上 下
14 / 18

13.

しおりを挟む
「おいおい、お前何匹殺してんだよ」
「ん~100から数えてない!」
「俺のも残しとけよ……なっ! うっし! コレで最後か」

 ザシュッと襲いかかってきた最後の1匹を切り捨てるダヤラ。

 3珠士達は迫り来る魔物達をモノともせず、森の中を突き進んでいた。

「しっかし便利だよな。聖教会サマのお陰で見つけやすいぜ」

 チラリとルルブが持っている道具に目をやるダラヤ。聖教会で使われている聖結界を感知する道具だ。去り際に土産として置いて行ったらしい。

「たしかにね~、早く教えてくれたらよかったのに」
「そこはまぁ何かしら事情があったのでしょうね」

 いつものように不満そうに文句を言うナバラをルルブが嗜めた。

「はぁ、もう僕飽きた」
「そんな事を言わないでください。私だって飽きましたよ」

 面倒くさそうに溜息を吐くルルブに「へぇ」とナバラが反応した。

 と言うのも、ルルブは完璧主義な所があり、こうして弱音を吐くのは珍しいからである。

 弱っちい魔物しかいねぇから飽きたのかな~なんて思いながらナバラは呑気にブンブンと大剣を振り回していた。

「おいおい、お二人サンヨォ。そんなだらけていいのか? 準備しろ、攻撃がくるぞ!」
「「え?」」

 バッといきなり臨戦態勢を取ったリーダーのダヤラにキョトンとする2人。
 何も感じられないからだ。
 しかし、長年共に過ごしていた中で2人はダヤラの言う事が正しいのを知っていた。

上級土精霊・防御ハイスエロ・ディフェーザ!」

 グルンとルルブを中心にダヤラとナバラを囲むようにして巨大な石の要塞が出現する。

「上を厳重に塞げ!」
「わかりました」
「それからナバラ、もう一つ防御を張れ」
「はーい。剣風エペ・ウィンド

 ダヤラの指示に従い2人が動く。

 ズズズ……と言う音を立てて、要塞の上が動き天井が出現した。

 それに重ねて、ナラバが上に向かって大剣をグルグルと振り回す。
 次第にナラバの手から離れ、ブゥゥンと唸るそれは、風の魔法が付与されており、上から近づくものを肉薄するモノとなっていた。

「まだだ、コレだけじゃ生き残れねぇ。結晶防御魔法クリスタルザシオン!」

 剣風の下に、ピキピキと音を立てて透明な結晶が広がる。その結晶の名前は日本で言うところのダイアモンドだった。それが3人を守るように厚さ1mほどまで膨張する。

「来た‼︎」

 ゴゴゴゴゴゴッ!

「うわぁ、本当だったみたいだね」
「コレは……⁉︎」
「余波だけでコレだ。しかもご丁寧に俺達を狙ってきてやがる。着地点も折り込み済みみたいだな。気合い入れろーーーーーーー! あと3秒ほどでぶち当たるぞ!」

 その直後、その何かは3人の展開した防御壁にぶち当たった。

 ズガァンッ! ゴガガガガガガガガガ……
 
「うわぁ、私の要塞が壊されました!」

 パキィーンッ‼︎ 

「僕の剣がぁー……壊れた……」

 グスグスと泣き出すナバラと、呆然とした顔のルルブ。

「くそがぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 ガッガガガガガガガガガッ‼︎

 2人の様子を見たダヤラが叫ぶ。

「持ち堪えろぉぉぉぉぉぉおーーーーーーー‼︎」

 ガガガッ……バキンッ!

 そんな願いも虚しく、ダヤラの障壁は崩された。

「ちぃっ!」

 舌打ちをしたダヤラは剣を抜き去り、2人を守るように臨戦態勢を取る。が、

「あぁ?」

 攻撃は止まっていた。ブワッと3人に風が当たる。

 周囲には余波で吹き飛ばされた木々の残骸があるだけ。間一髪で命拾いをしたのだ。

「助かった?」
「みたいですね」
「ふざけてやがる。あの攻撃……何も残ってないってことは遠距離攻撃だ。最後の風からして……空気弾。舐めてんのかぁ⁉︎」

 そろりと顔を上げてキョロキョロと見回す2人を置いて、ダヤラは怒り狂っていた。

「こんなんできる奴がいるんだったら俺らはバカにされただけだ‼︎ おもしれぇ、お前ら行くぞ‼︎」
「え、僕剣が無いんだけど……」
「しょうがありません。ダヤラがこうと決めたらテゴでも曲げませんから。ついて行きましょう? ついでに私達が何故生き残れたのかも知りたいですし……」

 ズンズンと森の中に入るダヤラと、それを追いかけるナバラの姿を目で追いかけながら、ポツリとルルブは呟いた。

ーーあの魔法私達に届く寸前で消えましたからね……ーー

 そして、聖教会からもらった聖結界を感知する魔道具は木っ端微塵になっていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前は聖女ではない!」と妹に吹き込まれた王子に婚約破棄されました。はい、聖女ではなく、『大聖女』ですが何か?

つくも
恋愛
王国リンカーンの王女であるセシリア。セシリアは聖女として王国を支えてきました。しかし、腹違いの妹に「本当の聖女ではない」と吹き込まれた婚約者の王子に婚約破棄をされ、追放されてしまうのです。 そんな時、隣国の王宮にセシリアは『大聖女』としてスカウトされます。そう、セシリアはただの聖女を超えた存在『大聖女』だったのです。 王宮でセシリアは王子に溺愛され、『大聖女』として皆から慕われます。小国はセシリアの力によりどんどん発展していき、大国に成長するのです。 一方、その頃、聖女として代わりの仕事を担うはずだった妹は失敗の連続。彼女にセシリアの代わりは荷が重すぎたようです。次第に王国は衰えていき、婚約者の王子からは婚約破棄され、最後には滅亡していくのです。 これは聖女ではないと追放されたセシリアが、ホワイトな王宮で大聖女として皆から慕われ、幸せになるお話です。

(完結)大聖女を頑張っていた私が悪役令嬢であると勝手に決めつけられて婚約破棄されてしまいました。その子に任せたらあなたの人生は終わりですよ。

しまうま弁当
恋愛
メドリス伯爵家の第一令嬢であるマリーは突然婚約者のフェルド第一王太子から「真実の愛を見つけたんだ」と言われて婚約破棄を宣言されるのでした。 フェルド王太子の新しいお相手はマグカルタ男爵家のスザンヌだったのですが、そのスザンヌが私の事を悪役令嬢と言い出して、私を大聖女の地位から追い出そうとしたのです。 マリーはフェルドにスザンヌを大聖女にしたらあなたの人生が終わってしまいますよと忠告したが、フェルドは全くマリーの言う事に耳を傾けませんでした。 そしてマリー具体的な理由は何も言われずにマリーが悪役令嬢に見えるというフワッとした理由で大聖女の地位まで追い出されてしまうのでした。 大聖女の地位を追われ婚約破棄をされたマリーは幼馴染で公爵家の跡取りであるミハエル・グスタリアの所に身を寄せるのでした。 一方マリーを婚約破棄してご満悦のフェルドはスザンヌを大聖女につかせるのでした。 スザンヌも自信満々で大聖女の地位を受けるのでした。 そこからフェルドとスザンヌの転落人生が始まる事も知らずに。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます

夜桜
恋愛
 共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。  一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。

お望み通りに婚約破棄したのに嫌がらせを受けるので、ちょっと行動を起こしてみた。

夢草 蝶
恋愛
 婚約破棄をしたのに、元婚約者の浮気相手から嫌がらせを受けている。  流石に疲れてきたある日。  靴箱に入っていた呼び出し状を私は──。

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

冷遇された王女は隣国で力を発揮する

高瀬ゆみ
恋愛
セシリアは王女でありながら離宮に隔離されている。 父以外の家族にはいないものとして扱われ、唯一顔を見せる妹には好き放題言われて馬鹿にされている。 そんな中、公爵家の子息から求婚され、幸せになれると思ったのも束の間――それを知った妹に相手を奪われてしまう。 今までの鬱憤が爆発したセシリアは、自国での幸せを諦めて、凶帝と恐れられる隣国の皇帝に嫁ぐことを決意する。 自分に正直に生きることを決めたセシリアは、思いがけず隣国で才能が開花する。 一方、セシリアがいなくなった国では様々な異変が起こり始めて……

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

処理中です...