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4 普通の転生者、美味しいお菓子を頂く
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部屋に戻って30分ほどするとドアをノックする音が聞こえた。
「サミュエル、今は平気? さっきの約束通りに持ってきたんだけど」
僕は慌てて扉を開けた。
「ありがとう。ブラッド」
ブラッドは大きな籠いっぱいの焼き菓子をくれた。
「こんなに沢山、いいの⁉」
「うん。何だかものすごく沢山送ってきてね。遠慮なく食べて。本当に何度言っても僕が甘いものが好きだって思い込んでいるんだよね。っていうか好きでもさ、こんなに食べられないよ。普通は」
「ええ⁉ そうなの?」
苦笑を浮かべるブラッドに、僕は普通だけど、沢山のお菓子が送られてきたら喜んじゃうけどなぁと思いながらニコニコと籠を受け取った。
「でも。そのお陰で僕が美味しいなお菓子を食べる事が出来る。あ、これ!」
僕はお菓子の中にある、高級そうな包みを見つけた。
「さすがサミュエル、もうチョコレートを知っているなんて」
「知っているよ。手は出ないけど。っていうかこんなに高いものを本当に戴いてもいいの?」
いくら何でもこの世界ではいいのかしらって思うレベルのものだよ?
「勿論。美味しく食べてくれると分かっている人の所に行くのがお菓子にとっても幸せだろう?」
「……え……」
そう言ってにっこりと笑ったブラッドに、僕は自分の領から送られてきた紅茶を入れながら小さく声を出してしまった。
「うん? どうかした?」
「ううん。はい、どうぞ」
「ありがとう。うん。やっぱりサミュエルの所の紅茶は最高だね」
「ふふふ、そう言ってもらえると嬉しいな」
そう、弱小の子爵領だけれど、一つだけ誇れるのは紅茶だった。
茶葉が育つにはとても良い環境と、紅茶として加工をする技術は代々の当主と同じく代々契約をしている職人にしか受け継がれないんだ。外にその技術は持ち出せないものになっていて、領の家計を支えている。
これがなかったらうちの領は本当に財政難で領地没収になっていたかもしれない。
「美味しいねぇ」
食べたのは、この世界で初めて食べるチョコレート。
「ふふふ、サミュエルの幸せそうな顔を見ると僕も嬉しいよ。この瞬間は甘いもの好きの実家に感謝をするね」
「ええ? 僕、幸せそうだった?」
「うん。幸せじゃないの?」
少し考えて、ああ、そうか。これも幸せなんだって思った。高級な美味しいお菓子をもらって、幸せ。
「うん。幸せ!」
「ならよかった」
そう言ってブラッドは紅茶のカップを優雅に傾ける。
「ねぇ、ブラッド」
「なんだい?」
「さっき君が言った言葉だけど……」
「うん? なんだっけ? サミュエルが幸せそうにお菓子を食べるって事?」
「ううん、そうじゃなくて、お菓子にとっても幸せって」
「……はい?」
「言ってたでしょう? 美味しく食べてくれる人の所に行くのがお菓子にとっても幸せだって」
「うん、まぁ、言ったかな。それがどうかしたの?」
「あのさ、僕さ、幸せになりたいって思っててさ」
その瞬間、ブラッドが紅茶を吹き出した。
「……失礼。ええっと、クリーン」
ブラッドはすぐさま魔法をかけて汚れてしまったテーブルやカップを綺麗にした。
「ご、ごめんね? 何か分からないけど、その驚かせたみたいで。もう一杯紅茶いる?」
「いや、これで大丈夫。ええっと、サミュエル、君は、その……し、幸せになりたくて、だ、誰かの所に行きたいのかな?」
「え? ううん。別に。誰かって誰?」
「いや、それを聞きたいのは僕の方なんだけれどね」
「んんん? 分からないけど、幸せになりたいなって思っているのは本当」
「……ああ、そう」
ブラッドは少しこめかみのあたりを押さえるようにしてカップをおいた。
それでもカップはちゃんと空になっていた。
「サミュエル、今は平気? さっきの約束通りに持ってきたんだけど」
僕は慌てて扉を開けた。
「ありがとう。ブラッド」
ブラッドは大きな籠いっぱいの焼き菓子をくれた。
「こんなに沢山、いいの⁉」
「うん。何だかものすごく沢山送ってきてね。遠慮なく食べて。本当に何度言っても僕が甘いものが好きだって思い込んでいるんだよね。っていうか好きでもさ、こんなに食べられないよ。普通は」
「ええ⁉ そうなの?」
苦笑を浮かべるブラッドに、僕は普通だけど、沢山のお菓子が送られてきたら喜んじゃうけどなぁと思いながらニコニコと籠を受け取った。
「でも。そのお陰で僕が美味しいなお菓子を食べる事が出来る。あ、これ!」
僕はお菓子の中にある、高級そうな包みを見つけた。
「さすがサミュエル、もうチョコレートを知っているなんて」
「知っているよ。手は出ないけど。っていうかこんなに高いものを本当に戴いてもいいの?」
いくら何でもこの世界ではいいのかしらって思うレベルのものだよ?
「勿論。美味しく食べてくれると分かっている人の所に行くのがお菓子にとっても幸せだろう?」
「……え……」
そう言ってにっこりと笑ったブラッドに、僕は自分の領から送られてきた紅茶を入れながら小さく声を出してしまった。
「うん? どうかした?」
「ううん。はい、どうぞ」
「ありがとう。うん。やっぱりサミュエルの所の紅茶は最高だね」
「ふふふ、そう言ってもらえると嬉しいな」
そう、弱小の子爵領だけれど、一つだけ誇れるのは紅茶だった。
茶葉が育つにはとても良い環境と、紅茶として加工をする技術は代々の当主と同じく代々契約をしている職人にしか受け継がれないんだ。外にその技術は持ち出せないものになっていて、領の家計を支えている。
これがなかったらうちの領は本当に財政難で領地没収になっていたかもしれない。
「美味しいねぇ」
食べたのは、この世界で初めて食べるチョコレート。
「ふふふ、サミュエルの幸せそうな顔を見ると僕も嬉しいよ。この瞬間は甘いもの好きの実家に感謝をするね」
「ええ? 僕、幸せそうだった?」
「うん。幸せじゃないの?」
少し考えて、ああ、そうか。これも幸せなんだって思った。高級な美味しいお菓子をもらって、幸せ。
「うん。幸せ!」
「ならよかった」
そう言ってブラッドは紅茶のカップを優雅に傾ける。
「ねぇ、ブラッド」
「なんだい?」
「さっき君が言った言葉だけど……」
「うん? なんだっけ? サミュエルが幸せそうにお菓子を食べるって事?」
「ううん、そうじゃなくて、お菓子にとっても幸せって」
「……はい?」
「言ってたでしょう? 美味しく食べてくれる人の所に行くのがお菓子にとっても幸せだって」
「うん、まぁ、言ったかな。それがどうかしたの?」
「あのさ、僕さ、幸せになりたいって思っててさ」
その瞬間、ブラッドが紅茶を吹き出した。
「……失礼。ええっと、クリーン」
ブラッドはすぐさま魔法をかけて汚れてしまったテーブルやカップを綺麗にした。
「ご、ごめんね? 何か分からないけど、その驚かせたみたいで。もう一杯紅茶いる?」
「いや、これで大丈夫。ええっと、サミュエル、君は、その……し、幸せになりたくて、だ、誰かの所に行きたいのかな?」
「え? ううん。別に。誰かって誰?」
「いや、それを聞きたいのは僕の方なんだけれどね」
「んんん? 分からないけど、幸せになりたいなって思っているのは本当」
「……ああ、そう」
ブラッドは少しこめかみのあたりを押さえるようにしてカップをおいた。
それでもカップはちゃんと空になっていた。
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