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31 普通の転生者、忙しさの中で色々考える
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どうやら、ニコニコしている宰相様というのは、とてもレアらしい。
でも面接の時もそうだったけど、僕が見た宰相様の顔は大体笑っているような顔だけどなって、一緒に食事をしたマルグリットさんに言ったらちょっと言葉を失っていたから、やっぱり例の養子の件があるから僕にはそうなのかなって思ったら気が重くなってしまった。お祖父様からお断りをしていただいている筈なんだけどなぁ。ちゃんと伝わっていないのかな。それともまだ棚上げみたいになっているのかな。
「お祭りが終わったらまた領に行って、正式に断ってほしいって念押しをしよう」
それにさ、フィルから好きだって言われた事もあるし。もっともそっちもどうしていいのか分かっていないんだけどね。
宰相様と昼食を取ったその翌日、僕は三つ上の先輩から声をかけられた。まぁ、たまたま同じ仕事をしていたからなんだけどね。
「気になっていたんだけどさ、エマーソンってもしかしてさ、あのエマーソンの親戚か何か?」
「あの……?」
あのって、なんだろう? そんな僕の心の声が駄々洩れしていたのか、先輩はちょっと頭を掻いて言い直しをした。
「ああ、すまん。えっとレスター様と関係があるのかなって」
「……レスター・ダインズ・エマーソンは私の祖父です」
「! え、あのレスター様のお孫さんだったのか!」
「わぁ!」
何なに、なんなの? いきなり大きな声を出されて僕は思わず飛び上がってしまった。
「あ、ああ、悪い。でもそうか、レスター様の。似ていないから気付かなかった。レスター様は文官達の中では、いや、城勤めの者の中では今でも心酔している人が多い、伝説の人なんだよ。身内だとそんな感覚はないのかもしれないけど。そうか、それで宰相様が食事を。ああ、なるほどねぇ」
うん。似ていない……。どうもこの先輩の言葉は妙に人をイラっとさせるね。まぁお祖父様には似ていないけどね。というか僕は父様にも兄様にも似ていないけどね。
先輩は「なるほど、なるほど」と頷いて勝手に何かを納得していたけど、僕にはさっぱり分からない。
「でもお祖父様はお祖父様で、ぼ、私は私ですから。それに今は領も出ておりますし」
「うんうん。そうだね。でも使える者は何でも使った方がいい。傲慢になるのも困るけど、レスター様の孫というのは強い切り札になる。まぁ使いようだけどね。ここはね、そういう所だよ」
ニコニコと笑いながらそんな事をいう先輩に「ご忠告ありがとうございます」と頭を下げると、なぜかポンポンとされた。なんだか子供扱いをされているようで更にイラっとしたけれど、こんな事では幸せが逃げていってしまうと思って我慢をしてみたよ。
それにしてもゆくゆくは宰相府、なんて思っていたんだけどさ、何となくあの人の下で働くのかなって思うと、少し、というかかなり……いやいやいやいや、今の宰相様は王国の中ではとても切れ者で優秀だって評判なんだからそんな事を思ってはいけない。幸せが……むにゃむにゃ……。
とにかくそんなに早く宰相府に入れるわけでもないし、出来ればという希望を持ちながらじみちに幸せを集めて行こう。そして、昼食に連れて行かれた後、フィルに注意をされたように、あの宰相様に丸め込まれないようにしないとね!
目の前の書類の束に視線を移した。
宰相様は春の祭りの準備やら、他国からもお祭りを見に来られる方の受け入れの準備やらで忙しい筈なのに、その後二度ほど昼食を誘いに来た。
もっともそのうちの一度は僕の仕事が忙しくてお誘いは受けられなかった。
「無理です」って言った時に部屋の中がシンとしたんだけど、どうしてかな。だって僕、別に宰相様と昼食を取る約束なんてしていないしさ、仕事が忙しかったらそちらを優先するよね。食事じゃないよね?
フィルに「僕、間違っていないよね」って聞いたら「大丈夫だ」って笑っていたから、それでいいって思う事にしたよ。初めての春の祭りまではあと十日ほどとなっていた。
でも面接の時もそうだったけど、僕が見た宰相様の顔は大体笑っているような顔だけどなって、一緒に食事をしたマルグリットさんに言ったらちょっと言葉を失っていたから、やっぱり例の養子の件があるから僕にはそうなのかなって思ったら気が重くなってしまった。お祖父様からお断りをしていただいている筈なんだけどなぁ。ちゃんと伝わっていないのかな。それともまだ棚上げみたいになっているのかな。
「お祭りが終わったらまた領に行って、正式に断ってほしいって念押しをしよう」
それにさ、フィルから好きだって言われた事もあるし。もっともそっちもどうしていいのか分かっていないんだけどね。
宰相様と昼食を取ったその翌日、僕は三つ上の先輩から声をかけられた。まぁ、たまたま同じ仕事をしていたからなんだけどね。
「気になっていたんだけどさ、エマーソンってもしかしてさ、あのエマーソンの親戚か何か?」
「あの……?」
あのって、なんだろう? そんな僕の心の声が駄々洩れしていたのか、先輩はちょっと頭を掻いて言い直しをした。
「ああ、すまん。えっとレスター様と関係があるのかなって」
「……レスター・ダインズ・エマーソンは私の祖父です」
「! え、あのレスター様のお孫さんだったのか!」
「わぁ!」
何なに、なんなの? いきなり大きな声を出されて僕は思わず飛び上がってしまった。
「あ、ああ、悪い。でもそうか、レスター様の。似ていないから気付かなかった。レスター様は文官達の中では、いや、城勤めの者の中では今でも心酔している人が多い、伝説の人なんだよ。身内だとそんな感覚はないのかもしれないけど。そうか、それで宰相様が食事を。ああ、なるほどねぇ」
うん。似ていない……。どうもこの先輩の言葉は妙に人をイラっとさせるね。まぁお祖父様には似ていないけどね。というか僕は父様にも兄様にも似ていないけどね。
先輩は「なるほど、なるほど」と頷いて勝手に何かを納得していたけど、僕にはさっぱり分からない。
「でもお祖父様はお祖父様で、ぼ、私は私ですから。それに今は領も出ておりますし」
「うんうん。そうだね。でも使える者は何でも使った方がいい。傲慢になるのも困るけど、レスター様の孫というのは強い切り札になる。まぁ使いようだけどね。ここはね、そういう所だよ」
ニコニコと笑いながらそんな事をいう先輩に「ご忠告ありがとうございます」と頭を下げると、なぜかポンポンとされた。なんだか子供扱いをされているようで更にイラっとしたけれど、こんな事では幸せが逃げていってしまうと思って我慢をしてみたよ。
それにしてもゆくゆくは宰相府、なんて思っていたんだけどさ、何となくあの人の下で働くのかなって思うと、少し、というかかなり……いやいやいやいや、今の宰相様は王国の中ではとても切れ者で優秀だって評判なんだからそんな事を思ってはいけない。幸せが……むにゃむにゃ……。
とにかくそんなに早く宰相府に入れるわけでもないし、出来ればという希望を持ちながらじみちに幸せを集めて行こう。そして、昼食に連れて行かれた後、フィルに注意をされたように、あの宰相様に丸め込まれないようにしないとね!
目の前の書類の束に視線を移した。
宰相様は春の祭りの準備やら、他国からもお祭りを見に来られる方の受け入れの準備やらで忙しい筈なのに、その後二度ほど昼食を誘いに来た。
もっともそのうちの一度は僕の仕事が忙しくてお誘いは受けられなかった。
「無理です」って言った時に部屋の中がシンとしたんだけど、どうしてかな。だって僕、別に宰相様と昼食を取る約束なんてしていないしさ、仕事が忙しかったらそちらを優先するよね。食事じゃないよね?
フィルに「僕、間違っていないよね」って聞いたら「大丈夫だ」って笑っていたから、それでいいって思う事にしたよ。初めての春の祭りまではあと十日ほどとなっていた。
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