上 下
13 / 19

13.

しおりを挟む
 うぅ……頭が痛……くはないな。頭よりどっちかというとあの睡眠薬の臭いが残って吐きそう。

「うげぇぇぇ! はな、鼻の奥に臭いが残ってる。くっせぇぇぇぇ‼︎ 変態見つけたらただじゃおかん!」

 ここをこうしてこうやってズドンッだ! 脳内シュミレーションで変態をボッコボコにしてやった。油断していた私が悪いんだけれども……いや、全面的に私がアホだった。

「アホ……信じたくないけどアホ。前世からアホだったけどまさか転生しても直らないとは! いっそのこと清々しいわ」

 よく私は前世で「○○ちゃんって超天然だよねぇ~」と言われていた。しかし、それで嬉しがっていてはいけない。アホと超天然はイコールで結ばれているのだ! それに気づいたのは高校生の時。母に「私って超天然って言われるんだよねぇ~」と、当時の私はそれが褒められていると思い自慢した。そして返ってきた言葉が「アンタそれアホって言われてるのと一緒よ? バカねぇ~」である。

 沈みしたが、その後すぐに復活した。そう、今さっきのように。

「ま、ポジティブ思考(←※能天気)が私の強みだし! いいさ! 今回もなんとかなる‼︎」

 覚悟を決めた私はとりあえず外に出ることにした。この部屋ね、すんごい豪華。そう、どこかの王宮みたいに……王宮……おうきゅう? スパイさんの雇い主は誰? 確か黒髪の金色の瞳を持ったーー

「あの壁に飾られている絵の人だった気がしなくもない」

  もしかして……?

 ある事に気づいた私は思わずベッドのそばにあるなんの変哲もないはずの棚を引くのではなく押してみた。するとガコッという音がして棚が後ろへ下がり、それと同時に部屋の壁の一部が盛り上がる。

「ほほぅ、当たりってわけね」

 盛り上がった壁を後ろに引けば、ひと1人が通れるほどの空間が現れた。それをみて私は確信する。ここはーー帝国の客室兼、誰かを閉じ込めるための部屋だ。

 ヒロインが誘拐された時に閉じ込められ、隠されたこの通路を見つけ逃げ出すのだ。そして、その途中で偶然作戦会議を盗み聞きし、戦争に逆転勝利するのだがそれはまた別の話である。

 そして、私は逃げようと思ったけれどやめた。だってどうせ捕まるから。あの変態野郎が凄腕なのもあるかもしれないが、この場合どうせなら交渉してやればいいと思ったのだ。

「ふふっ、アホで能天気な性格だけど、くっさい睡眠薬盛られた恨みは晴らす‼︎」

 とりあえず、ベッドから降りて私は変態野郎がいる場所へと向かった。勿論秘密の通路を使って。

「確かここら辺に……お! あった‼︎」

 手探りで取手を探して見つけた私はゆっくりと押していく。キィィという音と共に扉が開いた。そーっと覗いてみれば居眠り中の変態野郎が‼︎ どうやらこの部屋で合っていたようだ。

 ヒャッハーーーーーーー‼︎ 復讐祭だぜ‼︎ 私の脳内はチンピラ共でいっぱいになった。

「くらえ! 特製爆弾‼︎」

 そのテンションのまま、小声で叫んで変態野郎の顔に投げつける。ボブっと音を立てて変態の顔に直撃し舞い上がる砂埃に似た何か。

「スー,スー……⁉︎ ゴホッ⁉︎ なんだこれ⁉︎ ハックショイ‼︎ うわ、辛い‼︎」

 わたわたしている変態さんの姿に私の中の怒りゲージが下がる。ちょうどやりすぎた気がしなくもないが……まぁいっか。

 私が変態に投げたのは先程歩いている時、偶然見つけた厨房で、コッソリとお借りした胡椒である。

 片手で出来るだけ掴んできたのでおおよそ大さじ4ぐらいの量の胡椒が変態にかかった。今、変態の周囲は胡椒の煙でいっぱいである。

「ハックショイ! うぅ~! 鼻がムズムズする!」

 いまだ胡椒地獄から解放されていない変態をみて私は悟った。

 よし、一旦部屋に戻ろう! ここにいたら自分も胡椒の巻き添えを食らってしまう、と。

「じゃ、しつれーしました~」
「待て」
「げぇ⁉︎」

 引っ込もうとした瞬間、どこからか手が伸びてきて私の首をガシリと掴んだ。その様子はさながら首を押さえられた猫である。

 しばらくの間フリーズしていた私だが、恐る恐る頭をあげて首を掴んできた人物を見ると、肖像画そっくりの人物と目があった。

 オーノー……死んだ。オワタ……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

第二部の悪役令嬢がシナリオ開始前に邪神の封印を解いたら闇落ち回避は出来ますか?~王子様との婚約解消はいつでも大歓迎です~

斯波
恋愛
辺境伯令嬢ウェスパルは王家主催のお茶会で見知らぬ令嬢達に嫌味を言われ、すっかり王都への苦手意識が出来上がってしまった。母に泣きついて予定よりも早く領地に帰ることになったが、五年後、学園入学のために再び王都を訪れなければならないと思うと憂鬱でたまらない。泣き叫ぶ兄を横目に地元へと戻ったウェスパルは新鮮な空気を吸い込むと同時に、自らの中に眠っていた前世の記憶を思い出した。 「やっば、私、悪役令嬢じゃん。しかもブラックサイドの方」 ウェスパル=シルヴェスターは三部作で構成される乙女ゲームの第二部 ブラックsideに登場する悪役令嬢だったのだ。第一部の悪役令嬢とは違い、ウェスパルのラストは断罪ではなく闇落ちである。彼女は辺境伯領に封印された邪神を復活させ、国を滅ぼそうとするのだ。 ヒロインが第一部の攻略者とくっついてくれればウェスパルは確実に闇落ちを免れる。だがプレイヤーの推しに左右されることのないヒロインが六人中誰を選ぶかはその時になってみないと分からない。もしかしたら誰も選ばないかもしれないが、そこまで待っていられるほど気が長くない。 ヒロインの行動に関わらず、絶対に闇落ちを回避する方法はないかと考え、一つの名案? が頭に浮かんだ。 「そうだ、邪神を仲間に引き入れよう」 闇落ちしたくない悪役令嬢が未来の邪神を仲間にしたら、学園入学前からいろいろ変わってしまった話。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】妹ざまぁ小説の主人公に転生した。徹底的にやって差し上げます。

鏑木 うりこ
恋愛
「アンゼリカ・ザザーラン、お前との婚約を破棄させてもらう!」  ええ、わかっていますとも。私はこの瞬間の為にずっと準備をしてきましたから。  私の婚約者であったマルセル王太子に寄り添う義妹のリルファ。何もかも私が読んでいたざまぁ系小説と一緒ね。  内容を知っている私が、ざまぁしてやる側の姉に転生したって言うことはそう言うことよね?私は小説のアンゼリカほど、気弱でも大人しくもないの。  やるからには徹底的にやらせていただきますわ!  HOT1位、恋愛1位、人気1位ありがとうございます!こんなに高順位は私史上初めてでものすごく光栄です!うわーうわー! 文字数45.000ほどで2021年12月頃の完結済み中編小説となります。  

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい

風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」 顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。 裏表のあるの妹のお世話はもううんざり! 側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ! そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて―― それって側妃がやることじゃないでしょう!? ※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。

処理中です...