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第1章 幼少期
【エピソード】-雪の魔法使いと青い炎
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この前寝てしまって最後まで読めなかったご本を兄様が読んでくださった。
『ある所に雪の魔法使いがいました。魔法使いは氷の城に住んでいて、お庭には氷の花が咲き、魔法使いが自分で作った氷の小人たちがいました』
「氷のお城……見てみたいです」
ぽそりと言うと、兄様は小さく笑って続きを読む。
『ある日魔法使いが氷の森に遊びに行くと、そこに見知らぬ子供がいました。魔法使いは人の子を見るのは初めてでした。「どうしてこんなところにいるの?君は誰?」すると子供は今にも泣き出しそうな顔をして「道に迷ってしまいました。どうか助けてください」と言いました。魔法使いは子供を城に連れて帰りました』
「助けてもらってよかったですね」
僕がホッとしてそう言うと兄様はコクリと頷いた。
「そうだね。『子供は氷の城はお花をみてとても綺麗だと言いました。魔法使いと子供は仲良くなりました。けれど、子供はだんだん元気がなくなって行きました。魔法使いは心配になりました。すると小人たちが言うのです。「人間は寒いと死んでしまうんだよ」「あたたかくしないと死んでしまうだよ」』
「そそそれはたいへんです!」
僕はびっくりして背中をピンとしてしまった。でもすぐに兄様が背中をトントンしてくれたよ。
『けれど、雪の魔法使いにはそれをしてあげることは出来ません。城の中をあたたかくしたら、城も、花も、小人たちも溶けてしまいます』
「あああ! そうでした。とけます。どうしましょう!」
今度はガックリと俯いてしまった僕に、兄様は僕の背中をトントンってしながらそのまま続きを読んでいく。
『でもこのままでは子供が死んでしまうかもしれません。雪の魔法使いは考えました。何かいい魔法がないだろうか。けれど雪を降らす事は出来ても、雪の魔法使いにはあたたかいものを作る事は出来ません。魔法使いは子供に言いました。「このままここにいたら君は死んでしまう、元いたところに私が帰してあげよう」それはとても寂しい事でしたが、仕方がないのです。だって、魔法使いは本当は『あたたかい』という事がどういうものなのか分からなかったのです』
僕は悲しくなって、ちょっぴり涙が出てしまった。だってせっかくお友達になれたのに。
『魔法使いは雪の馬を作りました。そして子供を乗せて空に舞い上がると、子供が来たという東の街を目指しましたた。街に近づいてくると雪がなくなってきました。魔法使いは苦しくなってきました。そしてついに飛ぶことが出来なくなってしまったのです。雪の馬もすっかり溶けてしまいました』
「たいへんです! うまが! 馬がとけてしまいました! まほ、魔法使いさんもたいへんです!」
「エディ、落ち着いて……大丈夫。ほら、魔法使いが話すよ。『「すまないが、ここからは一人でお帰り。一緒に遊べてとても楽しかった」苦しそうな顔でそう言って笑う魔法使いを見て、子供はこのままでは雪の魔法使いが消えてしまうと思いました。子供の目からポロポロと涙が零れました。「お願いです、神様。どうか僕のお友達を助けてください」すると、雪のない街にちらちらと雪が降り始めたではありませんか』
「え! 神様? 神様ですか?」
すでに涙が溢れてしまった僕の顔を兄様はそっとハンカチで拭いて「そうなのかもしれないね」と言って再び続きを読み始めた。
『雪の魔法使いは、力をとりもどし、城に帰ることができました。そして子供とまた遊ぼうと約束をしました。魔法使いは子供が『僕のお友達』と言った時に胸の中がほんのりと暖かくなってような気がしたのです。これが【あたたかい】という事なのか。雪の魔法使いは新しい魔法を見つけました。青い炎の魔法です。青い炎はあたたかいのに、氷のお城も、花も、小人たちも融かしません。けれども確かにあたたかいのです。これで子供が遊びに来ても凍えてしまうことはないでしょう。こうして氷のお城の暖炉には青い炎が揺れるようになり、雪の魔法使いはお友達と沢山遊ぶことが出来ました』
「よかったです! 魔法使いさんも、こどもも、みんな、みんな良かったです! とちゅうは涙が出てしまいましたが、新しい魔法が見つかって良かった。僕も青い炎の魔法を見てみたいです!」
僕の言葉に兄様はちょっとだけ考えるようにして、手の平を僕の前に出しました。そして。
「ふわぁ……青い炎だ……」
兄様の手の上に小さな青い炎が浮かんでいた。
「触ったら駄目だよ」
「はい……見るだけにします。でもきれい…」
少しして兄様は青い炎を消した。
「すごい、すごいです! なんでできるのですか! 兄様はもしかして、雪の魔法使いなんですか?」
「ふふふ、さあ、どうかな」
「ええ⁉ ででででも! そうしたら暖炉の赤い火でとけちゃいます! こま、こまります! 駄目です!」
僕は怖くなって兄様にぎゅっとしがみついてしまった。
「ああ、かえって怖がらせちゃったか。エディ、大丈夫だよ。僕は雪の魔法使いじゃないよ。青い炎はエディがびっくりするかと思って練習したんだよ?」
「……本当ですか?」
「本当だとも!」
「それなら良かったです。練習してくださってありがとうございました。すごく、すごくきれいでした」
そう言うと兄様は「よかった」と言って、またまたちょっぴり泣いてしまった僕のお目目を、そっとそっとハンカチで拭いてくれた。
兄様のハンカチはなんだかとてもいい匂いがした。
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書籍化に合わせて改稿しました♪
『ある所に雪の魔法使いがいました。魔法使いは氷の城に住んでいて、お庭には氷の花が咲き、魔法使いが自分で作った氷の小人たちがいました』
「氷のお城……見てみたいです」
ぽそりと言うと、兄様は小さく笑って続きを読む。
『ある日魔法使いが氷の森に遊びに行くと、そこに見知らぬ子供がいました。魔法使いは人の子を見るのは初めてでした。「どうしてこんなところにいるの?君は誰?」すると子供は今にも泣き出しそうな顔をして「道に迷ってしまいました。どうか助けてください」と言いました。魔法使いは子供を城に連れて帰りました』
「助けてもらってよかったですね」
僕がホッとしてそう言うと兄様はコクリと頷いた。
「そうだね。『子供は氷の城はお花をみてとても綺麗だと言いました。魔法使いと子供は仲良くなりました。けれど、子供はだんだん元気がなくなって行きました。魔法使いは心配になりました。すると小人たちが言うのです。「人間は寒いと死んでしまうんだよ」「あたたかくしないと死んでしまうだよ」』
「そそそれはたいへんです!」
僕はびっくりして背中をピンとしてしまった。でもすぐに兄様が背中をトントンしてくれたよ。
『けれど、雪の魔法使いにはそれをしてあげることは出来ません。城の中をあたたかくしたら、城も、花も、小人たちも溶けてしまいます』
「あああ! そうでした。とけます。どうしましょう!」
今度はガックリと俯いてしまった僕に、兄様は僕の背中をトントンってしながらそのまま続きを読んでいく。
『でもこのままでは子供が死んでしまうかもしれません。雪の魔法使いは考えました。何かいい魔法がないだろうか。けれど雪を降らす事は出来ても、雪の魔法使いにはあたたかいものを作る事は出来ません。魔法使いは子供に言いました。「このままここにいたら君は死んでしまう、元いたところに私が帰してあげよう」それはとても寂しい事でしたが、仕方がないのです。だって、魔法使いは本当は『あたたかい』という事がどういうものなのか分からなかったのです』
僕は悲しくなって、ちょっぴり涙が出てしまった。だってせっかくお友達になれたのに。
『魔法使いは雪の馬を作りました。そして子供を乗せて空に舞い上がると、子供が来たという東の街を目指しましたた。街に近づいてくると雪がなくなってきました。魔法使いは苦しくなってきました。そしてついに飛ぶことが出来なくなってしまったのです。雪の馬もすっかり溶けてしまいました』
「たいへんです! うまが! 馬がとけてしまいました! まほ、魔法使いさんもたいへんです!」
「エディ、落ち着いて……大丈夫。ほら、魔法使いが話すよ。『「すまないが、ここからは一人でお帰り。一緒に遊べてとても楽しかった」苦しそうな顔でそう言って笑う魔法使いを見て、子供はこのままでは雪の魔法使いが消えてしまうと思いました。子供の目からポロポロと涙が零れました。「お願いです、神様。どうか僕のお友達を助けてください」すると、雪のない街にちらちらと雪が降り始めたではありませんか』
「え! 神様? 神様ですか?」
すでに涙が溢れてしまった僕の顔を兄様はそっとハンカチで拭いて「そうなのかもしれないね」と言って再び続きを読み始めた。
『雪の魔法使いは、力をとりもどし、城に帰ることができました。そして子供とまた遊ぼうと約束をしました。魔法使いは子供が『僕のお友達』と言った時に胸の中がほんのりと暖かくなってような気がしたのです。これが【あたたかい】という事なのか。雪の魔法使いは新しい魔法を見つけました。青い炎の魔法です。青い炎はあたたかいのに、氷のお城も、花も、小人たちも融かしません。けれども確かにあたたかいのです。これで子供が遊びに来ても凍えてしまうことはないでしょう。こうして氷のお城の暖炉には青い炎が揺れるようになり、雪の魔法使いはお友達と沢山遊ぶことが出来ました』
「よかったです! 魔法使いさんも、こどもも、みんな、みんな良かったです! とちゅうは涙が出てしまいましたが、新しい魔法が見つかって良かった。僕も青い炎の魔法を見てみたいです!」
僕の言葉に兄様はちょっとだけ考えるようにして、手の平を僕の前に出しました。そして。
「ふわぁ……青い炎だ……」
兄様の手の上に小さな青い炎が浮かんでいた。
「触ったら駄目だよ」
「はい……見るだけにします。でもきれい…」
少しして兄様は青い炎を消した。
「すごい、すごいです! なんでできるのですか! 兄様はもしかして、雪の魔法使いなんですか?」
「ふふふ、さあ、どうかな」
「ええ⁉ ででででも! そうしたら暖炉の赤い火でとけちゃいます! こま、こまります! 駄目です!」
僕は怖くなって兄様にぎゅっとしがみついてしまった。
「ああ、かえって怖がらせちゃったか。エディ、大丈夫だよ。僕は雪の魔法使いじゃないよ。青い炎はエディがびっくりするかと思って練習したんだよ?」
「……本当ですか?」
「本当だとも!」
「それなら良かったです。練習してくださってありがとうございました。すごく、すごくきれいでした」
そう言うと兄様は「よかった」と言って、またまたちょっぴり泣いてしまった僕のお目目を、そっとそっとハンカチで拭いてくれた。
兄様のハンカチはなんだかとてもいい匂いがした。
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書籍化に合わせて改稿しました♪
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