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処罰

ダンジョン攻略

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 ダンジョンは街の郊外にある。地下七十階までは組合のセーフティゾーンが作られているが、それよりも先は前人未到の階層となっている。

 地下七十階まではヨーダの現役時代の「フォースの導き」というパーティが踏破している。以前聞いたような気もしないではないが、マモルの記憶には残っていない情報だった。

 地下何階まであるのか分からないが、全階踏破が人類の長年の夢だった。古文書によると、最深階には古代人類の宝が眠っていると書かれている。俺は記述の内容から石油だと見ている。

 まずは地下八十階まで潜り、そこにセーフティゾーンを建設するという計画だが、今回は組合の任務ということで、生活用品、食糧、ポーションなどは、途中のセーフティゾーンで受け取れることになっている。

 俺たちの役割は各階層の主を葬ることだ。主を葬れば、組合派遣の冒険者パーティと建設部隊もダンジョンを進むことができるからだ。

 地下五十階まではブラックイーグルで来たこともあるので、割と難なく進んでくることが出来た。

 最前衛は俺だ。敵の魔法の避雷針的な役割を果たしながら、圧倒的な攻撃力で敵を蹴散らして行く。攻撃を受けてしまいそうな時はリサがカバーしてくれるし、撃ち漏らした敵の始末もしてくれる。イメルダの防御魔法や治癒魔法も非常にありがたい。

 距離のある敵は、アンジェラの高火力の魔法で一掃する。アンジェラも防御魔法が使えるため、俺に愛情いっぱいの防御魔法をかけてくれる。

 すごくバランスの取れたいいパーティだと思う。地下五十階を過ぎてもリズムよく敵を倒していき、遂に地下七十階まで到達した。

 地下七十階のセーフティゾーンで、リサがいつものセリフを言い始めた。

「ねえ、ジーク、いつになったらマモルに会わせてくれるのよ」

「呼びかけてはいるんだが、うんともすんとも言わないんだよ」

「ちょっと刺激が必要なんじゃないかしら?」

「刺激?」

「私とキスするとか」

「ちょっとリサ、何言ってんのよ。そんなの効果ないわよ」

「何で分かるのよ。あ、さては!」

「ジークとはキスしまくってるわよ。でもマモルからの抵抗はないわ。あっちの方はいまだに抵抗激しいけどね。あなたたち、ひょっとしてキスは済ませてるんじゃないの?」

「そ、そんなこと、教えないわよ。でも、あなたたち、いつキスしてんのよ!?」

「寝る前とか、起きた時とか、普通にしてるぜ。お前は睡眠時間が長過ぎるんだよ。誰よりも早く寝て、遅く起きるから、知らなかっただけだよ」

「は、破廉恥だわ。パーティの和を乱すのはやめてよね!」

「そういうお前もさっきキスしようって言ったじゃないか……。マモルはお前を大好きだが、俺はアンが大好きなんだ。お前とはキスはしないぜ」

「あの、皆さん、そういうお話は、私が寝てからにして下さいまし」

「すまん、イメルダ。反省した」

 イメルダはプイッと横を向いてしまった。

 イメルダはいくつかの魔物との戦いの後、俺の実力を認め、理不尽な暴力はしなくなったが、俺を「奴隷」から「殿方」にカテゴライズしたらしく、全く口をきかなくなってしまった。

 リサが何か言いたそうだったが、黙ってベンチに座ってしまった。横顔が寂しそうだと思った瞬間、歌を歌う少年マモルとそれを楽しそうに聞く少女リサの記憶が蘇って来た。

「リサ、マモルからのメッセージだ。聞いてくれ」

 俺はマモルが何度も練習したリサの好きな歌を振り付けつきで熱唱した。正直ガラではないのだが、恥ずかしがらず、精一杯歌った。

 キレッキレのダンスと伸びのある声質と感情のこもった歌に、リサだけではなく、アンジェラもイメルダさえも涙を流しながら、聞き惚れている。

 歌い切った後、三人はしばらく無言のままだった。話すことで、感動が壊されてしまうのを恐れるかのようだった。リサが涙を拭いて、俺の方に向いた。

「ありがとう、ジーク。あなたのこと、ガサツで無神経で、マモルとは正反対の嫌な男だと思ってたけど、こんな気配りも出来るのね。それから、ありがとう、マモル。あなたの愛を感じることが出来たわ」

 そう言って、リサは幸せそうな顔をして眠ってしまった。

 相変わらず寝るの早えな、おい。

 その日は俺もアンジェラもキス抜きで眠りについた。

「ああ、お姉様方、しっかり青春していて羨ましいですこと。私も良き殿方にお会いしたいものですわ」

 明日からは未知のフロアに突入する。地下七十一階、ここで俺は「天敵」に出会うことになる。
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