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第7章  厄災

210. 攻撃魔法とはじめまして

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それから再び魔法の授業を再開した。

次は基本の属性ではない魔法。僕は闇魔法が発動出来る事は判っている。
今の所使える魔法は防御壁と保存魔法。攻撃魔法は取得をしていない。

「闇魔法についてはまだ分からない部分があるが、攻撃としてはダークショットという闇魔法の魔力を載せた礫を放つものや、ダークアローという漆黒の矢を放つ魔法、後はスティングシェイドと言って相手の陰から無数の槍を突き出すというものがある。その他にもダークミストっと言って、周りを漆黒の闇で覆ってダメージを与えたり睡魔の効果を付けたりするものなどもある」

なるほど、今は攻撃より防御のものを取得しているので、一つくらいは攻撃魔法を取得できないかなって思ってはいるんだ。魔素とか魔人の事を考えるとダークジェイル(闇檻)みたいな闇魔法で対象を縛りつけるみたいなのもいいかなって思うけど、はたして魔人がそれで捕まえられるのかって話だよね。う~~ん。

「攻撃性が高いのはスティングシェイドか、魔人の事を考えると先ほどエドワードが言ったようにジュエルで捕らえるというのも手かもしれんな。またはミストと合わせて使ってみるか」
「そうですね。ではこの3つの取得を目指します」
「うむ」

元々闇属性は基本の属性ではないのでそれほど多くは望めないかもしれないし、一日では取得は出来ないとも思っている。
お祖父様が書いて下さった魔法陣から魔法を解きながら自分のものにしていく作業はとても地味で根気のいる作業だ。そして元々持たないものを得ていくわけだから、体力も気力もかなり負担がかかる。

「今日はそこまで」
「……はい」

書かれていた術式を覚え込んで幾度も魔力を流してみたけれど、それが僕の中にとどまる事はなかった。
やっぱり新しい魔法の取得はそう簡単にはいかないな。

「魔力回復のポーションを飲んでおきなさい」
「はい」

お祖父様がそう言うとマリーがすぐに用意をする。

「ありがとうマリー」

僕はそう言ってポーションを口にした。

「やはり初めての魔法は中々一度では取得が難しいですね」
「うむ、術式を置いていくので一日に数回程度慣らしていきなさい。そちらの者が闇属性があるようなので付き添いを」
「かしこまりました」
「マリーよろしくね」
「はい」

ハリーは専属の魔法の先生がいるので、お祖父様の講義は見学だけだ。
今日はもうこれで終わりかなと思っているとお祖父様が別館の方を見た。
そちらから二人の人がこちらへやって来るのが見えた。
一人はブライトン先生だ。そしてもう一人は…………

「……来たか」

お祖父様がポツリとそう言う。え? という事は今日はブライトン先生が来ることになっていたの?
知らなかった。

ブライトン先生は立ち止まってお祖父様にお辞儀をした。

「ご無沙汰しておりました。本日はまた勉強会の機会を頂きましてありがとうござます」
「うむ」
「エドワード様、お久しぶりです。お変わりありませんか?」
「はい。ブライトン先生もお元気ですか?」
「はい。お陰様で。本日はかねてよりこちらの勉強会に参加をしたいと言っていた友人を連れてまいりました。フィンレー侯爵様にはすでにご了承を頂いております」
「そうですか。エドワード・フィンレーです。よろしくお願い致します」

ブライトン先生のななめ後ろに立っている長身の人は少しだけ緊張をしたような顔をしていた。
あれ? 初めての方なんだけど、何となく知っているような気がするのは何故なんだろう。誰かに似ているのかな。
その人は僕の顔とお祖父様の顔を見てから優雅に頭を下げた。

「ご挨拶失礼いたします。レイモンド伯爵家長男のアシュトン・ラグラル・レイモンドと申します。かねてよりこちらの勉強会に参加をさせていただきたくお願いをしておりましたが、ようやく叶う事が出来ました。どうぞよろしくお願い致します」

!!!! なんと、マーティン君とミッチェル君のお兄様だった!
どこかで会ったような気持ちがした筈だよ。うん、そう言えばやっぱり似ている。ミッチェル君よりはマーティン君に似ているかな。マーティン君とレイモンド伯爵を足したような感じかな。ちょっと違うかな。
マーティン君は濃い茶色の髪に薄いブルーグリーンの瞳で、ダニエル君とはまた違った感じの策士な感じなんだけど、この人はもう少し骨格がしっかりしていて、でもレイモンド伯爵のようながっしりしたタイプではない。
だけど人の目を引く独特の雰囲気がある華やかな人だ。茶系のバイオレットピンクの髪がこの人には良く似合っている。瞳は伯爵よりも濃い目のサファイアブルーだ。

「うむ。カルロス・グランデス・フィンレーだ。レイモンドの嫡男だな。無理な魔法は禁ずるが、子供たち同様何か伝われば嬉しい」
「ありがとうございます」

アシュトンさんはすごく嬉しそうにそう言った。

「こちらの話は聞いているかね」
「ある程度は」
「うむ。では今の所ある理由から学園に通う事を止めている孫に学園での実技を復習しながら講義をしているところだ。騎士団に入っているお二方には退屈かもしれないが、よろしく頼む」
「はい」

ニッコリと笑って返事をしたブライトン先生に僕もニッコリと笑った。

「エドワード様、今日は何をされたのですか?」
「今日は休暇前の復習と後期からの実技について。本来であれば基本の属性で行うのですが、他の属性も取りたいので。土と水の連続と転移を加えたものを少しと、闇魔法の攻撃系を取得途中です」
「……それは、随分と高度な」
「え?」

 小さなブライトン先生の言葉を聞きなおそうとした途端、割り込むようにアシュトンさんが口を開いた。

「すみません。エドワード様は高等部の一年ですよね? ミッチェルと同じ」
「はい。ミッチェルさんとは仲良くさせてもらっています」
「それにしては小さい。大丈夫ですか? 身体が弱いとか?」
「………………」

ええっと……

「アッシュ!」

ブライトン先生が焦った声を出す。

「ああ、失礼。心配だっただけです」
「そ、そうですか。ありがとうございます。ええと、体力はまぁ、身体に見合ったものですが、魔力量は大きめです。ご心配頂きありがとうございます」
「……なるほど。失礼いたしました。さすがフィンレー侯爵家の方だ。よろしくお願いします」

何と言うか、ミッチェル君以上に自由な感じだな。

「お二方とも、せっかくなので今日は孫たちに攻撃魔法の手合わせを見せてもらえませんか?」
「手合わせですか?」
「さよう。エドワード、先ほどの水魔法の実技を二周ほど出来るか?」
「はい。大丈夫です」

僕は頷いて立ち上がった。

「3種、強め、転移はランダム、2周だ。それ以上は不要」
「分かりました」

僕はそのまま少し先の所で大きく息を吸って、吐いた。

「始めます」

その瞬間ウォーターバレット(水弾)とウォーターカッター(水刃)とウォーターランス(水槍)を放って短い転移をするという攻撃を2周行った。

「……2周です。ありがとうございました」

「うむ。取得から続けてだったので座って休みなさい」
「はい。失礼いたします」

言われた通りに僕は用意をされている簡易のテーブルセットにハリーと並んで腰かけた。

「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

僕たちが小さくそう言っているとお祖父様が再び口を開いた。

「これが午前中に行っていたものの一部だ。孫はまだ攻撃魔法が未熟な所がある。いずれは相手を入れての手合わせという形も取りたいと思っている。やってみたいと思えるような手合わせを見せてはもらえないだろうか。ここは大きな結界を張っているので大きな魔法の使用は禁じる。高等部二年までのレベルで、対戦ではなくあくまでも手合わせ。どうだろう」
「やらせていただきます」
「私も」
「ありがとう。エドワード、そしてハロルドも騎士団の方の手合わせをよく見ておきなさい」
「はい!」


お祖父様は練習用のそこに軽い結界を張った。

「一応この中で。くれぐれも、高等部二年。対戦ではなく手合わせだ。よろしいな」
「はい」

こうして現役騎士たちの初級魔法程度による手合わせが始まった。



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伸びちゃった(*ノ>ᴗ<)テヘッ.

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