12 / 47
第二章 捜索
親子喧嘩
しおりを挟む
「ルイーゼ! 良かった。無事だったか。もうあんな男のところに嫁になんか行かなくていいぞ。さあ、帰ろう」
ロバートは娘の姿を見て、目尻を下げた。生きていてくれて本当によかったと思った。
そんな父に対して、娘からの容赦ない自己主張が幕を上げた。
「お父様、私は帰りません。ここに残って、自分の意思で人生を生きて行きたいです」
ロバートの頭は一瞬真っ白になったが、世間知らずの娘をこんなところに残してはいけない。
「何を言っている。貴族の生活に慣れたお前が、一人で暮らしてなんていけないだろう。おい、お前たち、ルイーゼを連れて帰るぞ」
「ああ、お父様、やはりご自分の思い描いた通りに私を駒のように動かすのね!」
生まれて初めての娘からの反抗は、簡単には折れなかった。
「お前の幸せを願えばこそだ」
「皇太子殿下の素行を知りながら嫁がせたのも、私の幸せのためですか?」
これを言われるとロバートは謝るしかない。この件は両親に一方的に非があるからだ。
「あ、あれは。あれはすまなかった。私もマリアンヌも反省している」
マリアンヌはルイーゼの母の名だ。
「私の幸せは私が決めます。お父様が決めるものではありません」
「こ、この、我儘を言うんじゃない」
「自分の人生を自分で決めることが我儘なのですか?」
「ルイーゼ、ここまでお前を育てた恩を忘れたのか!?」
こんなことを言うつもりはなかったのだが、ロバートはつい口に出してしまった。
「忘れてはいませんが、だからと言って、お父様の意のままに動く人形にはなりません」
「この親不孝者!」
ロバートはルイーゼの頬を思わず平手打ちしてしまった。
ルイーゼがロバートを睨みつける。
(この子はどうして私をこんな目で見るのだ。この子は本当にあの優しくて従順だったルイーゼなのか?)
叩かれたルイーゼは、ロバートが予想もしなかった行動に出た。
「酒場の皆さん、この人が私を殴るのです。助けて下さいっ」
ルイーゼは酒場の冒険者たちに向かって助けを乞うたのだ。
冒険者たちが騒ぎ出した。中には立ち上がって、こちらに進んで来る者もいる。
「ルイーゼ、お前」
ロバートは信じられないという表情でルイーゼを見た。
「お父様、今まで育ててくれてありがとうございました」
ルイーゼは目に涙を溜めているが、瞳には強い意志が感じられた。ルイーゼはロバートにペコリと頭を下げた後、ロバートと目も合わさずに背を向けて、厨房の方に走って行ってしまった。
ロバートの護衛が前に出て構えている。冒険者たちがジリジリと間合いを詰めてくる。
一髪触発の状況でアンリが叫んだ。
「この人は貴族よ。殴ったら罰せられるわよ!」
冒険者たちが、えっという表情になった。
アンリはロバートに向かって、貴族のアクセントで語った。
「アードレー卿、今日のところはお引き取り下さい」
ロバートは無念ではあったが、今日のところは引き上げることにした。
ロバートは娘の姿を見て、目尻を下げた。生きていてくれて本当によかったと思った。
そんな父に対して、娘からの容赦ない自己主張が幕を上げた。
「お父様、私は帰りません。ここに残って、自分の意思で人生を生きて行きたいです」
ロバートの頭は一瞬真っ白になったが、世間知らずの娘をこんなところに残してはいけない。
「何を言っている。貴族の生活に慣れたお前が、一人で暮らしてなんていけないだろう。おい、お前たち、ルイーゼを連れて帰るぞ」
「ああ、お父様、やはりご自分の思い描いた通りに私を駒のように動かすのね!」
生まれて初めての娘からの反抗は、簡単には折れなかった。
「お前の幸せを願えばこそだ」
「皇太子殿下の素行を知りながら嫁がせたのも、私の幸せのためですか?」
これを言われるとロバートは謝るしかない。この件は両親に一方的に非があるからだ。
「あ、あれは。あれはすまなかった。私もマリアンヌも反省している」
マリアンヌはルイーゼの母の名だ。
「私の幸せは私が決めます。お父様が決めるものではありません」
「こ、この、我儘を言うんじゃない」
「自分の人生を自分で決めることが我儘なのですか?」
「ルイーゼ、ここまでお前を育てた恩を忘れたのか!?」
こんなことを言うつもりはなかったのだが、ロバートはつい口に出してしまった。
「忘れてはいませんが、だからと言って、お父様の意のままに動く人形にはなりません」
「この親不孝者!」
ロバートはルイーゼの頬を思わず平手打ちしてしまった。
ルイーゼがロバートを睨みつける。
(この子はどうして私をこんな目で見るのだ。この子は本当にあの優しくて従順だったルイーゼなのか?)
叩かれたルイーゼは、ロバートが予想もしなかった行動に出た。
「酒場の皆さん、この人が私を殴るのです。助けて下さいっ」
ルイーゼは酒場の冒険者たちに向かって助けを乞うたのだ。
冒険者たちが騒ぎ出した。中には立ち上がって、こちらに進んで来る者もいる。
「ルイーゼ、お前」
ロバートは信じられないという表情でルイーゼを見た。
「お父様、今まで育ててくれてありがとうございました」
ルイーゼは目に涙を溜めているが、瞳には強い意志が感じられた。ルイーゼはロバートにペコリと頭を下げた後、ロバートと目も合わさずに背を向けて、厨房の方に走って行ってしまった。
ロバートの護衛が前に出て構えている。冒険者たちがジリジリと間合いを詰めてくる。
一髪触発の状況でアンリが叫んだ。
「この人は貴族よ。殴ったら罰せられるわよ!」
冒険者たちが、えっという表情になった。
アンリはロバートに向かって、貴族のアクセントで語った。
「アードレー卿、今日のところはお引き取り下さい」
ロバートは無念ではあったが、今日のところは引き上げることにした。
0
お気に入りに追加
909
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる