6 / 54
6 普通の転生者、アルバイトをする
しおりを挟む
「ロイ! 3番の定食あがったよ!」
「はーい!」
動きやすく、完璧に平民に見える服と、魔法で髪の色をこれまた平民に多い赤系の茶色に変えて、顔に少しだけそばかすを散らす。これで『ロイ』の出来上がり。
学校が早めに終わる2日間、僕はロイになって、隣町の食堂の手伝いをしている。
しかも賄いつきなんだよ。お得!
去年から少し講義の数が減ってきたので、働ける時間もちょっとだけ増えた。
夜はお酒も出るけど、店主がしっかりしているからガラの悪いお客はいない。
そして休日は、市場でフルに働く。ちょっときついけど時間が長い分給金はいい。
正直未成年者を雇ってくれる所なんて少ないから助かった。
市場って結構色々な仕事があるからさ。算術が出来たのが決め手になったんだ。
ここはね、ロイじゃなくてそのまま働いているんだ。身分証明みたいなのが必要だったのと、その方が待遇が良かったから。
貴族の子息が働くなんてって言う人もいるけどさ、田舎の子爵家の三男なんて、いずれは平民になる可能性の方が高いんだ。何でも出来ておいた方がいいし、なんなら前の記憶もあるしさ。
それに試験に受かったら、やっぱりそれなりにお金がかかると思うから、使うだけじゃなくて貯めないといけないからね。
「ロイ!こっちにエール2つ」
「はーい!」
「ロイ! こっちは肉の煮物だ!」
「はーい!」
常連さんも出来ている。
「ロイ! 4番のステーキ」
「はーい! 2番にエールを二つでお願いします」
「はいよー」
食堂のおばちゃんはパワフルで優しい。
えっとほら、ああ、前世でいうと肝っ玉母さんっていうのかな。そんな感じ。
たまたまこっちの方の本屋に来て、たまたまこの食堂の求人募集を見つけた。そして雇ってもらえた。
「ロイ、また来ているよ。あの客。ロイの来る日だけやってくるんだ」
同じ接客のマルクからそう言われて僕はちらりとそちらを見た。
いつの頃からか見かけるようになった黒髪の男。見覚えはない。でも何かを言われた事も悪さをされた事も勿論ない。
「たまたまじゃない? だって話しかけられた事もないよ。あ、テーブル空いたから片付けてくる」
「そうかなぁ、ロイの事見ているような気がするけどなぁ」
「マルク! 中の皿洗いの手伝いをしておくれ! ついでに冷菜盛り合わせの仕上げも頼むよ」
「はい!」
いずれは調理人になりたいマルクは嬉しそうに厨房の中に入った。
僕は次々に上がって来る料理を運んで、片付けての繰り返し。今日は本当に忙しい。
「ロイ、遅くなったから気を付けるんだよ。ほら、今日の分と、忙しかったから特別手当だ」
「わぁ! 助かります! ありがとうございます」
今日の給金の他に、余ったバンズと肉の蒸し焼きをもらって店を出た。
えへへへ、明日の昼ご飯確保。それとこれでやっと新しい資料が買えるな。
「わ~、今日は混んでいたからちょっと遅くなったなぁ」
魔力量はそれほど大きくないけど、僕はなぜか転移が出来るので助かっている。もしかしてこれが転生特典ってやつなのかな?
今日も道を少し進んで周りを確かめてから転移をした。隣町なので魔力もそれほどかからすに済む。あっという間に自分の部屋だ。
「よし、シャワーを浴びて寝よう」
明日は朝から講義がある。
「小さいけどマジックバックを買っておいて正解だったな」
バッグの中のパンと肉は明日の昼ごはん。
予定額が集まったから、新しい資料は明日の午後にでも見に行こう。
小さく鼻歌を歌いながらシャワーを浴びて、ベッドに入った。
「ふふふ、これも幸せだよね!」
何だか意識をしていれば、僕の周りには幸せが多い。という事は、幸せ計画は地道にコツコツと進んでいるというわけだ。
「新しい本が買えるのも、お昼ご飯の心配をしないでいいのも幸せ」
そう呟いて、僕はそっと目を閉じた。
---------------
「はーい!」
動きやすく、完璧に平民に見える服と、魔法で髪の色をこれまた平民に多い赤系の茶色に変えて、顔に少しだけそばかすを散らす。これで『ロイ』の出来上がり。
学校が早めに終わる2日間、僕はロイになって、隣町の食堂の手伝いをしている。
しかも賄いつきなんだよ。お得!
去年から少し講義の数が減ってきたので、働ける時間もちょっとだけ増えた。
夜はお酒も出るけど、店主がしっかりしているからガラの悪いお客はいない。
そして休日は、市場でフルに働く。ちょっときついけど時間が長い分給金はいい。
正直未成年者を雇ってくれる所なんて少ないから助かった。
市場って結構色々な仕事があるからさ。算術が出来たのが決め手になったんだ。
ここはね、ロイじゃなくてそのまま働いているんだ。身分証明みたいなのが必要だったのと、その方が待遇が良かったから。
貴族の子息が働くなんてって言う人もいるけどさ、田舎の子爵家の三男なんて、いずれは平民になる可能性の方が高いんだ。何でも出来ておいた方がいいし、なんなら前の記憶もあるしさ。
それに試験に受かったら、やっぱりそれなりにお金がかかると思うから、使うだけじゃなくて貯めないといけないからね。
「ロイ!こっちにエール2つ」
「はーい!」
「ロイ! こっちは肉の煮物だ!」
「はーい!」
常連さんも出来ている。
「ロイ! 4番のステーキ」
「はーい! 2番にエールを二つでお願いします」
「はいよー」
食堂のおばちゃんはパワフルで優しい。
えっとほら、ああ、前世でいうと肝っ玉母さんっていうのかな。そんな感じ。
たまたまこっちの方の本屋に来て、たまたまこの食堂の求人募集を見つけた。そして雇ってもらえた。
「ロイ、また来ているよ。あの客。ロイの来る日だけやってくるんだ」
同じ接客のマルクからそう言われて僕はちらりとそちらを見た。
いつの頃からか見かけるようになった黒髪の男。見覚えはない。でも何かを言われた事も悪さをされた事も勿論ない。
「たまたまじゃない? だって話しかけられた事もないよ。あ、テーブル空いたから片付けてくる」
「そうかなぁ、ロイの事見ているような気がするけどなぁ」
「マルク! 中の皿洗いの手伝いをしておくれ! ついでに冷菜盛り合わせの仕上げも頼むよ」
「はい!」
いずれは調理人になりたいマルクは嬉しそうに厨房の中に入った。
僕は次々に上がって来る料理を運んで、片付けての繰り返し。今日は本当に忙しい。
「ロイ、遅くなったから気を付けるんだよ。ほら、今日の分と、忙しかったから特別手当だ」
「わぁ! 助かります! ありがとうございます」
今日の給金の他に、余ったバンズと肉の蒸し焼きをもらって店を出た。
えへへへ、明日の昼ご飯確保。それとこれでやっと新しい資料が買えるな。
「わ~、今日は混んでいたからちょっと遅くなったなぁ」
魔力量はそれほど大きくないけど、僕はなぜか転移が出来るので助かっている。もしかしてこれが転生特典ってやつなのかな?
今日も道を少し進んで周りを確かめてから転移をした。隣町なので魔力もそれほどかからすに済む。あっという間に自分の部屋だ。
「よし、シャワーを浴びて寝よう」
明日は朝から講義がある。
「小さいけどマジックバックを買っておいて正解だったな」
バッグの中のパンと肉は明日の昼ごはん。
予定額が集まったから、新しい資料は明日の午後にでも見に行こう。
小さく鼻歌を歌いながらシャワーを浴びて、ベッドに入った。
「ふふふ、これも幸せだよね!」
何だか意識をしていれば、僕の周りには幸せが多い。という事は、幸せ計画は地道にコツコツと進んでいるというわけだ。
「新しい本が買えるのも、お昼ご飯の心配をしないでいいのも幸せ」
そう呟いて、僕はそっと目を閉じた。
---------------
39
お気に入りに追加
971
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

嫌われ者の僕が学園を去る話
おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。
一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。
最終的にはハピエンの予定です。
Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。
↓↓↓
微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。
設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。
不定期更新です。(目標週1)
勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる