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42 普通の転生者、予定を終えて王都へ戻る

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 何だか驚く事ばかりだ。エマーソンが僕が思っていたよりも有能で、出る杭は打たれるというような事にならないようにしていたとか、にわかには信じ難い。

「エマーソンのこの土地だから出来る。そういうものに守られている。そういう所と縁を結びたい権力者もいるだろう。もっとも単純に母上の血縁者と縁を縁を結びたいと思っている者もいるだろうがな」

 お祖父様はそう言ってニッコリと笑った。僕はなんだか余計に訳が分からなくなってしまった部分もあるけれど、何となくエマーソンのこだわる人達が一定数居ることは分かった。でも当初の目的だけはきちんとして帰らなくては。

「すみません……。僕は自分の領の事なのに、きちんとした事は何も知らなかったみたいです。でも僕はエマーソン領の事が嫌いだから帰りたくないって思ったわけではないんです」
「ああ、分かっているよ。部屋住みで世話になるのは嫌だと言われたのは少し淋しい気持ちもしたが、それでも王城で文官をしたいという目標があるのならばそれでいいと思った。自分のやりたい事をやるのが一番だ」
「ありがとう、ございます」

 胸の中が温かくなって、何だか目の辺りも熱くなってきてじんわりとしてしまうけれど、それをぐっとこらえて僕は当初の予定の言葉をお祖父様に告げた。

「僕はせっかくやり始めた仕事をまだまだ続けていきたいです。そしてこうして時々はエマーソンに帰ってきたいとも思いました。我儘かもしれませんが、好きな事を好きなようにやり続けていきたい。自分の可能性を試していきたい。だから他の家の子になるのも、ましてや王族になるのも嫌です。まだ一度しかお会いしていませんが、第四王子様とは性格的に合いそうにありません。一緒に歩いていきたい、過ごしていきたいと思う人ではありません」
「そうか……」

 お祖父様はどこか楽しそうに返事をした。

「改めて、正式にお断りをしていただきたいのですが、お断りをしたらやはり城勤めを続けて行くのは難しいでしょうか」
「いや、関係なかろう」
「では、お手数をおかけしますが、お断りをお願いいたします」
「ふむ。まぁ、アルトマイヤーは養子の件は関係なくとも、上司としては付き合う事になると思うが」
「上司としてはとても良い方です」
「ふふふ、そうか。ではそのように断りを入れておこう」

 それから少しだけお祖父様と大祖父様と大祖母様の話をした。可愛らしくて逞しい王女様。その王女様を守り、愛した騎士の話はまるで本で読む物語のようだった。

「ねぇサミー、貴方は先ほど一緒に歩いていきたい、過ごしていきたいと思う人って言っていたけれど、そんな人はいるの?」
「え?」
「そんな人がいるなら、大事にしなくてはね」

 お茶とお菓子を持ってきてくれた今までちょこんと座っていただけのお祖母様の言葉に、何故かフィルの顔が浮かんで、僕は慌てて首を横に振って「いません」と言った。
 

 こうして僕は王都へと戻った。今日出仕しているフィルはまだ戻ってはいないようで、僕はなぜだかほっとした。
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