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番外編

1.

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「うわあーーーーーーーーーー!」

 バッシャーンという音と共に玄関先に設置しておいた落とし穴が作動した気配を感じる。

「ハルク、なんかかかった」
「お前、本当に落とし穴作ってたんだな」

 背後にいるハルクが呆れた顔で私の頭を撫でる。
 最近のハルクは私の頭を撫でることがお気に入りなんだそう。

 さわさわと大きな手が行ったり来たりする様子に少し目を細めてしまう。

「可愛いな」
「惚れた?」

 ボソリと呟くハルクにそう言えば、「分かりきったことを言うんじゃねえ」と頭に軽いゲンコツを一発食らった。

 色とりどりの光を纏った精霊達が、ハルクの周りを飛び回る。中にはタックルしてくる子もいた。

「いきなり、どうした」
「遊べだとさ。俺たちが遊んでいたように思ったらしい」

 確かに遊んで? いたかもしれないけども。

「あはは、ハルクがイルミネーションみたいになってる」
「なんだそれは」
「ん? 今のハルクだよ」

 頭にはてなマークを浮かべるハルクは妖精に囲まれ、色とりどりの光でデコレーションされていた。
 そんなこんなですっかり落とし穴にはまった人物の事を忘れていた私。しかし、「助けてーーーー!」という落とし穴から響いてきた声にハッと我に帰った。

「あ、落とし穴!」

 慌てて玄関の扉をあけ、落とし穴へ向かう。後からきたハルクが落とし穴の中を覗き込んでいる。

「上がってくるのが遅いと思ったら……お前、どれだけ掘ってんだ」

 ハルクは底の見えない落とし穴に、呆れていた。

「えー……3メートルぐらい?」
「お前、やっぱバカだな」

 実は5メートル掘っていて、内2メートルには水が溜めてある……なんて事を言ったらもっとバカにされるはず。

 この落とし穴には、避難用に横に出っ張りがありそこに上がれば水から脱出できるようになっていた。ただし穴からは脱出できない。

 なんでこんなの作ったかって?

 いや、最初は軽ーい落とし穴を作ってたんだけど掘ることにハマっちゃって……

「掘り続けていたらいつの間にか的な?」

 ニコッと笑った私にイルミネーションハルクがゲンコツを無言でくれた。痛くないけど……

「うえーん!」
「おい、泣き出したぞ」
「……ごめんなさい」

 穴からは男性と思しき人物の泣き声が響いていた。

「はぁ、引き上げるか」
「お願いします」

 しょうがないっと言った格好で、髪をかきあげるハルク。形の良い額が露わになる。

 なんかエロいな、このヤロウ。

 なにをしても様になるハルクは、イルミネーションハルクで穴の中に入っていった。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー⁉︎」
「うるせぇ」

 少しして、男性の悲鳴とハルクの声が聞こえてくる。ボカっという音と共に男性の悲鳴が途絶えた。

 え、しn……

「死んでねぇぞ」

 カラフルな色を纏ったハルクが穴から1人の男性を抱えて上がってくる。

 男性の頭には大きなタンコブがあり、ハルクに殴られたのは明確だった。

 そして、気絶していた。

「大丈夫なの?」
「ん、まぁ大丈夫だ。コイツはっても復活してくるからな」

 あら、今"殺しても"に聞こえたんだけど……?

「あ、そうなんだ。とりあえず、家にーー」

 そう言いかけた私の言葉をハルクが遮った。

「いや、コイツは家なんかに入れなくていい」

 ブスッとした顔のハルク。何か知っていそうだが、言いたくなさそうだったので私は決めた。

「分かった、じゃあそこに置いておこう!」
「おう」
「……いやいやいやいやいや、ちょっと待って? 怪我人普通外に置く⁉︎ こーんなでっかいタンコブあるんだよ⁉︎」

 男性がハルクの腕の中からガバッと身を起こした。

「うわぉ」
「な? コイツ、殺しても死なないんだよ」

 え? 殺したの⁉︎ というツッコミはさておき、未だにハルクの腕の中でギャーギャーと喚く男性。よくよく見れば、金髪碧眼で、どことなく王太子に似ている。

「ねぇ、家に入れてよぉ~」
「もっかい地獄に行くか?」

 ギロッと睨むハルクに「嫌だなぁ~、ハルクは地獄だろうけど僕は天国だよ」と言う男性。どれだけハルクに殺気を向けられてもケロリとしていた。

「ねぇ、ルリアもハルクを説得してよ! 僕、一応神様なんだよ⁉︎」

 あ、王太子関係ではないんだ。

 そのことにホッとした私。

 結局神様? の喚きに折れたハルクが家にその男性を招き入れたのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
番外編? より、続編に近いのかもしれません。
お暇があったらお読みいただけると嬉しいです\(^o^)/
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