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17.完結
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「ん……」
「お、起きたか?」
ハルクの声?
寝ぼけていた脳が覚醒して、飛び起きる。
私、寝てたの⁉︎
「いつの間に……?」
「涎垂れてたぞ」
面白そうに私の口の端を拭ってくるハルク。
「へ?」
あの後、私ハルクに屋敷に連れて帰ってもらって、ハルクの無事を確認して……それから……
「記憶が無い……」
「そりゃお前が寝たからだ。いや~、びっくりしたぞ? いきなり気絶したんだからな」
「ええ? 本当?」
「俺が嘘ついてると思ってんのか?」
本当は嘘なのだが、ハルクはルリアにわざと意地悪をするように顔を寄せた。
え? ほんとに私寝てたんだ。
「は、ハルク! ねぇ怪我してない? 石割れたんだよ? なんでハルクが人間になってるの? あ、人間じゃ無いか、魔王? 人型になってるの?」
矢継ぎ早に質問する。
ペタペタと体を触ってみるが、今のところ傷らしきものや、血などはなかった。
「おーおー積極的だなぁ。まぁ落ち着けよ」
「は? 落ち着けるわけないよ。だって私の目の前でハルクが割れたんだよ?」
「だーかーらー、俺の封印が解けたの!」
「ドユコト?」
こうして私に説明されたのは、俄に信じがたい事だった。
ハルクは石に封じ込められた魔王で、封印を解くには聖女の魔力が必要だったらしい。そして、聖女ではない誰かに石を割ってもらう必要があったのだそうだ。
「俺は魔王って言われてるが、本当は神の1柱だった。まぁ、その後堕ちたんだけどな。それで、聖女が創られたんだ」
そんな御伽噺のようなお話あるのね……
これが私の感想だった。
「ちなみに元は何を司る神様だったの?」
「ん? 魔法」
「魔法? いま、魔法が使えるのって聖女だけじゃない」
「そ、俺が堕ちたからね」
「マジで?」
「俺が言うんだから信じろよ! それより、もう体調は治ったか?」
ころっと話を変えられて、グイッと抱き寄せられる。
ちょっ顔が近い!
ハルクの赤い瞳で見つめられるとドキドキしてしまう私は、やはりまだ体調が戻っていないのだろうか?
慌てて、腕の中から逃げ出そうとする私をハルクが面白がってますます力を込め、逃げられないようにしてくる。
「はぁはぁ! っ! ハルク! 何考えてるの?」
「何ってそりゃあ、俺の嫁は可愛いなぁとしか考えてないぞ」
かあっと顔が赤くなるのがわかった。
「揶揄わないでってば! ……ふぅ⁉︎」
羞恥が限界に達し、思わず本気で逃げようとした私の唇はハルクによって塞がれていた。
うそ? え? 今、キスされて⁉︎
「ふぁっ! んん⁉︎」
チロリと唇を舐められて、思わず口を開けてしまう。すかさず、ぐりっと捻り入れられたハルクの舌が私の口内を蹂躙した。
奥に出来るだけ縮こまらせた舌を引き摺り出され、ハルクの口内に入れられる。
ヂュッと音を立てて舌を吸われ、強すぎる刺激にチカチカと目の前が瞬いた。
「プハッ⁉︎」
「ん、可愛い。俺から逃げようとするなよ?」
ゼェハァと息が荒い私をぎゅっと抱きしめそう言うハルクは何かを恐れているようだった。
「逃げるわけないよ。それよりもハルク、私のファーストキスとったんから責任とってよ?」
ポンと大きい背中に手を回し、そっと囁きかける。
ゴクッとハルクの喉が鳴った音がした。
「当たり前だ」
○○○
ハルクが魔王だとわかってからも私たちはいつもと変わらない日常を送っていた。
ひとつだけ変わった所といえばハルクが人型になったって事ぐらいだ。
「おい! 魔王に畑仕事をやらせるとかお前だけだぞ⁉︎」
「はいはい、そこの草ちゃんととってね? あ、魔法は使わない! 野菜が変質したの忘れたの⁉︎」
いま、私たちは新しく森の中に作った畑で野菜を作っている。以前、ハルクは楽しようとして魔法を使ったのだがそのせいで妖精ができてしまったのだ。
「まったく、大根抜いたらそれが妖精に変わるなんてびっくりしたんだからね?」
「いいじゃねぇか、仲間が増えて賑やかだろ?」
全く反省した様子のないハルクに、デコピンする。
「おでんが出来なくなったわ!」
「あぁ、あの鍋? って奴だろ?」
ちょっと違うけど、まぁよしとしよう。「あれは美味かった」と言うハルクは、おでんがとてもお気に召したようだ。食事はいらないようなのだが、よく私のご飯を取ってくるので仕方なく2人分作り始めた。
「お前の料理美味いんだよなぁ。あと、エプロン? 着けて料理してるとことか見るとムラッときて、襲いたくなる」
そう宣うハルクは前科持ちだった。ガチで襲ってきたのだ。
「次やったらしめ縄の刑!」
「悪かったって。ま、しょうがないから夜まで我慢してやんよ」
ボッと赤くなる私の頬にチュッとキスをするハルクはとても先程の不機嫌さが嘘のようにご機嫌だった。
「……お手柔らかにお願いします」
「そりゃ無理だ」
・
・
・
・
・
・
・
【完】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このお話を見つけ、最後まで読んでくださってありがとうございましたm(_ _)m
「お、起きたか?」
ハルクの声?
寝ぼけていた脳が覚醒して、飛び起きる。
私、寝てたの⁉︎
「いつの間に……?」
「涎垂れてたぞ」
面白そうに私の口の端を拭ってくるハルク。
「へ?」
あの後、私ハルクに屋敷に連れて帰ってもらって、ハルクの無事を確認して……それから……
「記憶が無い……」
「そりゃお前が寝たからだ。いや~、びっくりしたぞ? いきなり気絶したんだからな」
「ええ? 本当?」
「俺が嘘ついてると思ってんのか?」
本当は嘘なのだが、ハルクはルリアにわざと意地悪をするように顔を寄せた。
え? ほんとに私寝てたんだ。
「は、ハルク! ねぇ怪我してない? 石割れたんだよ? なんでハルクが人間になってるの? あ、人間じゃ無いか、魔王? 人型になってるの?」
矢継ぎ早に質問する。
ペタペタと体を触ってみるが、今のところ傷らしきものや、血などはなかった。
「おーおー積極的だなぁ。まぁ落ち着けよ」
「は? 落ち着けるわけないよ。だって私の目の前でハルクが割れたんだよ?」
「だーかーらー、俺の封印が解けたの!」
「ドユコト?」
こうして私に説明されたのは、俄に信じがたい事だった。
ハルクは石に封じ込められた魔王で、封印を解くには聖女の魔力が必要だったらしい。そして、聖女ではない誰かに石を割ってもらう必要があったのだそうだ。
「俺は魔王って言われてるが、本当は神の1柱だった。まぁ、その後堕ちたんだけどな。それで、聖女が創られたんだ」
そんな御伽噺のようなお話あるのね……
これが私の感想だった。
「ちなみに元は何を司る神様だったの?」
「ん? 魔法」
「魔法? いま、魔法が使えるのって聖女だけじゃない」
「そ、俺が堕ちたからね」
「マジで?」
「俺が言うんだから信じろよ! それより、もう体調は治ったか?」
ころっと話を変えられて、グイッと抱き寄せられる。
ちょっ顔が近い!
ハルクの赤い瞳で見つめられるとドキドキしてしまう私は、やはりまだ体調が戻っていないのだろうか?
慌てて、腕の中から逃げ出そうとする私をハルクが面白がってますます力を込め、逃げられないようにしてくる。
「はぁはぁ! っ! ハルク! 何考えてるの?」
「何ってそりゃあ、俺の嫁は可愛いなぁとしか考えてないぞ」
かあっと顔が赤くなるのがわかった。
「揶揄わないでってば! ……ふぅ⁉︎」
羞恥が限界に達し、思わず本気で逃げようとした私の唇はハルクによって塞がれていた。
うそ? え? 今、キスされて⁉︎
「ふぁっ! んん⁉︎」
チロリと唇を舐められて、思わず口を開けてしまう。すかさず、ぐりっと捻り入れられたハルクの舌が私の口内を蹂躙した。
奥に出来るだけ縮こまらせた舌を引き摺り出され、ハルクの口内に入れられる。
ヂュッと音を立てて舌を吸われ、強すぎる刺激にチカチカと目の前が瞬いた。
「プハッ⁉︎」
「ん、可愛い。俺から逃げようとするなよ?」
ゼェハァと息が荒い私をぎゅっと抱きしめそう言うハルクは何かを恐れているようだった。
「逃げるわけないよ。それよりもハルク、私のファーストキスとったんから責任とってよ?」
ポンと大きい背中に手を回し、そっと囁きかける。
ゴクッとハルクの喉が鳴った音がした。
「当たり前だ」
○○○
ハルクが魔王だとわかってからも私たちはいつもと変わらない日常を送っていた。
ひとつだけ変わった所といえばハルクが人型になったって事ぐらいだ。
「おい! 魔王に畑仕事をやらせるとかお前だけだぞ⁉︎」
「はいはい、そこの草ちゃんととってね? あ、魔法は使わない! 野菜が変質したの忘れたの⁉︎」
いま、私たちは新しく森の中に作った畑で野菜を作っている。以前、ハルクは楽しようとして魔法を使ったのだがそのせいで妖精ができてしまったのだ。
「まったく、大根抜いたらそれが妖精に変わるなんてびっくりしたんだからね?」
「いいじゃねぇか、仲間が増えて賑やかだろ?」
全く反省した様子のないハルクに、デコピンする。
「おでんが出来なくなったわ!」
「あぁ、あの鍋? って奴だろ?」
ちょっと違うけど、まぁよしとしよう。「あれは美味かった」と言うハルクは、おでんがとてもお気に召したようだ。食事はいらないようなのだが、よく私のご飯を取ってくるので仕方なく2人分作り始めた。
「お前の料理美味いんだよなぁ。あと、エプロン? 着けて料理してるとことか見るとムラッときて、襲いたくなる」
そう宣うハルクは前科持ちだった。ガチで襲ってきたのだ。
「次やったらしめ縄の刑!」
「悪かったって。ま、しょうがないから夜まで我慢してやんよ」
ボッと赤くなる私の頬にチュッとキスをするハルクはとても先程の不機嫌さが嘘のようにご機嫌だった。
「……お手柔らかにお願いします」
「そりゃ無理だ」
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【完】
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