18 / 21
番外編
1.
しおりを挟む
「うわあーーーーーーーーーー!」
バッシャーンという音と共に玄関先に設置しておいた落とし穴が作動した気配を感じる。
「ハルク、なんかかかった」
「お前、本当に落とし穴作ってたんだな」
背後にいるハルクが呆れた顔で私の頭を撫でる。
最近のハルクは私の頭を撫でることがお気に入りなんだそう。
さわさわと大きな手が行ったり来たりする様子に少し目を細めてしまう。
「可愛いな」
「惚れた?」
ボソリと呟くハルクにそう言えば、「分かりきったことを言うんじゃねえ」と頭に軽いゲンコツを一発食らった。
色とりどりの光を纏った精霊達が、ハルクの周りを飛び回る。中にはタックルしてくる子もいた。
「いきなり、どうした」
「遊べだとさ。俺たちが遊んでいたように思ったらしい」
確かに遊んで? いたかもしれないけども。
「あはは、ハルクがイルミネーションみたいになってる」
「なんだそれは」
「ん? 今のハルクだよ」
頭にはてなマークを浮かべるハルクは妖精に囲まれ、色とりどりの光でデコレーションされていた。
そんなこんなですっかり落とし穴にはまった人物の事を忘れていた私。しかし、「助けてーーーー!」という落とし穴から響いてきた声にハッと我に帰った。
「あ、落とし穴!」
慌てて玄関の扉をあけ、落とし穴へ向かう。後からきたハルクが落とし穴の中を覗き込んでいる。
「上がってくるのが遅いと思ったら……お前、どれだけ掘ってんだ」
ハルクは底の見えない落とし穴に、呆れていた。
「えー……3メートルぐらい?」
「お前、やっぱバカだな」
実は5メートル掘っていて、内2メートルには水が溜めてある……なんて事を言ったらもっとバカにされるはず。
この落とし穴には、避難用に横に出っ張りがありそこに上がれば水から脱出できるようになっていた。ただし穴からは脱出できない。
なんでこんなの作ったかって?
いや、最初は軽ーい落とし穴を作ってたんだけど掘ることにハマっちゃって……
「掘り続けていたらいつの間にか的な?」
ニコッと笑った私にイルミネーションハルクがゲンコツを無言でくれた。痛くないけど……
「うえーん!」
「おい、泣き出したぞ」
「……ごめんなさい」
穴からは男性と思しき人物の泣き声が響いていた。
「はぁ、引き上げるか」
「お願いします」
しょうがないっと言った格好で、髪をかきあげるハルク。形の良い額が露わになる。
なんかエロいな、このヤロウ。
なにをしても様になるハルクは、イルミネーションハルクで穴の中に入っていった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー⁉︎」
「うるせぇ」
少しして、男性の悲鳴とハルクの声が聞こえてくる。ボカっという音と共に男性の悲鳴が途絶えた。
え、しn……
「死んでねぇぞ」
カラフルな色を纏ったハルクが穴から1人の男性を抱えて上がってくる。
男性の頭には大きなタンコブがあり、ハルクに殴られたのは明確だった。
そして、気絶していた。
「大丈夫なの?」
「ん、まぁ大丈夫だ。コイツは殺っても復活してくるからな」
あら、今"殺しても"に聞こえたんだけど……?
「あ、そうなんだ。とりあえず、家にーー」
そう言いかけた私の言葉をハルクが遮った。
「いや、コイツは家なんかに入れなくていい」
ブスッとした顔のハルク。何か知っていそうだが、言いたくなさそうだったので私は決めた。
「分かった、じゃあそこに置いておこう!」
「おう」
「……いやいやいやいやいや、ちょっと待って? 怪我人普通外に置く⁉︎ こーんなでっかいタンコブあるんだよ⁉︎」
男性がハルクの腕の中からガバッと身を起こした。
「うわぉ」
「な? コイツ、殺しても死なないんだよ」
え? 殺したの⁉︎ というツッコミはさておき、未だにハルクの腕の中でギャーギャーと喚く男性。よくよく見れば、金髪碧眼で、どことなく王太子に似ている。
「ねぇ、家に入れてよぉ~」
「もっかい地獄に行くか?」
ギロッと睨むハルクに「嫌だなぁ~、ハルクは地獄だろうけど僕は天国だよ」と言う男性。どれだけハルクに殺気を向けられてもケロリとしていた。
「ねぇ、ルリアもハルクを説得してよ! 僕、一応神様なんだよ⁉︎」
あ、王太子関係ではないんだ。
そのことにホッとした私。
結局神様? の喚きに折れたハルクが家にその男性を招き入れたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
番外編? より、続編に近いのかもしれません。
お暇があったらお読みいただけると嬉しいです\(^o^)/
バッシャーンという音と共に玄関先に設置しておいた落とし穴が作動した気配を感じる。
「ハルク、なんかかかった」
「お前、本当に落とし穴作ってたんだな」
背後にいるハルクが呆れた顔で私の頭を撫でる。
最近のハルクは私の頭を撫でることがお気に入りなんだそう。
さわさわと大きな手が行ったり来たりする様子に少し目を細めてしまう。
「可愛いな」
「惚れた?」
ボソリと呟くハルクにそう言えば、「分かりきったことを言うんじゃねえ」と頭に軽いゲンコツを一発食らった。
色とりどりの光を纏った精霊達が、ハルクの周りを飛び回る。中にはタックルしてくる子もいた。
「いきなり、どうした」
「遊べだとさ。俺たちが遊んでいたように思ったらしい」
確かに遊んで? いたかもしれないけども。
「あはは、ハルクがイルミネーションみたいになってる」
「なんだそれは」
「ん? 今のハルクだよ」
頭にはてなマークを浮かべるハルクは妖精に囲まれ、色とりどりの光でデコレーションされていた。
そんなこんなですっかり落とし穴にはまった人物の事を忘れていた私。しかし、「助けてーーーー!」という落とし穴から響いてきた声にハッと我に帰った。
「あ、落とし穴!」
慌てて玄関の扉をあけ、落とし穴へ向かう。後からきたハルクが落とし穴の中を覗き込んでいる。
「上がってくるのが遅いと思ったら……お前、どれだけ掘ってんだ」
ハルクは底の見えない落とし穴に、呆れていた。
「えー……3メートルぐらい?」
「お前、やっぱバカだな」
実は5メートル掘っていて、内2メートルには水が溜めてある……なんて事を言ったらもっとバカにされるはず。
この落とし穴には、避難用に横に出っ張りがありそこに上がれば水から脱出できるようになっていた。ただし穴からは脱出できない。
なんでこんなの作ったかって?
いや、最初は軽ーい落とし穴を作ってたんだけど掘ることにハマっちゃって……
「掘り続けていたらいつの間にか的な?」
ニコッと笑った私にイルミネーションハルクがゲンコツを無言でくれた。痛くないけど……
「うえーん!」
「おい、泣き出したぞ」
「……ごめんなさい」
穴からは男性と思しき人物の泣き声が響いていた。
「はぁ、引き上げるか」
「お願いします」
しょうがないっと言った格好で、髪をかきあげるハルク。形の良い額が露わになる。
なんかエロいな、このヤロウ。
なにをしても様になるハルクは、イルミネーションハルクで穴の中に入っていった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー⁉︎」
「うるせぇ」
少しして、男性の悲鳴とハルクの声が聞こえてくる。ボカっという音と共に男性の悲鳴が途絶えた。
え、しn……
「死んでねぇぞ」
カラフルな色を纏ったハルクが穴から1人の男性を抱えて上がってくる。
男性の頭には大きなタンコブがあり、ハルクに殴られたのは明確だった。
そして、気絶していた。
「大丈夫なの?」
「ん、まぁ大丈夫だ。コイツは殺っても復活してくるからな」
あら、今"殺しても"に聞こえたんだけど……?
「あ、そうなんだ。とりあえず、家にーー」
そう言いかけた私の言葉をハルクが遮った。
「いや、コイツは家なんかに入れなくていい」
ブスッとした顔のハルク。何か知っていそうだが、言いたくなさそうだったので私は決めた。
「分かった、じゃあそこに置いておこう!」
「おう」
「……いやいやいやいやいや、ちょっと待って? 怪我人普通外に置く⁉︎ こーんなでっかいタンコブあるんだよ⁉︎」
男性がハルクの腕の中からガバッと身を起こした。
「うわぉ」
「な? コイツ、殺しても死なないんだよ」
え? 殺したの⁉︎ というツッコミはさておき、未だにハルクの腕の中でギャーギャーと喚く男性。よくよく見れば、金髪碧眼で、どことなく王太子に似ている。
「ねぇ、家に入れてよぉ~」
「もっかい地獄に行くか?」
ギロッと睨むハルクに「嫌だなぁ~、ハルクは地獄だろうけど僕は天国だよ」と言う男性。どれだけハルクに殺気を向けられてもケロリとしていた。
「ねぇ、ルリアもハルクを説得してよ! 僕、一応神様なんだよ⁉︎」
あ、王太子関係ではないんだ。
そのことにホッとした私。
結局神様? の喚きに折れたハルクが家にその男性を招き入れたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
番外編? より、続編に近いのかもしれません。
お暇があったらお読みいただけると嬉しいです\(^o^)/
0
お気に入りに追加
1,048
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
いじめられて、婚約者には見捨てられました。
りつ
恋愛
ドーラはクラスメイトからいじめられていた。それでも誰にも助けてもらえず、ただ必死に我慢して毎日を過ごしていた。それもすべて婚約者と良好な関係を保つためだったが──
※いじめ描写など気分の悪くなる表現や展開があります。ご注意下さい。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる