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人間より性欲の強い動物などいないだろう。

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「や……っ、やだ、ヴィー、やだ」
 もう何かもよくわかっていないようにクリスが暴れる。私の髪を掴む。脇腹を蹴られる。どれも大した痛みではなかった。こんなにも弱々しく、愛らしい。
 早く貫いてやりたい。
 揺さぶってやりたい。何度も何度も何度も中を突き上げてたっぷり注いでやりたい。
 だがもう少し。
「もう少し……」
「なかに、ぃ……、」
 口づけをして黙らせた。煽らないでほしい。あと少し、あと少し。性器を押し込みたいのにできないから、かわりに指でクリスの体を開く。ぬぷりと溶けきった肉に包まれて、体が熱くなる。
「……んっ、ヴィー……」
 切なく呼ばれて理性が揺れる。ぐらぐら、実際に目の前が揺れて見えるほどだ。まだもう少し。
 数える。
 百。
 あるいは五十。
 もしかすると十かもしれない。二十の次が十一になり、一の次に位が上がる。ろくな頭をしていない。下半身だけは元気に、ごつごつとクリスにぶつかっている。ぶつけている。
 まだ。
「はあ」
 もう少し。
 熱が溢れる。クリスが嫌がる。煽られる。
「……じっとして」
 少しばかり怒りが出てしまうのも許されたい。そのくらいに、もうめちゃくちゃだった。頭の中まで性器に変わって、ひどく凝っているのだ。
 どうしようもない私はひたすらクリスの口を吸う。かくかくと腰を押し付ける。指でえぐる。ぐちゃりと音がする。頭の中まで。
「いい子でいないと、犯しますよ」
 ばたばたと暴れる足を捕まえて、低く脅した。じっとしていなさい。頼むから。
 しかしクリスは濡れすぎた赤い口を開いて「おかして」と吐息で言った。ああもう。
 もう。
 いくつ数えた?
「……っああああ!」
「ぐっ……う、」
 突き入れた一瞬後に天国が見える。視界が白くなった。放出をこらえると全身から汗が出た。濡れた肌に布がまとわりつき、これは脱ぐのに苦労しそうだ。
 いや、もういい。
 破ってしまえ。
「あ……っふ」
 とろとろとした表情のままでクリスが笑った。あなたのせいですよと罵倒してやりたい。いつもいつも、服がだめになってばかりだ。
 これでも王子の護衛であるから、まともな格好をしなければならない。出費が痛い。ただの布切れになっていく服を半端に落として、ずぷりと入るだけ入った。
「ひぁっ、あ、ぅうう!」
 あえぐ声が尾を引く。
「う……ああ……」
 硬直した体がゆっくり弛緩し、ぶるりと震えてまた固くなる。そのたび私の欲を締め上げ愛撫するので、私は動かずにいられない。
「……っ」
 突き入れて引き出す。いくらか繰り返したあとで、ようやく衝動が落ち着く。ずぶずぶ入っていくさまを見下ろした。たまらない。
 焦燥が落ち着いても熱はあがる。
 足を大きく上げさせ、ぬっちりと私を収めた場所を見た。きゅっと私の形にすぼまったそこは、ひくひくと震えている。濡れに濡れてテラテラと光り、ずぬうと抜いても、ぬちっと攻めても、私を気持ちよくさせる場所だった。
「……! ……!!」
 クリスはもう声もないようだ。
 私は彼に出して入れることだけで頭がいっぱいで、何も考えていない。熱に熱を突きこむ。ぐちゅると音をたてて、気持ちいいところにまとわりつく。
「っは……、は」
 獣のように呼吸の音だけを漏らし、腰を振っていた。
「……っく」
 放出の一瞬前に我を取り戻し、一瞬だけ、大丈夫だろうかと思った。きちんと数えただろうか。薬は効いているだろうか。わからない。
 わからないがもう、私の種はクリスの中に吐き出され、クリスはそれを感じて、離すまいと両手両足に力を入れて私にしがみついてきた。
「っ……クリス」
 どうしようもない。
「あ……っう、ん……っ」
 恐ろしくがむしゃらな腕に拘束され、私は小刻みに、それでもこらえながら、みっともなくわずかずつ吐き出した。クリスが頼りない声をあげる。中が嬉しそうにうごめく。
「も……、と……」
「クリス」
「もっと、出して……いっぱい」
 恍惚とした表情で告げてくるので、私は息を吐いた。顎をすくってとろけた口を吸う。ひとまず一度搾り取ったせいか、目眩のするような甘さが薄れていた。
 クリスの力が抜けて腕が落ちると、私のものもクリスの中から抜け落ちた。これほどぐちゃぐちゃになっては留まれない。
「やだ……もっと」
 しかし切なく呼ばれて、二度目の熱は間もおかずに高まった。
 全く不思議なものだ。
 獣人とて、人より性欲が強いというわけではない。種によってはそういうこともあるが、それでも年中発情している人間より性欲の強い動物などいないだろう。
 私も淡白な質だったはずなのだ。
 しかしクリスに誘いかけられると、体の水分をすべて吐き出すまで、挑みかかってしまいそうになる。
「……お望みのとおりに」
 一度目よりはゆるい屹立を、ぐにりとクリスの穴に押し付ける。あ、あ、ともどかしそうに声をあげながら、クリスは身を捩り、にゅるにゅると引き込むようにそれを受け入れた。
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