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第9章   幸せになります

356. 発表の翌日

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 発表の翌日、僕は学園をお休みした。
 今回の発表は爵位の事だけでなく、領地替えを伴うものもあって、王国の中が大きく変わる感じだったんだ。
 それでなくてもルシルと僕が学生でありながらいきなり伯爵位を授かって、しかも領地まで与えられるって言うのは王国としても初めてで、学園内でも大変な事になるのではないかと思われた。
 もっとも発表から十日後には叙爵の式典があるからその準備も色々とあるしね。兄様は式典の翌日まで休んでしまえばいいよって言っていたけれど、式典の前には皆とお話もしたいし一度は行こうかなって思っている。それにルシルの事も気にかかるし。

「ルシルも休みを取らせる事にしたよ。平民から伯爵家の養子になった時でさえ、かなりのやっかみはあったんだ。それが今度は自身が伯爵で、しかも領地持ち。やはり面白く思わない者もいる。ただ、砂漠化をしていて、しかも色々と曰くのあるハーヴィンという事で、【光の愛し子】のお手並み拝見と思っている者もいるだろうね」
「そんな……」

 ああ、嫌だなそんなの。でもきっと僕に対してだってそう思う人はいるだろう。だけどそれは仕方がない事だ。知らない人に何かを言われても気にしたらいけない。きちんと一つ一つ、自分で形にしていけばその人たちではなくても、周りからきっと認められていく筈だから。
 そう言うと兄様は「さすがエディ」と言って笑った。僕はちょっとテレッとしながら「頑張ります」と言った。

「ルシルの周りを固める者はニールデン公爵とメイソン伯爵が関わる事になっている。後ろ盾としてその二家がつくのは心強いと思うよ」
「はい。そうですね。というか、ルシルは伯爵位と領地の拝領を受ける事を決めたのですね?」
「ああ、そうだね。そのようだ」
「ではシルヴァン様の方は」

 どういう意味か分からないけど、ついて来ないかって言われたんだよね?

「うん。それはね、マーティンとロイスが手を回してくれる事になったんだ」
「そうなのですね」

 兄様はあの話をお二人……多分側近の皆様にお話ししたのかな。でもどうしてマーティン君とニールデン様なんだろう? 

「エディ、ものにはね適材適所っていう事があるんだよ。私が殿下にこの前の話をしてもおそらくはあまり響かない。けれどあの二人だときっと心に響くと思うんだよ」
「そう、なんですね……。ルシルがよく眠れて、きちんと自分がどうしたいのか考えられるよう願っています。初めて会った時は本当にビックリして、関わらないようにしようとか、何を言っているのか分からなくて怖いと思った事もありましたが、彼はとても頭の良い、人の心をちゃんと分かる事が出来る人だと思います。そして、せっかくこの世界に来たのだから、小説とは異なった形だとしても、幸せになってほしいです」
「ああ、そうだね」

 
 あれこれと話をしてぎりぎりの時間になってしまい、兄様は馬車ではなく転移で王城へと向かった。申し訳なかったけれど、僕はルシルの事を知れて良かったと思った。
 それから僕は自分の部屋で、今回の領地について、王国の地図を開きながら確認をする事にした。

「ハワード先生が侯爵になって、領地替えでフィンレーと母様のご実家のランドールとの間に入って、ハワード先生の領は子爵領だったから少し大きくして伯爵領として僕の領地になって、その隣の公爵領がフィンレーの公爵領で、南の森の近くにある元べウィック領がシルヴァン殿下の公爵領で、北の森の近くの元オルドリッジ領がスタンリー家の公爵領かぁ」

 一応フィンレーもスタンリーも公爵位だけで、公爵領に関しては領地替えは出来ないからと発表前に辞退をしたらしいんだけど、公爵領がスカスカになっているのは王家としても体裁が悪い……らしい。本当はフィンレーとスタンリーに北と南の森の近くの領に入ってほしかったみたいだけど、父様はハワード先生の隣ならって……一応そこにからも南の森は近いしね。それに要の所は直系の公爵家がいいって事で、臣籍降下されるシルヴァン殿下の領に決まったみたい。そして、さらにびっくりしたのは、フィンレーの公爵領にはお祖父様が領主代理としていらっしゃるんだって! 僕のお隣の領がお爺様。なんだかすごく安心。
 
 ちなみにクラウス君のモーガン領も南に少し広がる事になった。この領地の侯爵家は僕の領も広がるから北と西側を減領される事になってしまったんだよね。これだけ沢山の事が起きたにも関わらず、一度も、何もしなかったんだって。それで爵位はそのままだけど領地を減らされてしまったらしい。 
 そういう領は他にもあって、粛清とまでは行かなくても、領地を減らされたり、小さな領地に領地替えになった。
 ハワード先生の新しい領地もそういう所だ。その伯爵家はやっぱり爵位は変わらないけど領地替えでもう少し小さな所になったみたい。
 何だか難しいなって思うけど、自分の所だけ無事ならいいっていうのは違うかなって思ったよ。もっともそれは一歩間違えると王国の独裁になるから、違う時には違うって言えるような事も必要だよね。

「ええっと、あ、エリック君の領も領地替えになったんだ」

 これは実は内密に王国側が打診をして、マクロードが挙手したらしい。マクロードは西の国の国境でレイモンドのお隣なんだけど、旧ディンチ家とその隣の侯爵家が降爵と減領された所が王国管理領地になっていて、港があるからきちんとする事になったんだって。それで今回の叙爵、陞爵、褒賞の対象で伯爵位以上の所に打診があってエリック君の所になった。領地替えは大変だけど、海沿いで港があるっていうのは重要だからね。それで、減領されていた旧ディンチはそのままで、伯爵家になった侯爵家は旧マクロードの半分弱を、残りはレイモンド侯爵家のものになった。空いた元侯爵家はその三分の二がマクロードに、三分の一がお隣のモーリスに加えられた。

 それから、スティーブ君の祖父母がいるオックス領は自領の隣の管理領だった子爵領を取り込んで伯爵家へ。さらにオックスの隣にあった男爵領がスティーブ君が拝領する領地になった。
 トーマス君のカーライルも自領の北側の管理領を拝領して伯爵家になったし、唯一空いているニールデンとシルヴァン殿下に挟まれている公爵領と隣り合っている子爵領をレナード君が拝領する事になっているから、恐らくは次の侯爵家はトールマンじゃないかって言われているらしい。

 その他にも勿論領地を拝領した人はいて、粛清やべウィック家のように自ら爵位を返上した所もあって、増えてしまった管理領には、かなりの数の新しい領主が決まった。
 しばらくは落ち着かないかもしれないけれど、皆でもっといい国に出来たらいいねって、夜になってタウンハウスに戻ってきた兄様に言ったら、兄様は「皆がそう思ってくれるのが一番だけどね」と言って笑った。

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分かりづらいですよね~。
そのうち地図を出します~~( ;∀;)
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