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第四章 逆襲

商人の移住

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「またやるわよ」

メイドのイチからの新たな指令だ。ここ1週間は、衛兵の見回りを上手く掻い潜って、王室の御用商人の店を6人1組で襲っていた。

商人に恐怖を与え続ける

というのが目的だった。

ところが、数日前から、交番にいた衛兵が王宮警備に戻り、交番にはベテランの警官1人と若い警官2人の構成に切り替わった。

「俺たちを誘い出す罠じゃないですか?」

イチとも親しくなってきて、リカルドたちはよく質問をするようになっていた。

「それはないわ。責任者が第3王子に変わったのよ。衛兵を都内の方の警らに回したのが愚策ということで、第4王子は解任されたみたいなのよ」

王家はアホだ。衛兵は警官よりも重装備で、正直やりにくくて仕方がなかったのだ。

「私たちのボスはね、こうなることを読んでいたみたいよ」

あれ? イチが珍しくドヤ顔している。ボスって誰なのだろう。ハンバーグや牛丼を発明したのもボスだというし、興味津々だ。

「イチさん、ボスって誰なんです?」

リカルドはダメもとで聞いてみた。

「言えるわけないでしょ。さあ、明日、やるわよ。この間と同じ戦法が通じるはずよ」

やはり教えてくれなかった。

***

翌日、あっさりと前回と同じ方法で交番を襲撃し、また45人の警官を捕えてきた。前回よりもずいぶんと簡単だった。最後は捕まえてきた警官を船に乗せて完了だ。

「警官はどこに連れて行くんですか?」

リカルドはイチに聞いてみた。

「私たちの本部よ。そろそろ王家も私たちの正体に気づくと思うから、そうなったら、あなたたちにも教えるわ」

リカルドは自分たちが大切にされていることを感じていた。命じられるのは危険な任務ではあるが、使い捨ての駒ではなく、長く一緒に運命を共にする仲間として扱ってもらえているのだ。

「ええ、楽しみにしていますよ」

リカルドはそう答えて、馬車から都内を見た。

前回と同じく、各所で暴徒が現れ、商店などを襲撃しているようだ。今回は衛兵が出てこなかったため、なかなか沈静化しない。

商店街の自営団や富豪が雇った傭兵たちが出動して、ようやく暴徒を追い払ったが、都内は惨憺たる有様だった。

***

この後、王家は交番に警官を配置しなくなった。自分たちの身は自分たちで守れ、ということのようだ。

治安の悪化によって、売上が大幅に落ちる反面、自営団の維持コストが増え、収益が悪化する商人が増えた。

「店をたたんだ商人たちは、ポートマレーに移ったらしい」

「ポートマレーでは土地の利用料だけで、売上には税がかならないそうだ」

「治安もよく、自由な交易が認めてられているらしいわよ」

「レンガ島っていう楽園の島に旅行もできて、温泉宿が素晴らしいそうなのよ」

「ナタール側にも行き来が自由だそうだ。人口もどんどん増えているらしいぞ」

そういった話が瞬く間に広がり、一部の王室の御用商人を除いて、多くの商人が王都を捨て、ポートマレーに移住を開始した。
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