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第8章  収束への道のり

274. 呪術師のこと

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 ルシルと兄様と一緒に話をしてから数日が経った。
 結局分からない点が多かったんだけれど、それをきちんと上げられたのも僕にとっては良かったし、新しい発見もあった。

 小説にマリーは居なかった。お祖父様も居なかった。勿論双子たちも存在していなかった。
 なんていう大きな違いだろうって思ったよ。だってマリーが居なかったら僕は本当には死んでしまっていたかもしれないもの。いきなり父様が助けに来てくれても絶対に信じられなかったと思う。

「どうなさったのですか? エドワード様。何かお困りの事でもございますか?」

 僕があんまりマリーの事を見るので、この所マリーは少し困ったような顔をして僕を見ていたんだ。そしてついに問いかけてきた。

「ううん。ごめんね。ハーヴィンの話をしたから何だかつい。マリーが居なかったら本当に僕は何も出来なかったなって」
「ふふふ、そんな事はございませんよ。小さなエドワード様のお世話をさせていただけてマリーはとても幸せでした。当主様の旧友の孫娘でしたから他の皆様も強くは言えなかったのでしょうし、いざとなれば直談判もするようなお転婆でしたからね、気が強い孫娘を可愛がってくれた祖父のお陰です」
「マリーのお祖父様のお陰で僕はマリーに会えたんだね。確かイースティン子爵家はハーヴィンの隣領だものね」
「はい。小さいながらも古くからある家で、気難しいハーヴィン卿は祖父とは本当に仲が良く、私も幼い頃に何度かお会いした事があります。私にとっては少し怖いけれどお土産をくれるお祖父様のお友達だったのですよ。ですから娘の所に子供が生まれて手が足りなくって来ているようなので行ってみないかと声をかけていただきました」
「そうだったんだ。ふふふ、こんなに一緒に居るのに初めて聞いた」
「そうですね。お嬢様の侍女の一人というお話だったのですが、すぐにエドワード様の専属に変更させていただきました」

 僕はマリーと一緒に笑った。マリーが何度か会ったと言う気難しいハーヴィン伯爵には僕は一度も会った事がないけれど、マリーを雇ってくれた事はすごく感謝をするよ。
 そんな話をしていると僕の机の上に兄様からの書簡が届いた。

「では、失礼いたしますね」
「うん、お話ありがとう」

 マリーが部屋から出て行って、僕は兄様からの書簡を開いた。
 そこに記されていたのはお祖父様から呪術師についての話が聞けるという内容だった。

「呪術師……」

 胸がツキンと痛んだ。妖精の力を奪い取って使い潰した術。そんな恐ろしい術をどうして考えられたんだろう。
 ぜひ一緒に聞きたいと、お祖父様と兄様のご都合に合わせますと返事を出すと、またすぐに返ってきた。

「え? 今から?」

 思わず小さく声を出して、僕は準備をすると、マリーに言付けをして、ルーカスとジョシュアと一緒にお祖父様のお屋敷に転移をした。


-*-*-*-*-


「ご連絡を頂きまして有難うございました」

 お祖父様のお屋敷に到着するとお祖母様が出迎えて下さった。

「まぁまぁ、急に呼び出してごめんなさいね。応接室の方を準備させているみたいなの。難しいお話みたいだけれどお菓子も食べて行って頂戴ね」
「ありがとうございます」
「エディ」
「アル兄様」

 お礼を言ってそちらへ向かおうとすると後ろから兄様の声が聞こえてきた。
 僕たちはそのまま執事に案内をされて応接室へと向かう。

「失礼致します。アルフレッド様とエドワード様がいらっしゃいました」
「うむ。中へ」
「失礼いたします。ご連絡ありがとうございました」
「急な呼び出しだったが、早めに伝えておいた方がいいと思ってな。かけなさい」
「はい。失礼いたします」

 僕たちが椅子に座るとお祖父様はすぐに遮音魔法をかけた。

「結界は張っているが念のためにな。先日の話。賢者やデイヴィット達とも話をしたが、妖精の線から辿っていく事はやはり難しい。まず妖精が見えると分かっている者自体が稀だ。加護については申告の義務はないので妖精の加護を受けている者がどれほどいるのかも実際には分からない。目に見えないものを使う事は出来ない。だが、呪術師に詳しいものと話をする事が出来た。呪術師は目に見えぬものも術に使うと」
「……どういう事でしょうか?」
「集めるらしい」
「目に見えないものを集めるのですか?」
「目に見えなくとも術は使える。術で罠を張り捕らえる。捕らえた事は術が知らせる。それを使う」
「あ、あの! 不勉強で申し訳ございません。。魔法と呪術はどう違うのでしょうか」

 僕の言葉にお祖父様は小さく頷いて口を開いた。

「元は同じものだったと言われているが、魔法は己の魔力を使う。呪術は他の魔力を使うと言われている。呪いだ。呪いは返しがあると言われて禁術となった。その返しを他者に向けて術を使う。私も詳しくは学ばなかったが、魔法では成しえなかった力を手に入れるものと言われていたが、人としての力を超えるものとしていつしか忌嫌われるものになった」
「呪い……それが今回使われているのでしょうか。あの、呪いの『首』は封じられたと言うのに、呪いを使って何かをしようとしている者がいるのでしょうか。それは『首』とは関係のない事なのでしょうか」

 立て続けの質問に兄様が僕の名前を小さく呼んで、僕はハッとして「すみません」と言った。

「いや、疑問に思う事はよい事だ。呪いの『首』との関係は現時点では分からん。だが呪いの『首』は現在確かに封印をされている。消息不明者が出始めた時期には封印されていたと考えられる。封印された事を見てもあれが「呪い」の『首』だった事は間違いなかろう。名を入れて封印をしているからな」
「はい……」

 そうだ、封じる時にきちんと『首』の名を入れて封印をしたんだ。それが出来たって事は、あの『首』は<呪い>だった事は間違いないんだ。残りの『首』は<死>と<絶望>。
 魔法使いが封じたという<死>の『首』と、王家の者が封じたという<絶望>の『首』。呪いとは関りが無さそうだけれど、だとすると今回の事件はまた違う類のものなんだろうか。
 いったいそれをしている呪術師? は何をしたくてこんな事をしているのか現時点では全く見えてこない。

「妖精が見えるものだけが妖精を捕らえられるわけではない事は分かった。捕獲をする術式は古くから伝わっているものらしいが、勿論どんな者にもそれを使えるわけではないという事も。捕縛の術式はやはりある程度の魔力量と知識を必要とするらしい。では現在その術式を扱う事が出来て、呪術を使う事が出来る者は、という話になるが、現在王国内では呪術師という言葉はあるが、それを実際に生業にしている者はおらん。禁術を含むからな。しかし、生業にはできなくとも、それを理論的には扱える者は居る。そしてあえてそう言った者を抱えていた家もあった」
「え……」

 ドクンと鼓動が鳴った。

「べウィック公爵家だ」

 
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お久しぶりに……(;・∀・) 
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