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「今日はなんちゃって餃子ーーーー!」
チャッチャラーと言いながら先日拵えたコタツの上に置く。ホクホクと湯気をたてるなんちゃって餃子はとても美味しそうだ。
「くっ、ここでラー油が有れば‼︎」
絶対美味しいのに! と思いながらも一口頬張る。ジュワッと閉じ込めてあった肉汁が口の中に溢れた。
「おいひー!」
すかさず、ハルクが見つけてくれたお米もどきを口一杯に詰め込んだ。
『おい、アホズラになってるぞ』
「うるひゃい!」
『間抜けズラ』
スイっと動かして鏡を目の前に持ってくるハルク。最近やけに活発になってきていた。
「む⁉︎」
鏡の中には、ご飯粒をつけ、ハムスターのように頬を膨らませてモグモグと咀嚼する美少女。せっかくの美貌が台無しである。
うむ、もう少し上品に食べるとするか……
『分かったか?』
「……」
『ハンっ! 分かったようだな‼︎』
……この石っころめ!
勝ち誇った声音でブンブンと私の前に鏡を泳がせるハルク。鏡の中には額に青筋を浮かべた美少女が写っていた。
「ハルク、そんなに魔力使って大丈夫なの?」
『あん? 後で貰うからいいんだよ』
その言葉にニヤリとする。
「今日はあげない」
『げぇっ⁉︎』
だーって意地悪してきたもんね~?
「あーげない! せいぜい反省してるんだね‼︎ はーっはっはっは‼︎」
『あーあ、もし魔力が回復したらお前にとっておきの事を教えてやろうと思ったのに……』
なに⁉︎ ハルクが教えてくれる事だと⁉︎
今まで、ハルクは私の日本食材料探しに一役買ってくれていた。
今回もそうなのだろうと思い込んだ私は即座に魔力を渡した。
『はぁ~美味い!』
「で? なんなの? とっておきの事って!」
『後20分後にリリアナが来るぞ』
「……え?」
『どうした? 準備しなくてもいいのか? 餃子ってのは匂いがきついんだろう? 消さなくてもいいのか?』
面白がるような声音で言われる。コイツ……!
ありがたいけどなんか損した気分になるのは私だけなのだろうか⁉︎
慌てて立ち上がり、換気扇をつける。そして、汚れてもいい服に着替え魔法をかけた。
「あーあ、ぽっちゃりさんになっちゃった……お腹の肉が見下ろさなくても見えるって凄くないか?」
『結構すごい事だと思うぞ。今のお前は正真正銘のデブスだ』
褒められているはずなのにそう感じない。寧ろ貶されているように感じる。後でハルクに布を被せておこう。私はそう誓った。意味のない単なる嫌がらせだが、何故かそうしたくなったのだ。
「ああ、ご飯が冷める……」
『諦めろ』
「念願の餃子だったのに……」
『もうリリアナが玄関先にいるぞ』
「はぁぁぁ……」
ハルクの声に急かされながら私は仕方なく扉を開けたのだった。
チャッチャラーと言いながら先日拵えたコタツの上に置く。ホクホクと湯気をたてるなんちゃって餃子はとても美味しそうだ。
「くっ、ここでラー油が有れば‼︎」
絶対美味しいのに! と思いながらも一口頬張る。ジュワッと閉じ込めてあった肉汁が口の中に溢れた。
「おいひー!」
すかさず、ハルクが見つけてくれたお米もどきを口一杯に詰め込んだ。
『おい、アホズラになってるぞ』
「うるひゃい!」
『間抜けズラ』
スイっと動かして鏡を目の前に持ってくるハルク。最近やけに活発になってきていた。
「む⁉︎」
鏡の中には、ご飯粒をつけ、ハムスターのように頬を膨らませてモグモグと咀嚼する美少女。せっかくの美貌が台無しである。
うむ、もう少し上品に食べるとするか……
『分かったか?』
「……」
『ハンっ! 分かったようだな‼︎』
……この石っころめ!
勝ち誇った声音でブンブンと私の前に鏡を泳がせるハルク。鏡の中には額に青筋を浮かべた美少女が写っていた。
「ハルク、そんなに魔力使って大丈夫なの?」
『あん? 後で貰うからいいんだよ』
その言葉にニヤリとする。
「今日はあげない」
『げぇっ⁉︎』
だーって意地悪してきたもんね~?
「あーげない! せいぜい反省してるんだね‼︎ はーっはっはっは‼︎」
『あーあ、もし魔力が回復したらお前にとっておきの事を教えてやろうと思ったのに……』
なに⁉︎ ハルクが教えてくれる事だと⁉︎
今まで、ハルクは私の日本食材料探しに一役買ってくれていた。
今回もそうなのだろうと思い込んだ私は即座に魔力を渡した。
『はぁ~美味い!』
「で? なんなの? とっておきの事って!」
『後20分後にリリアナが来るぞ』
「……え?」
『どうした? 準備しなくてもいいのか? 餃子ってのは匂いがきついんだろう? 消さなくてもいいのか?』
面白がるような声音で言われる。コイツ……!
ありがたいけどなんか損した気分になるのは私だけなのだろうか⁉︎
慌てて立ち上がり、換気扇をつける。そして、汚れてもいい服に着替え魔法をかけた。
「あーあ、ぽっちゃりさんになっちゃった……お腹の肉が見下ろさなくても見えるって凄くないか?」
『結構すごい事だと思うぞ。今のお前は正真正銘のデブスだ』
褒められているはずなのにそう感じない。寧ろ貶されているように感じる。後でハルクに布を被せておこう。私はそう誓った。意味のない単なる嫌がらせだが、何故かそうしたくなったのだ。
「ああ、ご飯が冷める……」
『諦めろ』
「念願の餃子だったのに……」
『もうリリアナが玄関先にいるぞ』
「はぁぁぁ……」
ハルクの声に急かされながら私は仕方なく扉を開けたのだった。
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