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第二章 地上の動き

勇者の訪問

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勇者パーティはゴーストドラゴンと対峙していた。

メリンダはライルからゴーストドラゴンの話を散々聞かされていた。

ゴーストドラゴンと勇者チームの戦いは、魔王城での一戦が有名だが、その前にもエンジェルのダンジョンで、勇者パーティがトレーニングをしていたときにも戦っている。

ライルからよく聞かされたのは、そのときの戦いだ。マリアの戦っているときの横顔が綺麗だったとか、後ろ姿がセクシーだったとか、倒した後に一番最初にライルに向かって微笑んだとか、マリアのことばかりで、どう戦ったのかはさっぱり分からない。

ただ、お兄ちゃんはマリアさんが好きなんだ、とメリンダは幼心に思った。マリアさんが死んでしまって抜け殻のようになってしまって心配してたのに、あの男はすぐに別の女を連れてっ!

「チェストーッ!」

メリンダがゴーストに素手で怒りのパンチを入れている。

もちろんゴーストドラゴンはびくともしない。

「何やってんのよ、あんたはっ!」

ナタリーが慌ててメリンダを羽交締めにして下がらせる。

「いつものフォーメーションで行くわよ」

ルミエールが透き通った声で全員に号令をかける。

「メリンダ、冷静になって前へ」

後にいたスターシアから声をかけられた。

「ごめん。出るよっ」

メリンダはありとあらゆる防御魔法や防御スキルを自分自身にかけながら前に出る。メリンダは防御に特化した壁役だ。攻撃力ゴミ、防御力100で鉄壁の防御を誇る。

兄と一緒のパーティで、兄の前衛を務めたいと願い、幼い頃から鍛えて来たのだ。

ゴーストドラゴンの攻撃は全てメリンダが受け切っていた。

ナタリー、スターシアからは補助魔法や治癒魔法が発動される。彼女たちは槍や薙刀も使えるが、ゴーストドラゴンにはホーリーライト以外は物理攻撃も魔法攻撃も効かない。聖女以外は倒せないと言われる所以だ。

魔法強化されたホーリーライトがルミエールから次々に放射される。

ルミエールには途中何度も魔力供給がメリンダから行われる。メリンダは幼少時から兄に鍛えられて、魔力量はパーティ内で抜きん出ている。これも兄に魔力供給するのを夢見ての努力だった。この程度の消費量であれば、回復量が使用量を上回るため、魔力が尽きることはない。

ゴーストドラゴンは知能が低く攻撃は単調だ。時間はかかるが、同じパターンで攻撃を繰り返せば、危険なく倒せる相手だ。

(私の戦っているときの横顔は綺麗なのかなあ)

メリンダがふとそう思ったとき、ゴーストドラゴンは倒れ、天に召されて行った。

地下60階への階段の扉が開かれる。

実に20時間に及ぶ戦いだったが、4人は疲れを見せることなく、階段を降りていった。

「何なの? ここは」

メリンダが思わず言葉を漏らしてしまったのは、ダンジョンとは思えない風景が広がっていたからだ。

4人の目に入って来たのは、美しい森と湖に囲まれた豪奢な白亜の邸宅だった。

湖の方から笑声が聞こえてきた。美しい女性と髭面の男が笑顔で楽しそうに話をしている。ただ、二人は手にナイフを持ち、魔物を捌いていた。笑顔とやっていることが全くマッチしていなかった。

4人は警戒しながら近づいて行った。二人は全くこちらに気づいていない。完全に二人だけの世界を作っている。

と思ったら、女性の方がこちらに気づいた。こちらに振り返って、驚いて目を見開いている。

(なんて綺麗な人……)

メリンダは一瞬見惚れてしまった。魔法の望遠を使っていて、彼女の容姿がよく見えるのだ。

女性が髭面に私のことを教えている。その瞬間、私たちの周りに結界が張られた。

これはライルの魔法だ。やはりライルは生きていた。生きているとは信じていたが、実際に目にしたら、メリンダの瞳から涙が溢れて来た。

メリンダだは警戒を解いて、一目散に兄の元へと走り出した。

「こら、メリンダ。警戒を解かないで」

ルミエールの声に構わずメリンダは走り続ける。

ライルが気づいたようだ。結界を解いて、立ち上がって、笑顔で両手を広げている。

メリンダは兄の胸に飛び込んで行った。
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