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第2章 少年期

【エピソード】- ハワード先生と頭の柔らかい僕

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 ハワード先生とのお勉強は順調に続いている。最近は王国の中にはどんな領があるかという話を聞いているんだ。でも沢山あってむずかしい。それに今ある領ともうなくなっちゃった領があるから余計に分からなくなっちゃうんだ

 でも色々な領主様のお話を聞くのは楽しい。
 ハワード先生は、今あるものを知る事も、なんでなくなったのか知る事も両方大事だって言っていたよ。
 この前100年前の領主様の話をしたら、アル兄様がびっくりしたような顔をしていた。なんでかなぁ。


 今日もハワード先生は無くなってしまった領のお話をした。

「それではエドワード様、先ほどの領主のお話を聞いてどう思われましたか?」
「はい、ハワード先生。領民をいじめてしまうのはいけないと思いました」
「なぜですか?」
「はい。領主は領民を守らなければいけません。いじめたらきらわれてしまいます。僕はみんなが幸せにくらせるのがいいです」
「そうですねぇ、でもいつもいつも領民のお願いばかりを聞いていたら領主はいらなくなりませんか?」
「お願いを聞くといらなくなるのですか?」
「お願いが国にとって、良い事か悪い事なのかきちんと見分けないといけないですよ?」
「………それが皆が幸せになれるということですか?」

僕の質問に、ハワード先生は少しだけ考えるようにして、口を開きました。

「たとえば麦が沢山ほしいという領民がいます。その願いを聞いて領主は麦畑を増やします。すると今度は羊や牛を飼っていた領民が自分たちも増やしたいと言います。でも領は広げられません。羊飼いたちは領主は贔屓をしていると言います。そして麦が増えたおかげで麦が安くなって、沢山作ったのにもらえるお金が少なくなってしまいました。麦を売って商売をしている領民は領主のせいだと言います」
「こま、困りました。だれも幸せになれなくなってしまいました」

 僕はビックリしてどうしていいのか分からなくなってしまった。

「そうですね。何のためにそれをするのか、それをしたらどうなるのか、きちんと考えなければいけません。それが上に立つ者の責任です。エドワード様は領主を支える立場の方です。周りをよく見て、行うとどうなるのかをよくよく考えてから決めることが大事なのです」
「……誰にとっても、よい事というのははないのでしょうか」

 本当はそれが一番いいのにな。それはみんなのお願いが同じじゃないから無理なのかしら?

「難しい事ですが、皆の事を考えてくれている領主様を信じようと思ってもらえるようになったらよいですね」

 ハワード先生はそう言って、綺麗なグレーの瞳で楽しそうに僕を見た。

「……むずかしいけど、言われた願い事をかなえるだけでなく、色んなことをかんがえるのが大事なのはわかりました」
「エドワード様は本当に頭が柔らかくて賢いです」

 頭が柔らかいのは今でもよくわからないけれど、賢いと褒められたのが嬉しくて、僕はちょっとだけ照れっとなった。



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書籍化に合わせてほんのり改稿(*^。^*)
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