91 / 335
第7章 厄災
【お気に入り数8000御礼】- 恋バナ
しおりを挟む
「なんかさ……」
「うん?」
「違うよね?」
「何が?」
「ジーンとトム」
ミッチェルの短いその言葉にスティーブは「ああ」と小さく笑った。
まさかバカンス明けにまとまってくるとは思っていなかったが、まぁ、気にしているような視線を向けられるのも面倒だなと思っていたし、自分はそんなつもりもなかったからそう言っただけだったが、それで事態が変化をしたならば良かったのではないかと思う。もっとも主にトーマスの様子を見ていれば、まだお互いに告白した程度だとは思うが。
「そうだね。休暇中に遊びに行って思っていた以上に意気投合したんじゃないかい?」
「ええ~……そう言う感じじゃないんだよね。なんかさ~」
「いいじゃないか。ギスギスしているよりも仲がいい方が」
そう言うとミッチェルは少し意外そうな顔をした。
「それでいいの? スティーブは」
「え?」
今度は私が驚く番だ。一体彼は何を言っているんだろう。
「どういう事だい?」
「ああ……ええっと、その」
いつもはハキハキと自分の意見を言う彼にしては珍しく言い淀んでいる。よほど話しにくい事なのかそう思って私は遮音の魔道具をコトリと置いた。
残念ながら私は今の所、遮音の魔法を使えない。転移はものに出来たがどうも遮音はうまくいかずに小さな魔道具を持ち歩いている。目の前の人との会話を聞こえなくするという範囲の小さなものだ。
「ああ、ありがとう。えっとさ、ズバッと言っていい?」
うん。これがいつものミッチェルだな。
「どうぞ?」
「スティーブが好きなのはトムじゃなかったの?」
「…………は?」
「僕とルシルはそう思っていたんだよ」
「ルシル? え? 何? どういう事だい?」
そう、なぜそこにルシルが出てくるのか分からない。
顔にそう書いてあったかのようにミッチェルはうんうんと頷きながら再び口を開いた。
「きっかけはさ、僕とクラウス」
「は?」
「ルシルがね、僕はツンデレで、クラウスの事が本当は好きなんじゃないかって思っていたけど何か違ったみたいって話して来てさ。そういう事を考える子だったんだなって、ちょっと意外で打ち解けたんだ」
何というか、さすがミッチェルと言うべきなのだろうか。それで打ち解けるというのもすごい。
「ほら、ぼく初等部の頃、ルシルのお目付け役みたいな事を頼まれたって言っていたじゃない? まぁ実際はあの子の方がよほど処世術があったから僕が何か手助けをするような事もなかったし、大体僕に手助けをさせるっていうのが無謀だったっていうかさ」
ああ、確かに。それは私も少しだけそう思ったんだ。後ろから手を回して動くようなタイプではないなと。
「でね、クラウスの事は何て言うかでかい弟みたいな感じでさ。そういう感情はないって言ったらそうなんだ~って。それで何となくそれからそんな話もするようになってさ。エディの所に一緒に行っているしさ、結構スティーブは面倒見もいいし、トムもなついている感じだったからてっきりそうかと思っていたんだよ。そうしたらさ、なんかすごく普通にその場所にジーンがいるじゃない? ルシルはまだ見ていないから話も出来ないしさ。それなら直接聞いちゃおうかなって」
そう。これがまさしくミッチェルだよ。
考えたら行動。それが困った感じにならずに周りにスルンと受け入れられているのが、きっと彼の特質なんだろうな。
「ジーンとトムの事がどうなっているのかは私には分からないよ。元々ジーンはトムに対してはエドワード様とはまた違った感じで自然に庇っているような所もあったしね。何ていうかな。可愛い枠的な感じで」
「可愛い枠!? 」
ミッチェルはそう言って小さく吹き出した。
「すごい! 合っている。うん、そうだね。まさしくそう。スティーブってさ、こうなんていうか物凄い硬い感じかと思うと、綺麗なものを集めるのが好きだったり、すごく柔軟で面白いよね。そうかぁ、可愛い枠かぁ。合ってる。確かに」
そう言って小さく笑い続けるミッチェルを見て、ちなみに君は残念美人枠だけどねと胸の中で付け加えた。
「そっかー。まぁジーンはエリックとは違った感じの華やかさがあるけれど、なんて言うか懐にいれたものを大事にする感じがするよね。ああ、うん。楽しい。ルシル早く来ないかな。観察して話がしたいなー。ねぇねぇ、じゃあぶっちゃけついでに聞いちゃうけど、スティーブは好きな子はいないの? エディ?」
「エドワード様は私にとっては父の雇い主のご子息ですよ。とても可愛らしくて、素直で誰からも愛される方だと思いますが、私にはあの方と争ってまで手に入れたいと思えないですね」
「…………なるほど。レオンと一緒か。っていうかレオンの方がもう少しこじらせている感じかな」
ほんとによく見ているな。
「さて、どうでしょうね。というわけで、私は無関係ですのでミッチェルとルシルの観察対象からは外して下さい」
「そっかー。分かった。ありがとね。ふーん、ジーンとトムか。うん。なんかいい感じだね」
「あんまり騒いでは駄目ですよ。トムはエドワード様ほどではないですが、恥ずかしがり屋ですからね」
「はーい。うんうんスティーブはお兄ちゃん枠だったんだね」
「は?」
ニッコリと笑ってミッチェルは帰りの支度を始める。それに倣って私も魔道具をしまって帰り支度を始めた。
それにしてもまさかこのメンバーでこんな話が出来るようになるなんて。
「スティーブ、馬車廻まで一緒に行こうー」
そんな事を思いながら、私は残念美人枠のミッチェルと一緒に並んで歩き始めた。
-------------
あ、スティーブ×ミッチェルではないです。
ただの友人です。
念のため
「うん?」
「違うよね?」
「何が?」
「ジーンとトム」
ミッチェルの短いその言葉にスティーブは「ああ」と小さく笑った。
まさかバカンス明けにまとまってくるとは思っていなかったが、まぁ、気にしているような視線を向けられるのも面倒だなと思っていたし、自分はそんなつもりもなかったからそう言っただけだったが、それで事態が変化をしたならば良かったのではないかと思う。もっとも主にトーマスの様子を見ていれば、まだお互いに告白した程度だとは思うが。
「そうだね。休暇中に遊びに行って思っていた以上に意気投合したんじゃないかい?」
「ええ~……そう言う感じじゃないんだよね。なんかさ~」
「いいじゃないか。ギスギスしているよりも仲がいい方が」
そう言うとミッチェルは少し意外そうな顔をした。
「それでいいの? スティーブは」
「え?」
今度は私が驚く番だ。一体彼は何を言っているんだろう。
「どういう事だい?」
「ああ……ええっと、その」
いつもはハキハキと自分の意見を言う彼にしては珍しく言い淀んでいる。よほど話しにくい事なのかそう思って私は遮音の魔道具をコトリと置いた。
残念ながら私は今の所、遮音の魔法を使えない。転移はものに出来たがどうも遮音はうまくいかずに小さな魔道具を持ち歩いている。目の前の人との会話を聞こえなくするという範囲の小さなものだ。
「ああ、ありがとう。えっとさ、ズバッと言っていい?」
うん。これがいつものミッチェルだな。
「どうぞ?」
「スティーブが好きなのはトムじゃなかったの?」
「…………は?」
「僕とルシルはそう思っていたんだよ」
「ルシル? え? 何? どういう事だい?」
そう、なぜそこにルシルが出てくるのか分からない。
顔にそう書いてあったかのようにミッチェルはうんうんと頷きながら再び口を開いた。
「きっかけはさ、僕とクラウス」
「は?」
「ルシルがね、僕はツンデレで、クラウスの事が本当は好きなんじゃないかって思っていたけど何か違ったみたいって話して来てさ。そういう事を考える子だったんだなって、ちょっと意外で打ち解けたんだ」
何というか、さすがミッチェルと言うべきなのだろうか。それで打ち解けるというのもすごい。
「ほら、ぼく初等部の頃、ルシルのお目付け役みたいな事を頼まれたって言っていたじゃない? まぁ実際はあの子の方がよほど処世術があったから僕が何か手助けをするような事もなかったし、大体僕に手助けをさせるっていうのが無謀だったっていうかさ」
ああ、確かに。それは私も少しだけそう思ったんだ。後ろから手を回して動くようなタイプではないなと。
「でね、クラウスの事は何て言うかでかい弟みたいな感じでさ。そういう感情はないって言ったらそうなんだ~って。それで何となくそれからそんな話もするようになってさ。エディの所に一緒に行っているしさ、結構スティーブは面倒見もいいし、トムもなついている感じだったからてっきりそうかと思っていたんだよ。そうしたらさ、なんかすごく普通にその場所にジーンがいるじゃない? ルシルはまだ見ていないから話も出来ないしさ。それなら直接聞いちゃおうかなって」
そう。これがまさしくミッチェルだよ。
考えたら行動。それが困った感じにならずに周りにスルンと受け入れられているのが、きっと彼の特質なんだろうな。
「ジーンとトムの事がどうなっているのかは私には分からないよ。元々ジーンはトムに対してはエドワード様とはまた違った感じで自然に庇っているような所もあったしね。何ていうかな。可愛い枠的な感じで」
「可愛い枠!? 」
ミッチェルはそう言って小さく吹き出した。
「すごい! 合っている。うん、そうだね。まさしくそう。スティーブってさ、こうなんていうか物凄い硬い感じかと思うと、綺麗なものを集めるのが好きだったり、すごく柔軟で面白いよね。そうかぁ、可愛い枠かぁ。合ってる。確かに」
そう言って小さく笑い続けるミッチェルを見て、ちなみに君は残念美人枠だけどねと胸の中で付け加えた。
「そっかー。まぁジーンはエリックとは違った感じの華やかさがあるけれど、なんて言うか懐にいれたものを大事にする感じがするよね。ああ、うん。楽しい。ルシル早く来ないかな。観察して話がしたいなー。ねぇねぇ、じゃあぶっちゃけついでに聞いちゃうけど、スティーブは好きな子はいないの? エディ?」
「エドワード様は私にとっては父の雇い主のご子息ですよ。とても可愛らしくて、素直で誰からも愛される方だと思いますが、私にはあの方と争ってまで手に入れたいと思えないですね」
「…………なるほど。レオンと一緒か。っていうかレオンの方がもう少しこじらせている感じかな」
ほんとによく見ているな。
「さて、どうでしょうね。というわけで、私は無関係ですのでミッチェルとルシルの観察対象からは外して下さい」
「そっかー。分かった。ありがとね。ふーん、ジーンとトムか。うん。なんかいい感じだね」
「あんまり騒いでは駄目ですよ。トムはエドワード様ほどではないですが、恥ずかしがり屋ですからね」
「はーい。うんうんスティーブはお兄ちゃん枠だったんだね」
「は?」
ニッコリと笑ってミッチェルは帰りの支度を始める。それに倣って私も魔道具をしまって帰り支度を始めた。
それにしてもまさかこのメンバーでこんな話が出来るようになるなんて。
「スティーブ、馬車廻まで一緒に行こうー」
そんな事を思いながら、私は残念美人枠のミッチェルと一緒に並んで歩き始めた。
-------------
あ、スティーブ×ミッチェルではないです。
ただの友人です。
念のため
334
お気に入りに追加
10,680
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ある日、人気俳優の弟になりました。
ユヅノキ ユキ
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。