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「殿下、百、数えましょう」
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「殿下、百、数えましょう」
「ひとつだって待てない」
「……じゃあ、十」
「いやだ。ヴィー、手を」
ぶつかって離れるのは切なくてならない。ヴィーが触れた部分が灼けて、もうもとに戻れないのだ。もう彼がいなければいけないのだ。
体がじくじくとヴィーを求めている。体の奥だ。ここ。手を。ヴィーの手を掴む。抗われる。
「手……」
「殿下、十だけ。いち、にい」
「手」
「……お預けです、殿下」
「触って」
もうこんなになっているのに、我慢できるはずがない。僕は仕方なく自分の手で、こぼれそうなぬかるみに触れた。
「……はう」
そこはぬるりと熱く、痺れがひどくなった。腹の奥が喜んでいる。だが違う。これでは足りない。
「ヴィー」
彼の手でなければ、彼の体でなければ、彼の熱でなければいけない。ひとりでは熱を上げることも下げることもできないのだ。
「殿下。……少しだけですよ」
「すこし」
「少しだけ」
「……っ!」
ヴィーの手が触れた。
雷に撃たれたように、僕は震えた。そう、これ。これがほしかった。指の先、僕のものとは違う、ヴィーの指だ。彼が遺志を持って動かす指だ。
「ひゃ……っう……」
びくびく震えて止まらない。あまりに体が思い通りにならず、僕は首を振った。気持ちよさはいつまでも尽きず、その勢いは増すばかりだ。
「……少しだけ。殿下、あまり……煽らないで」
僕は何もしていない。
ただ気持ちがいいだけだ。もっと。もっと。触って、でも恐ろしい。どうなるのかわからない。
ヴィーの指が動くたび、僕は揺れる。揺らされる。
その手がひどく濡れているのが、急に残念になった。彼の指の感触がゆるい。だからもっと強く、押して、こすって。
「少しだけですよ」
いっぱいがいい。
だが恐ろしさもあって、口に出来ない。ぱくりと口を開くと甘い唾液がとろりと落ちて、みっともない。
ヴィーがそれを啜ってくれた。
「んぅ」
ちゅう、と吸い上げられる。乾く、また濡れる。
上も下もどろどろで、居所の定まりようがない。濡れて、滑って、がたがた揺れるので、座席から落ちそうだった。ヴィーの腕が支えている。もっと。
「ぁ……ふ……」
指と舌でこすって。
「……すこしだけ」
ヴィーが自分に言い聞かせるように呟いた。少し。そう少し。どれだけ触れてもどれだけ交わっても少しだ。ぜんぜん足りない。
中まで来て、もっと奥がいい。
こんなに濡れている。
濡れてただれて、欲しがっている。早く。
「きて」
ヴィーは眉を寄せてもう一度、少しだけ、と言ったようだった。どうでもいい。言葉なんて。ヴィーの呼吸は早く、熱は上がり続けるばかりだ。
君の濡れたところも、はやく。
手をのばすのに、まるで他愛なく退けられた。いやだ。
「触る……」
「だめです」
ひどい。
意地悪だ。
「だめといったら、だめです」
強情だ。
僕は身を捩り、なんとか手を使わずに体を擦り付けた。
「は、ぁあ……」
ヴィーだ。
これが、この男が、欲しいのだ。男の、この男だけの匂い。熱。触れれば触れるほどそれがわかる。僕はこの男が欲しい。ほしい。ほしい。
「だまって」
何も喋っていない。ほしい、ほしい。頭の中はそれだけでいっぱいだ。ゆびを、もっと奥へ。
「だめです」
「うっ……」
ひどい。
「……少しだけ、我慢しなさい」
「いやだ。できない」
こんなにとろとろで、とどまるべき場所などない。こぼれていく。ヴィーはもっと奥に来てくれないといけない。もっともっと。
こすって。
気持ちよくして。
疼いてたまらないのだ、そこが。指をもう少しだけ奥に進めて、そうすればねっとりと絡みつくのがわかるのだ。奥に欲しいから、とても。
もう体はぬるぬるの穴になっているので、はまるものがないといけない。君のそれをちょうだい。
指でもいいけど。
いや、だめだ。
もっといいのを。
「殿下、こちらを見てください」
「え……?」
ずっと見ている。しかし下がっていた視線を上げると、ヴィーの瞳とぶつかった。熱情そのものみたいな瞳だ。舐めて、口に含んで、舌で転がしたい。そのくらいしっとりと濡れて、甘そうだった。
「は」
「入れますよ」
「えっ……あ、あぁ!」
一気に腹を開かれた。
溜まりに溜まった潤いが、ぶしゅりと外に押し出された。僕は背をのけぞらせ、びくびくと震えるだけの樽になった。
「ああ……」
気持ちいい。
気持ちよかった。
「は、ふ……」
とてもよかった。
嘘のように熱が下がって、僕はぼんやり視線を下げた。足の間にあるのはヴィーの手だ。指だ。彼のものではなく、まとめた指を押し込まれただけだった。
喉が鳴る。
熱情は静まったが、欲求は収まらない。
「……ヴィー」
「……落ち着きましたか?」
「まったく。それより……」
「はい」
「君が冷静なので……いやだな……」
「それは、ご容赦を。もうしばらくで着きます」
「ああ、うん……うん……」
身を起こして、ぼんやり馬車の窓から外を見ると、もうずいぶん離宮のそばにまで来ていた。
「殿下」
「んっ、なに」
引っ張られて座席に押し付けられる。
「その顔を、誰かに見られてはことです」
「……そんな変な顔してる?」
「ええ、とてもいやらしい」
「妬いた?」
「妬きました。……なんですか、ご不満ですか」
まあ。そう冷静に言われても、それはそうだ。しかし足を絡めてぎゅっとしてやると、彼のものが膨らんでいるのがわかった。
そうか。
なら納得しよう。
「我慢は体に悪いよ」
「仕方ないでしょう。まともに生きるというのは、難しいものなのです」
「……そっか」
そうかもしれない。僕はゆっくり息を吸って、吐き、ぬるぬるの体が気持ち悪かったが、なんとか衣服を整えた。
「ヴィー、それ、どうするの」
あきらかに膨らんだ股間を見て、少し笑えた。
「誰もこんな場所を見ていません」
「そうかな。僕はよく見てる」
「あなただけですよ」
それはその返しで使う言葉ではない気がするな。
ぼんやり考えていると馬車が止まり、僕は気合を入れてなんとか立ち上がった。が、歩き出す前に床が失われる。
「えっ」
「あなたは具合がお悪いのですから」
「ああ、うん、そう……そうだね。そうだ」
そうして僕はヴィーに抱えられて馬車を降りた。なるほどこれなら、僕以外の誰もヴィーの股間に意識は向けないだろう。
「ひとつだって待てない」
「……じゃあ、十」
「いやだ。ヴィー、手を」
ぶつかって離れるのは切なくてならない。ヴィーが触れた部分が灼けて、もうもとに戻れないのだ。もう彼がいなければいけないのだ。
体がじくじくとヴィーを求めている。体の奥だ。ここ。手を。ヴィーの手を掴む。抗われる。
「手……」
「殿下、十だけ。いち、にい」
「手」
「……お預けです、殿下」
「触って」
もうこんなになっているのに、我慢できるはずがない。僕は仕方なく自分の手で、こぼれそうなぬかるみに触れた。
「……はう」
そこはぬるりと熱く、痺れがひどくなった。腹の奥が喜んでいる。だが違う。これでは足りない。
「ヴィー」
彼の手でなければ、彼の体でなければ、彼の熱でなければいけない。ひとりでは熱を上げることも下げることもできないのだ。
「殿下。……少しだけですよ」
「すこし」
「少しだけ」
「……っ!」
ヴィーの手が触れた。
雷に撃たれたように、僕は震えた。そう、これ。これがほしかった。指の先、僕のものとは違う、ヴィーの指だ。彼が遺志を持って動かす指だ。
「ひゃ……っう……」
びくびく震えて止まらない。あまりに体が思い通りにならず、僕は首を振った。気持ちよさはいつまでも尽きず、その勢いは増すばかりだ。
「……少しだけ。殿下、あまり……煽らないで」
僕は何もしていない。
ただ気持ちがいいだけだ。もっと。もっと。触って、でも恐ろしい。どうなるのかわからない。
ヴィーの指が動くたび、僕は揺れる。揺らされる。
その手がひどく濡れているのが、急に残念になった。彼の指の感触がゆるい。だからもっと強く、押して、こすって。
「少しだけですよ」
いっぱいがいい。
だが恐ろしさもあって、口に出来ない。ぱくりと口を開くと甘い唾液がとろりと落ちて、みっともない。
ヴィーがそれを啜ってくれた。
「んぅ」
ちゅう、と吸い上げられる。乾く、また濡れる。
上も下もどろどろで、居所の定まりようがない。濡れて、滑って、がたがた揺れるので、座席から落ちそうだった。ヴィーの腕が支えている。もっと。
「ぁ……ふ……」
指と舌でこすって。
「……すこしだけ」
ヴィーが自分に言い聞かせるように呟いた。少し。そう少し。どれだけ触れてもどれだけ交わっても少しだ。ぜんぜん足りない。
中まで来て、もっと奥がいい。
こんなに濡れている。
濡れてただれて、欲しがっている。早く。
「きて」
ヴィーは眉を寄せてもう一度、少しだけ、と言ったようだった。どうでもいい。言葉なんて。ヴィーの呼吸は早く、熱は上がり続けるばかりだ。
君の濡れたところも、はやく。
手をのばすのに、まるで他愛なく退けられた。いやだ。
「触る……」
「だめです」
ひどい。
意地悪だ。
「だめといったら、だめです」
強情だ。
僕は身を捩り、なんとか手を使わずに体を擦り付けた。
「は、ぁあ……」
ヴィーだ。
これが、この男が、欲しいのだ。男の、この男だけの匂い。熱。触れれば触れるほどそれがわかる。僕はこの男が欲しい。ほしい。ほしい。
「だまって」
何も喋っていない。ほしい、ほしい。頭の中はそれだけでいっぱいだ。ゆびを、もっと奥へ。
「だめです」
「うっ……」
ひどい。
「……少しだけ、我慢しなさい」
「いやだ。できない」
こんなにとろとろで、とどまるべき場所などない。こぼれていく。ヴィーはもっと奥に来てくれないといけない。もっともっと。
こすって。
気持ちよくして。
疼いてたまらないのだ、そこが。指をもう少しだけ奥に進めて、そうすればねっとりと絡みつくのがわかるのだ。奥に欲しいから、とても。
もう体はぬるぬるの穴になっているので、はまるものがないといけない。君のそれをちょうだい。
指でもいいけど。
いや、だめだ。
もっといいのを。
「殿下、こちらを見てください」
「え……?」
ずっと見ている。しかし下がっていた視線を上げると、ヴィーの瞳とぶつかった。熱情そのものみたいな瞳だ。舐めて、口に含んで、舌で転がしたい。そのくらいしっとりと濡れて、甘そうだった。
「は」
「入れますよ」
「えっ……あ、あぁ!」
一気に腹を開かれた。
溜まりに溜まった潤いが、ぶしゅりと外に押し出された。僕は背をのけぞらせ、びくびくと震えるだけの樽になった。
「ああ……」
気持ちいい。
気持ちよかった。
「は、ふ……」
とてもよかった。
嘘のように熱が下がって、僕はぼんやり視線を下げた。足の間にあるのはヴィーの手だ。指だ。彼のものではなく、まとめた指を押し込まれただけだった。
喉が鳴る。
熱情は静まったが、欲求は収まらない。
「……ヴィー」
「……落ち着きましたか?」
「まったく。それより……」
「はい」
「君が冷静なので……いやだな……」
「それは、ご容赦を。もうしばらくで着きます」
「ああ、うん……うん……」
身を起こして、ぼんやり馬車の窓から外を見ると、もうずいぶん離宮のそばにまで来ていた。
「殿下」
「んっ、なに」
引っ張られて座席に押し付けられる。
「その顔を、誰かに見られてはことです」
「……そんな変な顔してる?」
「ええ、とてもいやらしい」
「妬いた?」
「妬きました。……なんですか、ご不満ですか」
まあ。そう冷静に言われても、それはそうだ。しかし足を絡めてぎゅっとしてやると、彼のものが膨らんでいるのがわかった。
そうか。
なら納得しよう。
「我慢は体に悪いよ」
「仕方ないでしょう。まともに生きるというのは、難しいものなのです」
「……そっか」
そうかもしれない。僕はゆっくり息を吸って、吐き、ぬるぬるの体が気持ち悪かったが、なんとか衣服を整えた。
「ヴィー、それ、どうするの」
あきらかに膨らんだ股間を見て、少し笑えた。
「誰もこんな場所を見ていません」
「そうかな。僕はよく見てる」
「あなただけですよ」
それはその返しで使う言葉ではない気がするな。
ぼんやり考えていると馬車が止まり、僕は気合を入れてなんとか立ち上がった。が、歩き出す前に床が失われる。
「えっ」
「あなたは具合がお悪いのですから」
「ああ、うん、そう……そうだね。そうだ」
そうして僕はヴィーに抱えられて馬車を降りた。なるほどこれなら、僕以外の誰もヴィーの股間に意識は向けないだろう。
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