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第9章   幸せになります

367. 僕を支えてくれる人たち

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「エドワード、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「あ、はい」

 父様は笑いながらそう言って言葉を続けた。

「書簡でも知らせた通りにグリーンベリー伯爵家で雇い入れる人材についてだが、フィンレーから移る者は大体決まってきた」 
「ありがとうございます」
「エドワードの所で働いていた者はほぼそのままグリーンベリーへ行くという事で本人たちからも了承を得ているよ。マリーも、ジョシュアも、ルーカスも皆エドワードと一緒にと希望している」
「はい。ありがとうございます」

 それを聞いて僕は本当に嬉しくなった。そうなんだ。みんな一緒に行ってくれるんだ。

「その他にテオドールがしばらく付いて行ってくれる事になっている」
「テオが!」

 え、だって、フィンレーの執事なのに。

「エドワードが独り立ちをしたら戻って来ると言っている。自分は先生なので、生徒の事はきちんと見届けなければならないそうだ」
「…………そうですか。すごく有難いです」

 涙が出そうなったけれど、僕はグッとこらえた。テオが来てくれるなら本当に心強い。

「あとね、エドワードの友人や知り合いからも応募がきているよ」
「え!」

 僕はまたしても声を上げてしまった。知り合い? 友人?

「まずは隣のモーガン領のクラウス・モーガン子爵」
「クラウス君が!」
「ああ、彼は先日のスタンピードに参加をしてくれたミスリル隊十名と一緒にグリーンベリーへの移住を希望している。それから、スティーブ・オックス・セシリアン氏。ああ、スティーブ・セシリアン・ヴェリタ男爵だったね」
「ええ! だってスティーブ君は今回領を授かったのに」
「ああ、そこは私も確認をしたのだけれどね、オックスの隣の領だし、しばらくはそのまま祖父母に代行をしてもらう事になるか、セシリアン子爵家自体は領地がないのでご両親が面倒を見てくれることになるかもしれないと。嫡子の問題にしても弟もいるので心配はないとの事だったよ。まぁ、フィンレーは優秀な役人を一人失う事になりそうだが、子息が領地を得てという事であれば喜んで送り出してやらねばならないね」
「…………そうですか」
「後は、レイモンドのミッチェル君からも希望が来ているが、これは保留だ」
「ミッチェル君が……」
「嫡男のアシュトンが父上の所に入っているからね。ただ、ミッチェル君自体は三男なのでいずれはどこかに出る事を考えると……とは言われている。もう少し本人と話をして考えるそうだ」
「はい」
「後はエドワードは覚えていないかもしれないけれど、以前トールマン家主催の茶会で一緒になった子息でね。まぁ親御さんがちょっと問題があったのだけれど、代替わりした事と本人の資質がとても良くてね。ユードルフ家のブライアン君。彼は父上からも推薦があってね。かなり頭が切れるし、物腰も穏やかで、魔法も四属性を持っている。一度話をする機会を設けよう」
「はい」

 ブライアン様か、何となく分かるような分からないような……あ、でも何か教えてくれた子がそうだったのかもしれない。

「ああ、それからジョシュアはこの前スタンピードに参戦をした魔導騎士達と一緒に希望をしているよこちらはレイモンド家とも話がついている。ジョシュアの隊を魔導騎士隊に、クラウスとルーカスを騎士隊に出来ればと思っている。勿論フィンレーからも移動する者もいるので少し少ないが魔導騎士が25名。騎士が25名。とりあえずは50名の騎士隊でスタートになるだろう。その後は騎士養成所から受け入れたり、冒険者の中で使えそうな者がいないかも考えていくよ。それと、マークも移動を希望した。こちらはマークの下で育ったものがその後を継ぐ事になる。勿論マークの弟子だからね。とても腕はいいから安心していいよ」
「マークまで……」
「ふふふ、新しい伯爵家を美しい花々で飾りたいそうだ。エドワードは本当に皆に愛されている。シェフも移動を希望したがそれは止めさせてもらったよ。母様が悲しむからね。その代わりその下の者がそちらへ行く事になった。厨房関係についてはその者とシェフがきちんと整えるそうだから任せたよ」
「はい……ありがとうございます」

 僕の目にはしっかりと涙が浮かんでしまった。
 すごいな。何にもなかった僕の領がこんな風に形になっていくなんて。本当に凄い事だと思う。

「ありがとうございます。父様。本当に、お任せをしてしまって申し訳ございません。でもすごく嬉しいです」
「ああ、泣くんじゃないよ。私がアルフレッドに怒られる。それにこれはエドワードの力だよ」
「僕の?」
「ああそうだ。エドワードが蒔いてきた種がしっかりと芽吹いて育ってきた証拠だ。命じられてついて行くのではなく、皆がついて行きたいと願っている。それはとても素晴らしい事だよ。良い領になるといいね」
「はい。頑張ります。一生懸命勉強もします」
「うん。まぁ、いずれはこちらへ戻って来る事にはなるけれどねそれはまだ先の話だし、しばらくはアルフレッドと一緒に一から領を育ててみる事も良い経験になるだろう。さて、それでもう一つ。これはすぐに決めるつもりはなかったんだけれどね」

 そう言って珍しく父様が困ったような顔をした。

「父様?」
「ああ……ウィリアムとハロルドに今後の事を話すと言ったのを覚えているかい?」
「はい。勿論です」
「うん。それでね、今すぐという事ではないが、起こりうる可能性として、二人のどちらかが、アルフレッドとエドワードの養子となり、その次のフィンレーを治める者になって、もう一人はエドワードの弟のまま、グリーンベリー伯爵家を引き継ぐようにする事を考えていると。その為に領主教育を勉強していく事になると伝えたんだが……」
「はい……」
「その場でハロルドがエドワードの後を継ぐと宣言をした」
「ハリーが」
「自分は土魔法を持っているし、今現在も温室の面倒をみたりしていると。新しい領がこれからどのような事をされていくのかは分からないけれどきちんと勉強をして君の後を継ぎたいそうだ」
「……そう、ですか。えっとウィルは……」
「もう少し考えさせてほしいと言っていたよ。こちらとしても早い者勝ちのようにするつもりはないし、その……まぁ、あ~~~未来はどうなるのかは分からないからね。勉強はしていくという事でこの場は収めた。一応そのような事があったと伝えておこうと思ってね」
「分かりました。ありがとうございます」
「うん。ハロルドは妖精の加護の事もあるし、色々と思い詰める様な事もあるからね。気を付けて見ていってやらなければと思っているよ。今は報告だけだ。来年は一緒に学園に通う事になるし、エドワードも気にかけてやってほしい」
「分かりました」

 僕はコクリと頷いた。

「でも、そんな風に思ってもらえるのはやっぱり嬉しいですよ」
「ああ、そうだね」

 父様が苦笑いをしながら返事をした。

「とりあえず、婚約式の招待状を送ったよ。もう返事が来はじめている」
「わぁ! そうなんですね」
「早いね。何だか本当にあっという間に時間が過ぎて行く感じだ」
「はい」

 それは本当にそう思う。

「あの、父様。領地経営の事も色々と勉強をしたいと思っています。やりながらになる事も多いけれど」
「ああ、そうだね。まぁ領主教育に関してはアルフレッドにもしっかりと伝えてあるからね、後は隣にも父上がいらっしゃるので聞いてもいい。勿論私を頼ってくれるのも嬉しい」
「はい。よろしくお願いします」
 
 そう言って僕と父様は顔を見合わせて笑った。
 何が出来るかな。どんな事をしたいかな。何を領の目玉にしていけばいいのかな。そんな事を考えながら僕は、一足先に領地を立ち上げたルシルとも話をしたいなって思った。

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