハウスに戻って来るから行っている時間はそんなに多くはない。
でも行けば何かしらはあるし、やっぱりある程度軌道に乗るまでは仕方がないなって思うんだ。別に問題が起きているわけではないけれど、見落としている町とか村とかもあるしね。新しい領主の顔を知らないっていう人は多分結構いると思う。まぁ、少しずつ色々な所を回ってみたいなって思っている。
あとミッチェル君や他の皆は急ぎの事がない限りは週に一度位にしてもらうように話をした。それで何かが回らなければまた考えて行こうって事になったよ。やっぱり学生の間は学園の方を優先にしてもらった方がいいものね。
そして……
『えでぃー』
「ティオ、久しぶり!リロイもセームルも元気だった?」
グリーンベリーの温室にもティオ達が来てくれるようになったんだ。
あの木を植えてから少しして、夢の中におおきいひとと呼ばれるファラルが現れた。「木が植えられたので、繋がりが出来てグリーンベリーにも行かれるようになりました。道を繋ぎたいと思います」という話をされた。僕はフィンレーのように温室の中に木があるわけではない事と、木を持ってきてしまった事でフィンレーの温室への道が消えてしまう様な事はないのかと尋ねた。
『木は大まかな目印です。前回のような出来上がっている道を消し去るような時にははっきりとしたものが必要になりますが、新しい道を作る時はそれを目印にして、実際にどこに繋ぐかはその後になります。今回は木のある敷地内の温室に繋げさせていただきますね』
そうしてその翌日温室に行ったらティオ達がいたのだ。勿論蜂蜜パーティをしたよ。残念ながら他の妖精たちは見る事は出来ないけれど、それでも温室の中が少しキラキラしているような気がしたし、出したミルクカップはコロコロと転がっていた。ハリーのように妖精の加護があるわけではないから契約をしていない子たちの姿を見る事は出来ない。でも少しでも感じられたらいいなって思った。
フィンレーはあの騒動の後も、結局強い結界を弱める事はしなかった。
そしてグリーンベリーもお祖父様は同じ結界を屋敷の敷地に張って下さった。新興の領に探りを入れる様な者は少なからずいるらしい。別に探られて困るようなものはないけれど、やはり知らない人に生活を覗かれるような事はされたくないし、使う事もないだろうけれど、あの加護については隠す事はもう無理だけど、公にする事も考えていないので、それも含めて結界はあった方がいいのかなって思った。
兄様は「余計なものに煩わされる事がない方がいいからね」ってリヒトにある執務用の屋敷にも同じように結界をかけるようにお願いをしていたよ。
そんな感じで十の月も終わって、十一の月。
ウィルとハリーが一年早く学園に入る為の試験を受けた。試験の結果は翌日に出る。二人は来年から王都の学園に通う事になったと報告が来た。兄様は今フィンレーの父様のお仕事のお手伝いをしている。最初の大きなお手伝いは冬祭りになりそうだって。
二人の合格祝いを何にしようかなって話をしていたら。
「来年はエディを独り占め出来なくなりそうだな」
「え? ひと、ええ?」
「だって二人と一緒に学園に通うんでしょう? 朝食も、夕食も、基本は4人になる。ちょっと残念」
兄様はそう言ってクスリと笑った。
「…………でもご挨拶をするのは、兄様とだけですよ」
そう。婚約者になっても特に何も変わらないって思ったんだけど、兄様から提案があったんだ。せっかく皆に認められて婚約者になったんだから、婚約者らしい事をしようかって。
婚約者らしい事ってなんだろう? って思ったら朝の口づけとおやすみの口づけをしてほしいって。
最近はね、ちょっと、自然にっていうか、何となくそんな感じっていうか、口づけをする事が多くなってきたかなって思ってはいたんだ。初めて口づけをしたのは兄様が結婚を申し込んでくれた時なんだけど……。
それから少しずつそんな風になる事があって、嫌じゃなくて、えっとその……
だからね、最近はお部屋に兄様が来てくれて「おはよう」って口づけをしてからダイニングに下りて、夜は食後に少し話をしたりした後に、部屋まで送ってくれて「おやすみなさい」って口づけをする事が日課になってきているんだ。
「そうだね、私とだけの特別な挨拶だからね」
そう言って兄様は頬っぺたに掠めるように口づける。
「ふぁ!」
「ふふふ、こういうのも慣れてね、エディ。二人が来るまでに。そんな声を聞かせたらダメだよ?」
楽し気にそう言って笑う兄様に「頑張ります」って言ったら兄様は今度はギュッてしてきた。そして僕はそんな兄様にやっぱり顔を赤くしてしまったんだ。
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はい、甘い~
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