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第9章   幸せになります

334.夕食後のお茶会

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 西の国の使節団が来ると言っても今回はシルヴァン殿下には特に関係はなかったようで、その側近である兄様が忙しくなってしまう様な事はなかった。
 あの忙しさは本当に異常だったんだと改めて思うほど、朝も晩も一緒に食事をして、他愛のない話ができる。

「学園の方は変わりはなかった?」

 夕食後、紅茶を飲みながら、兄様が口を開いた。

「はい。久しぶりに皆と沢山話をしました。スタンピード後の平民街の様子とかも少しだけ聞きました。あ、あと、魔石とかの話も」
「そう。平民街の方はもうほとんど修復は終わっているんだよ。幸い街の中というよりは少し離れた所に降りてくれたのと、土魔法を使える者が地下に避難場所を作ってくれたのも良かった。城外に出てしまった有翼の魔物たち数はそれほど多くはなかったし、警護する騎士達の数も多かったからね。ワイバーンが城外へ出てしまっていたら被害が広がったかもしれないけれど、エディの友達も一体落としてくれたみたいだしね」
「そうみたいですね。その時の話も聞きました。僕が実際見たのはマルコシアスの時でしたが」
「私も見たよ。あれは凄かったな。父上も言っていたけど、対空魔の魔道具か、何か新しい魔法が出来ないか本気で考えるみたいだよ。黒竜にワイバーン、そしてマルコシアスだったからね」

 兄様が苦笑を浮かべた。うん。それは本当に大変だったと思う。空を飛ぶ魔物に対しても有効な魔法や魔道具が出来るといいな。

「それにしても魔物から魔石が取れるんですね。初めて知りました。魔石って魔力が多く宿っていような鉱石を掘り出すのだとばかり思っていたから」
「ああ、そうだね。まぁそれも正解なんだけどね。魔物の中には魔石を身体の中に持っているものがいて、冒険者たちは討伐した依頼料や手に入れた魔物の魔石や素材を売って生活をしている」
「はい。でもそれがスタンピードで沢山集まったっていうのも何だかちょっと複雑な気持ちですけど、それで戦った人達にきちんとした報奨が出るならば良かったです。亡くなった方もいらっしゃると思うので」
「ああ、そうだね。命を落とした者達へは手厚くしてほしいと思うよ」

 あれだけの魔物が出たのだ、勿論皆大変だったと思うけど、第一隊の人達は特に大変だったと思う。

「あの……兄様、父様は公爵になるのでしょうか?」
「ああ、その話も出たの? どうだろうね。本人にその気がないみたいだからね」

 兄様はそう答えながらクスリと笑った。

「そうなのですか?」
「うん。またそれに関する事は、いずれ父上から話があると思うよ。でもとりあえず今は西の国との交渉かな」
「え? 交渉? 調印をするだけではないのですか?」

 僕がちょっとびっくりした声を出すと、兄様がコクリと頷いた。

「最初にきちんと取り決めをしておかないといけない部分もあるからね。あちらが調印に際して提案してくる事項と、こちらが提案をする事項が全く同じという訳には行かないだろうし」

 ああ、それは確かにそうだ。あの行方不明の事件の時も、西の国が絡んでいるのではないかという声が上がっていた事を思い出す。

「前にも少し話した事があったと思うけど、西の国の人達は魔力のない人がほとんどだから、やはりお互いに共通の決まり事を作る必要がある。まだもうしばらくは父上たちは忙しいかな」

 西の国は魔力を持つ者を国で保護しているとダリウス叔父様も仰っていた。
 自由に行き来が出来るようになれば、確かに色々と困った事も起きそうだよね。しっかりとした約束事を決めておかなければいけない。

「そうですね。父様はお疲れ様ですね」
「ふふふ、そうだね。ところでエディ雪も無くなって来たし、週末にでも乗馬をしない? 調印式が終われば西の国との交流が本格化して、また思わぬところで忙しくなってしまうかもしれないから、どうかな?」

 兄様がにっこりと笑った。

「あ、はい。えっと、お願いします」

 返事をしながら思わず顔が熱くなる。うん、春になったらってお約束していたものね。
 あのグローブを嵌めて乗馬をしたら、何か分かるかな? って思っていた事もあったけど、もう、け、結婚のお約束もしたしね。
 
「ふふ、良かった。良い天気になるといいね」

 そう言って紅茶を口にした兄様を見つめながら、僕は「はい」と頷いて、シェフがお茶請けに出してくれた、アーモンドプードルをたっぷり使ったクッキーを口に入れた。


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いつでも甘い( ´ u ` )

 

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